【インタビュー】名古屋経済大学 大黒光一教授|「試職」を教育に〜必修インターンで成長を促す〜

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「就活の教科書」編集部チェスンウ

こんにちは!「就活の教科書」取材チームのチェです。

本日は、名古屋経済大学の大黒光一教授にお話を伺いました!

この記事を読めば、「採用と就職の相関」「インターンシップの狙い」について知ることができます。

「就活の教科書」編集部チェスンウ

大黒先生、本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

大黒光一 教授

 

Profile

大黒光一

大黒 光一(おおくろ・こういち)
名古屋経済大学 経済学部 現代経済学科 教授 
キャリアセンター長

名古屋大学経済学部卒業後、1988年に株式会社リクルート入社。
新卒・中途採用支援や社員教育支援事業に携わり、その後就職ジャーナル編集長を務める。
約30年にわたり採用・就職領域に関わり、2017年に名古屋経済大学教授に着任。
専門はHRM(人的資源マネジメント)、採用と就職の相関、キャリア教育、インターンシップ。理系学生支援や留学生のキャリア支援にも注力し、大学では必修科目のインターンシップを担当している。GCDF-Japan認定キャリアカウンセラー。

名古屋経済大学 大黒光一教授にインタビュー①:日本の採用活動と就職活動の現状

採用活動と就職活動は、基本的に企業側の動き次第で変化

「就活の教科書」編集部チェスンウ

大黒先生の研究の分野にある「採用と就職の相関」について教えてください!

採用と就職の関係性については、まずスケジュールやスピード感就活の方法は学生が決められるものではなく、企業が主導して決めるものだと考えています。

採用活動と就職活動は、基本的に企業側の動き次第で変化していきます。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

最近は、どんどん就活が早期化していますよね…

企業が求める人物像や能力は時代とともに変わります。PCスキルが必須になったのはその典型です。

優秀とされた能力も数年後には通用しない場合がある。

だからこそ、学生は産業界の変化を理解し、必要な力を身につけていく必要があります。

就職を望むのであれば、キャリア教育で言う“アダプタビリティ(適応力)”を備えることが不可欠です。

大黒光一 教授

 

多くの企業は新卒に「即戦力」を求めていない

「就活の教科書」編集部チェスンウ

企業は「即戦力」を求めるという声も多いのですが、「アダプタビリティ」とは違うのでしょうか?

世の中では『新卒に即戦力を求める』と言われがちですが、実際には多くの企業で新卒に即戦力を期待してはいないと思います。

即戦力として使える力を持つ学生も中にはいますが、日本企業の新卒採用は“育てること”を前提にしているからです。

海外のように、特定の学びや知識をそのままポストで活かすという教育体系は、日本の大学や社会にはほとんど存在していません。したがって、基本的には即戦力採用はないと考えています。今後、日本の大学での教育が変わっていく可能性もあるとは思いますが。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

「学生のうちに社会人になって使えるスキルを身につけなければならない」というわけではないのですね。

ただし、理系の採用には例外があります。

専門的な知識や技術を前提に採用するケースが多いため、理系のキャリア教育は文系とは異なると常に感じてきました。

ですから、文系と理系ではキャリア教育のあり方を分けて考える必要があると考えています。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

文系では学んだことがそのまま仕事に直結することの方が少ないですが、理系は学んだことが仕事に直結していることが多いイメージですね。

 

採用の失敗要因は“情報不足”:大学理解と採用マーケの不十分

「就活の教科書」編集部チェスンウ

最近は「学歴フィルターなし」という企業も多いと感じますが、実際のところどうなんでしょうか?

大学差別はなくなりつつあると言われますが、実際には大学のレベルや学んできた内容によって、企業がターゲットとする学生層は異なります

営業を強化したい企業であればコミュニケーション能力の高い学生を、経営企画を強化したい企業であればその分野を学んだ学生を採用する。
その結果、大学ごとに求められる役割や育成される能力が大まかに分類されていきます。

採用とは、まさにマトリックスの中にピースをはめ込んでいく作業だと考えています。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

昔ほど、目立った学歴フィルターはないにしても、企業は大学での学びをきちんと重視しているのですね。

一方で、企業の採用活動におけるマーケティングは不十分というのが現状です。

大学の学部や授業内容は数年ごとに変わりますが、それを把握して採用に結び付ける企業は少ない。

例えば、文系学部でもデータサイエンスやITを学んでいるのに、理系にしかないと誤解している人事担当者もいる。

これは明らかにマーケティングが不十分であるといえるでしょう。
採用はマーケティングでありブランディングでもあるのに、それを言語化できていないことが、採用の失敗につながっているのです。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就職活動では、学生が無理に企業に合わせに行って失敗するイメージですが、企業が学生の実態を把握できていないことも失敗につながるのですね。

 

留学生採用の盲点:ビザ・言語理解の欠如が機会損失に

「就活の教科書」編集部チェスンウ

少子化が進む中で、留学生や外国人労働者の採用へ、前向きな企業は増えているのでしょうか?

先日も留学生採用に関心のある企業向けに講演を行いましたが、多くの企業は留学生を採用するための必要な基礎知識を持っていません

例えば、ビザの種類や制度を理解していないケースが非常に多い。
また、留学生が日本語を十分に話せるにもかかわらず、未だに『日本語はできない』と誤解している経営層も存在します。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

留学生への理解が不十分なのは大きな課題ですね…

留学生がどのような学びをしていて、どの言語で授業を受け、どのような能力を持っているのか。
さらに、どのビザでどのように受け入れることができるのか。

こうした点を理解している企業は極めて少ないのが現状です。

結果として、留学生を採用できる企業とそうでない企業の格差は広がっており、採用マーケティングとしては不十分と言わざるを得ません。。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

留学生への理解が足りないために、優秀な人材を逃してしまうということになってしまいそうですね…

 


名古屋経済大学 大黒光一教授にインタビュー②:大学でのインターンシップの取り組み

「インターンシップ参加」が大学の必修科目

「就活の教科書」編集部チェスンウ

大学で行なっているキャリア教育について教えてください!

実は最近はキャリア教育の授業そのものはあまり担当していませんが、今メインでやってるのは2年生以上で必修科目となっているインターンシップです。

5日間以上・30時間以上行かないと卒業できない仕組みで、留学生も対象です。

だから今は、留学生も受け入れてくれる企業とのやり取りが僕の中心的な仕事になってますね。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

大学でインターンシップが必修なのは珍しいですね!

名古屋経済大学との関わりは、私がリクルートで就職ジャーナルの編集長を務めていた頃、教職員向けの勉強会で講師を担当したのが最初です。

その際、留学生も日本人も含めて、「学生時代に社会を知る経験を積むべきだ」とお話しし、その一つの手段としてインターンシップを提唱しました。

すると、現学長がその話を受けてインターンシップの必修化を決定したのです。

私が転職してきた時期がちょうどその必修化の初年度で、全員をインターンに行かせるという仕組みには、正直なところ驚きを覚えました。

大黒光一 教授

 

インターンシップは“試職”:職を試す経験を通じて成長を促す

「就活の教科書」編集部チェスンウ

学生がインターンシップに参加することで、どのような狙いがありますか?

一般的に想像されるインターンシップと、本学でキャリア教育の一環として実施しているインターンシップとは、意味合いが少し異なると考えています。

多くの大学では3年生の就職活動と結び付けて実施しますが、その場合は学生も企業も採用を意識してしまい、本音が出にくい。

そこで本学では2年生の段階で、採用活動とは切り離して受け入れていただき、純粋に教育的な位置付けで行っています。

企業の方には学生の態度や能力を評価していただき、その結果を本人にフィードバックする仕組みです。

私の前職の同僚が「インターンシップは“試職”である」と言っていましたが、本学もまさにその意味合いが強い。

「就活の腕試しではなく、職を試す経験を通じて成長を促す」そうしたキャリア教育を企業と協力しながら設計している点が特徴です。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

インターンシップというと採用に直結したもののイメージが強いですが、「試してみる」という目的で参加するというのは、自分にとっても将来の材料になりそうですね!

 

早期の挑戦が、学生の成長を大きく後押しする

特に大学1・2年生の段階では、やりたくないことでも一度挑戦してみることが重要です。

本学では2年次にインターンシップを必修としていますが、最初は誰もやりたがりません。

それでも5日間の実習を経て企業評価を受けると、『2年生のうちからそんな経験をしていたのか』と後に面接で高く評価されることが多いのです。

こうした早期の挑戦が、学生の成長を大きく後押しします。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

やりたくないことを自分から挑戦するのは難しいですが、学校の必修科目として挑戦できるのはとても良いですね!

 

名古屋経済大学 大黒光一教授にインタビュー③:キャリアセンターでの就活支援

常勤教員がキャリアセンターに常駐

「就活の教科書」編集部チェスンウ

大黒先生はキャリアセンター長を務められているということですが、名古屋経済大学ならではの強みはありますか?

本学は1学年650名程度と比較的小規模ですが、キャリア支援には10名以上のスタッフが関わっています。

大きな特徴は、専任のキャリア教員が2名おり、研究室を持ちながらもほとんどの時間キャリアセンターに常駐している点です。
学生は授業での疑問や就職相談を、キャリアセンターに来ればすぐに教員にも相談できる体制になっています。

教育とサポートが同じ場所にあるため、授業での質問内容や学生の相談内容が職員と教員の間で共有され、常に学生の状況を把握できる仕組みです。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

キャリアセンターは就職相談だけをする場所だと思っていましたが、授業の相談もできるのですね!

 

相談員は直接雇用:授業見学で“普段の姿”まで把握

多くの大学では相談員を派遣で配置していますが、本学では直接雇用しています。

そのため相談員は授業の見学にも参加し、学生の普段の様子や学習状況を把握した上で相談にあたることができます。

これにより、学業と就職支援を結び付けたきめ細やかなサポートが可能になっています。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

相談員の方が授業見学までされるんですね!より親身に相談できそうです。

 

相談員の専門性が多彩:人事経験者から元警察官まで

相談員のバックグラウンドも特徴的です。

企業の人事経験者だけでなく、グレーゾーンの学生支援に対応できる資格を持つ方や、元警察官でキャリアカウンセラーの方も在籍しています。

学生は将来希望する職種に合わせて相談相手を選べる体制となっており、これは他大学にはあまり見られない強みだと考えています。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

自分の希望に合わせて相談員を選べるなんて…!羨ましいです…

 


名古屋経済大学 大黒光一教授からのメッセージ

企業は大学・学生理解を常にアップデートする必要がある

「就活の教科書」編集部チェスンウ

採用活動を行なっている企業に向けてのメッセージをお願いします!

大学や学生は時代とともに変化しています。

かつての偏差値や固定的なイメージにとらわれず、『今この大学ではどのような教育が行われ、学生は何を学んでいるのか』を人事担当者自身が定期的に確認し、情報をアップデートすることが重要です。

18歳人口の減少に伴い留学生が増える中では、ビザなど法制度の理解も欠かせません。

こうしたアップデートを重ねることで採用のターゲットは広がり、結果として採用の成功につながると考えています。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

企業も学生も、常に情報をアップデートしていく姿勢が求められますね!

 

効率だけでキャリア形成は成り立たない

「就活の教科書」編集部チェスンウ

最後に、就活生へ向けて「キャリア」についてのメッセージをお願いします!

若者の間では「コスパ」「タイパ」が重視されますが、キャリア形成は効率だけでは成り立ちません

やりたいことだけを選んでいては能力や経験の幅が広がらず、結果的にキャリアの可能性を狭めてしまいます。

むしろやるべきこと、求められたことに挑戦する中で後に活かされる経験や知識、能力、スキルが数多く生まれるのです。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

今の学生は、目の前のことをいかに効率よくこなすかに気が取られている気がしますね…

 

他者からの評価で気付く自分の強み:「食わず嫌いをやめ、とりあえず試してみる」

キャリア形成においては、自分が「すごい」と思うことが評価されるとは限らず、逆に本人が意識していない経験や知識、能力、スキルが高く評価されることも少なくありません。

他者からのフィードバックを通じて、自分でも気づいていなかった力を認識できます。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

「“自分には向いていない”と思って始めたことでも、やってみたら他の人から褒めてもらえた」という経験はありますね!

だからこそ学生には『食わず嫌いをやめ、とりあえず試してみる』ことを強調しています。

若いうちに幅広く挑戦することで、将来のキャリアに生きる財産が増えていくのです。

大黒光一 教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

大黒先生、本日は貴重なお話をありがとうございました!

大黒光一教授について

大黒 光一|名古屋経済大学