「就活の教科書」編集部小林
こんにちは!「就活の教科書」取材チームの小林です。
本日は、聖徳大学心理福祉学部心理学科の坂井一史准教授にお話を伺いました!
この記事を読めば、「自分のキャリアへの向き合い方」や「就活中のメンタルの保ち方」について知ることができます。
「自分のキャリアをどのように考えていけば良いかわからなくて不安…」や「メンタルってどうやって保てば良いんだろう…」などの悩みがある人は必見です!
「就活の教科書」編集部小林
坂井准教授、本日はよろしくお願いします!
よろしくお願いします。
聖徳大学 坂井 一史准教授
坂井 一史 (さかい・ひとし)准教授
聖徳大学 心理・福祉学部心理学科
カウンセラー(臨床心理士・公認心理師)としてクリニック・企業で勤務。
はたらく人の心理支援としてメンタルヘルス支援や“キャリアカウンセリング”を行っていた。
実務経験を20年ほど積んだ後、現在の聖徳大学へ
目次
坂井一史准教授にインタビュー①:キャリアカウンセリングとは?
働く人の心理支援:キャリアカウンセリング
「就活の教科書」編集部小林
坂井准教授は産業領域でのカウンセリングを行っていたということですが、詳しく教えていただきたいです!
自身の心理支援のキャリアの一番初めは、クリニックで働く人の支援をすることでした。
その後企業と契約をしてその企業の従業員に心理支援のサービスを提供する外部機関(外部EAP機関)に転職、さらに企業内のカウンセリングセンターに転職し、企業で働く人の心理支援をさまざまな立場から行ってきました。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
カウンセラーとして病院や企業でのカウンセリングを行っていたということですが、実際にはどのような相談を受けていたのでしょうか?
ストレスやメンタルヘルス不調の相談だけでなく、人がどう生きていくかというキャリアは誰にとっても大切な側面なので、キャリアについての相談からプライベートの相談まで本当に多様な相談がありました。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
キャリアについての相談だけじゃないんですね!
坂井一史准教授にインタビュー②:働いている人の悩み
労働環境での悩みについて
「就活の教科書」編集部小林
実際に寄せられた相談で多かった職場での悩みはありますか?
体調不良、人間関係、仕事のプレッシャーなど、人の数だけ悩みがあるといっても過言でないくらい多様な相談が寄せられていました。
他にも若手の社員に多い悩みとしては、「自分にはこの仕事が向いてないんじゃないか」「配属先が希望と違って受け入れられない」などの相談もあります。
人間関係・ハラスメントの悩みも多かったように思います。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
職場での悩みって尽きないですよね…
実際にどのくらいの人が職場で悩んでいるの?
「就活の教科書」編集部小林
職場の悩みって言っても人によって本当に多様だと思うんですが、実際にカウンセリングに相談に来られる方ってどのくらいいるんでしょうか?
企業にもよるんですが、相談率の高い組織だと5~10%程度の印象です。
従業員規模の大きい組織だと1%前後ですね。
カウンセリングがどの程度活用されるかということにも多様性がありました。
悩んでいても相談に来ない人もいれば悩んでないけど壁打ち相手として自分の考えを整理しに来る人もいたので、相談率と悩んでいる人の割合は必ずしも一致しないかもしれません。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
悩みがあっても、なかなかカウンセリングまでは来られないという人が多そうですね。
“伴走”するように寄り添って話を聞く
「就活の教科書」編集部小林
働く人の支援ということですが、実際に何かをやってあげるということはしたりするんでしょうか?
カウンセリングで話を聞くときには、どのような接し方をされているんですか?
相談に来る方は基本的に働いている方です。十分に能力があって自分で判断ができます。私たちがあれこれ手を出して何かをしてあげる必要はないし、「迷ってるから代わりに決めてあげよう」みたいなことはしません。
多くの場合は、話を聴き考えを整理することを通じて自己決定し、自己実現に向けて歩んでいくプロセスに伴走をしていくことをしています。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
その人が行動できるように、寄り添ってあげるイメージなんですね!
坂井一史准教授にインタビュー③:学生から社会人になるということ
大学生から社会人になった時のギャップ:大学生活基準で考えてしまう
「就活の教科書」編集部小林
よく実際に働いてみたら「思ってたのと違う…」と感じてしまう人が多いと聞きますが、そういった悩みはやっぱり多いんでしょうか?
そういったギャップを感じる人は一定数いるんですけど、一般的には大体3ヶ月から半年くらいのところである程度落ち着いてくることが多いように思います。
逆にいうと最初の半年くらいは誰しもが「やっぱり違ったかな…」、「大学時代は良かったな…」という思いを感じうるということです。
大学生から社会人になるのは非常に大きな変化です。自分で判断したり調整できていた自律的な世界から、組織のルールに従うという他律的な世界に入るということを意味します。この変化についていけていない最初のうちは、「前の方がよかった」と大学時代を基準に考えがちですが、慣れていくとだんだん今の社会人生活を基準に考えられるようになり落ち着いていきます。
それでも中には「他の人は慣れてきている様子だけど、自分はいつまでたってもなじめない」と感じてしまう人もいます。そういう人に対して「サポートを得ましょう」「相談してくださいね」とカウンセリングを促していました。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
社会人になったばかりではまだ大学生基準で考えてしまうということを認識しておくのも大事なんですね!
社会人になることは“生産者側に立つ”こと
大学生までは基本的には教育というサービスを受ける“消費者”視点で生活をしています。
でも社会人になった途端、“生産者”側で働くことになります。
生産者側に立つと、すごく意地悪なこととか不条理なことを言われることが増えるわけです。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
確かに、生産者って文句言われたりしてしまうイメージがあるのでしっくりきます…
自分のフィールドで得意なとこだけで勝負ができる(評価を受ける)という話じゃなくなってくる。
だいぶ不利な状況の中でその不条理な条件で勝負していかなきゃいけない、そういう世界であるという心構えが大事です。
その心構えがないとどうしても社会人になっての“ギャップ”が大きくなってしまうのである程度「そういうものだ」だと知っておくことが大切だと思います。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
「社会人ってそういうものだ」って考えて割り切ってやっていくのも大事なんですね!
ストレスの予防:“知る”ことが大事
ストレスの予防・対処の一つとして“知る”ということがあるんです。
知らないことが起きるよりも、知ってた方が心構えができて対処しやすくなるということがあります。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
知ってたら事前にどうしたらいいかも考えられますね!
会社に入って先輩方を見ると「すごいなー」と思うことがあると思いますが、先輩方もみんなそれなりに悩んで、慣れて乗り越えていってやっているんです。
大抵の人はみんなそうやって悩みや困難を乗り越えていて先輩をやっているということも新入社員の方には知っておいてもらいたいです。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
みんな同じように悩んで乗り越えていってるんですね!
坂井一史准教授にインタビュー④:学生のうちにできる心構え
いろんな人の話を聞いて“バリエーション”を持つ
「就活の教科書」編集部小林
“知る”ために社会人になるまでに、就職活動中など学生のうちにできることはありますか?
“知る”ためにという意味では、自分の中だけで完結しないでいろんな人の話を聞くといいと思います。
それこそ、身近にいるお父さんやお母さんというのはずっと働いてきていて、嫌な経験もたくさんされてきているだろうし、ご苦労もされていると思うので、きれいごとでない仕事の現実やサバイバル術の話を聞くには良いと思います。
もちろんカウンセラーでも良いですし、友達の話も聞きながら、バリエーションを増やせるように知識や対処について知ることができるとよいと思います。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
身近な人からも話を聞くっていうのは大事なんですね!
規則正しい生活をバロメーターに
「就活の教科書」編集部小林
就職活動中って色々なプレッシャーだったりと、精神的にしんどいって感じる人が多いと思います…
就活中に良いメンタルの保ち方ってありますか?
健康的な生活とメンタルヘルス不調は相性が悪くて、健康的な生活を維持しているけどメンタルヘルス不調ですっていう話は基本的に聞きません。
やっぱりメンタル不調になってしまう時って眠れなくなるとか、食欲がなくなるとか生活リズムが崩れてるんですよね。
もしくは、不規則な生活を続けた結果メンタルヘルス不調になりやすくなったりします。
なので病気かどうかと考えるよりも、健康的な生活ができていることをバロメーターにしていただくとよいのではないかと思います。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
メンタルをどうこうっていうよりも、身近な生活習慣を見直す方がわかりやすいですね!
人に相談してみてサポートを受ける
生活習慣をバロメーターにするっていうことに加えて、「生活習慣が維持できてないな」「悩みが深くてどうしても考えこんでしまう」という時には、ひとの力、サポートを得ることですね。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
自分でどうにかできない!って時に人に頼るんですね。
組織がなぜ人を集めて仕事をするのかというと、一人でできないことを達成したいからです。
なので組織の中でよく分からないことや自分だけじゃやりきれないことは起こり得えます。そういう時には一人ではできないことなので相談するしかないんです。
相談して嫌な顔する人は横に置いておいて、ちゃんと話を聞いてくれる人が見つかるまで相談を続ければいいと思います。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
自分一人でどうしようもないことは、人に相談するのが一番早いですね!
相談する相手:親身に話を聞いてくれる信頼できる人
「就活の教科書」編集部小林
でも、いざ相談するってなると「誰に相談したらいいかわからない…」「相談する相手が見つからない」って人はどうしたらいいんでしょうか…
そこが難しいところなんですけど、相談する相手として一番大事な要件は“信頼できる”ということで、「この人だったらちゃんと親身に聞いてくれる」「否定せずに聞いてくれる」って思える人だったら最初は誰でもいいと思います。
相談した結果解決しなかったとしてもその人たちと一緒に考えて、じゃあ次は誰に相談すればいいかと検討しながらどんどんサポーターを増やしていく。
そんなふうに自分のサポートチームを作っていくことは仕事でもきっと役立ちます。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
まず身近な人に相談してみて、解決できなくてもそこからどんどん繋げていけばいいんですね!
就職活動って個人戦のイメージなんですが、団体戦のように考えたらすごく気が楽になります!
坂井一史准教授にインタビュー⑤:キャリアへの向き合い方
どう自分の将来を作ったらいいか?:自分が主人公のストーリーを描く
「就活の教科書」編集部小林
私も就活中なので、将来のことに悩んでしまいます…
自分の将来を考える時のアドバイスはありますか?
「自分が主人公のストーリーを描く」ということです。
自分の人生って、自分が主人公じゃなきゃいけないんです。
ほかの人が主人公の人生を描くのってつまんなくなってしまいます。映画やドラマのような壮大なストーリーを描いてもいいんですけど、日常を楽しむような穏やかなストーリーでももちろんいいと思います。
ちゃんと自分が主人公で、自分がどんな風に人生を展開させていきたいかというイメージを持つことが大切です。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
キャリアとかを考えるってなるとなかなか頭が重いんですが、自分のストーリーを描くって考えたら楽しそうです!
ストーリーを展開させていくことで自己表現をしていくということにも繋がります。
ストーリーを描くことが難しいと感じるときには、そこまで深いことを考えないで、まず「今日1日どう楽しむか」ということにしっかり目を向けていったらいいんじゃないかなと思います。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
長期的にストーリーが描けなくても、まず今日1日どうするかっていうことから考えたらいいんですね!
キャリアデザインという考え方
最近は“キャリア形成”という考え方よりも、“キャリアデザイン”という言葉が増えてきてるんです。
“デザイン”には決まった形(答え)がなく、自分にとっての良い形になるように仕上げていくことが求められます。
キャリアにも決まった形(ルートやゴール)はなくて、もっともっとその人なりの自由であるべきなので、自分で探していけるとよいと思います。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
“キャリアに決まった形はない”キャリアデザインという考え方はとても素敵ですね…!
坂井一史准教授からメッセージ:「キャリアに正解も不正解もない」
「就活の教科書」編集部小林
メンタルケアやキャリアについての向き合い方について素敵なお話をありがとうございました!
最後に、学生へのメッセージをお願いします!
キャリアというものに正解も不正解もなくて、どんな風に生きたっていいんです。
自分なりにやってみて、その歩みを後から振り返った時に自分で「良かったな」と思えるようになることが大事です。
自分がその時良いと思う方をやってみることを繰り返すことで、ある程度“道”というものは出来ていきます。
想定外の出来事だったり、不条理が起こることを“人生の転機”だと思って、後から振り返った時に『それを乗り越えて自分は活躍したんだな』と思えるストーリーを無理矢理にでも描いてみるといいと思います。
聖徳大学 坂井 一史准教授
「就活の教科書」編集部小林
坂井准教授、素敵なお話をたくさんありがとうございました。
私自身も自分なりにキャリアに向き合っていこうと思います、本日は本当にありがとうございました!