【インタビュー】成蹊大学 丸尾明美講師 | キャリア形成に大事な自己理解と社会理解の方法とは

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成蹊大学 全学教育講師丸尾明美先生

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「就活の教科書」編集部野口

こんにちは!「就活の教科書」取材チームの野口です。
本日は、キャリア科目を専門とされている成蹊大学全学教育講師の丸尾明美先生にキャリアについてインタビューしました。

丸尾先生、本日はよろしくお願いします!

よろしくお願いいたします。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

Profile

丸尾 明美 (まるお・あけみ)
成蹊大学 全学教育講師

大学卒業後、外資系コンピュータメーカーにて部長秘書として社会人スタート。その後、米国系半導体製造装置メーカーで人事職として勤務。2003年から若年者向けキャリア支援に興味を持つようになり、4年制大学にてキャリアデザイン、業界・職種研究の授業の講師を担当。その後退職しキャリアコンサルタントとして、複数企業からの業務委託を受け、大学生から社会人までのキャリア支援業務などに従事。2015年3月、筑波大学院のMBA-International Business 修了。

丸尾明美先生にインタビュー①キャリア科目では自分と社会について考える

キャリア形成において自己理解と社会理解が必要

「就活の教科書」編集部野口

さっそくですが、丸尾先生は成蹊大学でどんな講義を担当されているのでしょうか。

キャリア科目を担当しています。

具体的な科目名でいえば「キャリアプランニング」とか「キャリアセミナー」というような科目で、他にもいくつか名称の違うキャリア科目があって、それらを担当しています。

キャリア科目とは、大まかにいうと自己理解と社会理解をし、さらに社会に出るときに必要な力を高めるための授業です。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

キャリア科目とは、社会に出るために必要な力を身につける授業なんですね。

自己理解と社会理解とはどういったことでしょうか。

自己理解とは、自分は何が好きで得意で、どういうことを重視して仕事を選んでいくのかということを明確にすることです

人それぞれ違うので、自分はどういうタイプなのかをまず理解してみようということですね。

社会理解とは、社会の仕組みや企業や仕事がどんなことなのかを理解することです。

そして、自分を理解し、社会を理解した上で、将来どうなりたいかを考えていくのです。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

自己理解とは自分に対する理解のことで、社会理解とは社会・企業・仕事に対する理解のことなんですね。

はい。そしてもう1つ大事なことが社会に出るために必要な力を身につける」ことなのですが、社会に出て活躍するためにどんな力が必要か、学生時代に考えることが大事です。

将来の自分に必要なスキルを見据えて「どの科目を履修するか」「どのような課外活動に取り組むか」など、意識的に行うことが重要です。

キャリア科目は、まさにそうした学びと実践のサイクルを支える枠組みとなっています。

特に、社会で活躍するためには「社会人基礎力」と呼ばれるようなスキルが必要とされています。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

学生のうちから将来の自分に必要なスキルを考えて行動しないといけないのですね。

社会人基礎力とはどういったことでしょうか。

社会人基礎力とは主体性、チームワーク、課題解決力など社会で働く上で必要となる基本的な能力で、そうした力をつけていくために、グループワークを多く取り入れ、人と関わり、アイデアをまとめ、発表するような実践型の授業を行っています。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

 

どの業界・企業・仕事をしたいのか決める

「就活の教科書」編集部野口

キャリア科目は社会人基礎力をつけるための実践授業が多いのですね。

丸尾先生は他のタイプの科目もご担当されているのでしょうか。

「インターンシップ準備講座/インターンシップ実習」という講座も担当しています。

インターンシップに参加する際に必要となる、業界や企業、仕事に関する基本的な知識を学ぶことができる就職活動の実践的な準備講座です。

ここ数年、多くの企業が「インターンシップ」という名称で、就職活動の初期段階で学生を囲い込むような動きが増えています。

学生にとっては、インターンシップ参加が就職活動の始まりのような状態になってきています。

そのため、この授業は広い意味でのキャリア形成の授業とは異なり、より就職活動に特化した授業です。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

学生時代、インターンシップの準備講座は受けた記憶がありません。

実際、どういったことを教えていただけるのでしょうか?

就職活動を進めるうえで、3つのことを決めなくてはいけません。

「自分はどんな業種・業界で、どんな企業で、どんな仕事をしたいのか」です。

そのため、授業ではまず世の中に「どのような業種・業界があるのか」「どのような企業があるのか」「企業の情報の見方」「どのような仕事があるのか」「仕事とは具体的にどのようなことをすることなのか」などを調べて、将来自分はどんな仕事に就きたいのかを考えていきます。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

社会理解を深めるため、仕事や企業について調べることが大切なんですね。

さらに、インターンシップではグループワークを通じて企業理解を深めるということが多くあります。

インターンシップに参加するために、学生はただ講義を聞いて自分でノートをとるのではなく、グループでディスカッションをしながら話をまとめていくなど、グループワークに慣れていく必要がありますそのため、授業ではグループワーク体験の機会を設けています。

インターンシップ準備講座/インターンシップ実習では一般的には大学のキャリアセンターなどが課外セミナーとして実施するような就職支援の内容を、単位を出す正規の授業として行っています。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

インターンシップの準備のための講座が正規の授業の中に埋め込まれているのですね。

インターンシップ準備講座は何年生で受講するプログラムですか?

3年生の前期から授業を受け、夏休みにインターンシップに必ず参加してもらいます。

そして、インターンシップ参加後、実際に職場を体験した中で感じたことや学んだことをもとに、改めて自分の進路について考えていきます。

インターンシップに参加していいなと思った企業や仕事があったなら、より理解を深めたうえで就職先の候補として検討を進めたり、応募の幅を広げたりするといったことを3年の後期の授業で行っていきます。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

講座を履修している学生はインターンシップへの参加が必須なんですね。

キャリアに関することを大学に支援してもらえると、学生にとってプラスですね。

 

アクティブラーニングの意見交換により気づきが生まれる

「就活の教科書」編集部野口

丸尾先生はキャリア科目の授業について、工夫している点はございますか?

アクティブラーニングを意識しています。

「講義を聞く」スタイルではなく、学生自身が考え、他者と関わりながら学びを深めていくことを重視しています。

自分でしっかり考えた後、他者と意見を共有し合うことで、自分の考えと他人の考えの違いに気づき、そこから新たな視点や気づきが生まれます

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

講義として一方的に話すのではなく、アクティブラーニングに取り組まれているのですね。

他者との「考えの共有」が中心となります。たとえば、「自分はこう思っている」「こんな希望を持っている」とお互いに話し合う中で、「そんな考え方もあるんだ」「そんな方向性もあるのか」と視野が広がっていくのです。

1人で考えるだけでなく、人と会話して、意見を聞きながらより深く考えていくことを工夫しています。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

 

社会に出る前に、自己紹介の練習が役立つ

最近は初対面の人と自己紹介することにハードルを感じる学生が少なからずいます。コロナ禍の影響もあるかもしれません。

しかし、社会に出れば、いろんな人と出会って「初めまして。」と初対面の状態からすぐに仕事を始める状況は普通に起こります。

そこで、学生が自己紹介に慣れていけるように、毎回の授業で初対面の相手と自己紹介を行う時間を設けています。

そうした初対面の相手との関わりを苦手とする学生には、「就職活動では必ず自分のことを語らなければならないから、今できないと就活の時苦労するよ」と、軽くプレッシャーをかけることもあります(笑)

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

自己紹介を学生時代に練習できると、就活だけでなく社会に出てからも役立ちますよね。

授業の最初の頃は「初対面は苦手だ」という学生にも「楽しく話すことに慣れよう」ということで毎回やります。

授業は14回あるので、最初のうちは躊躇している学生も、数をこなすうちに「自己紹介に慣れてきた」「スムーズにできて、自分のコミュニケーション力が上がった気がする」といった感想をリフレクションペーパーに書いてきてくれることが多いです。

そういったコミュニケーションの土台を作る工夫をしながらやってます。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

アクティブラーニングの授業を通して、コミュニケーション能力も向上しそうですね。

学生さんから寄せられる声や、フィードバックはございますか?

ポジティブなコメントが多いです。

1番多い声としては「コミュニケーション力がついた気がする」です。

人と話すことに対しての抵抗感がなくなることで、気軽に話せるようになることが実感として多いようです。

それが他者と関わる上での自信にも繋がっているようです。

また、人との会話や意見交換を重ねる中で、「自分がどのような人間であるか」に気づく学生も多くいます。たとえば、「この人すごいな」「自分とは反対のタイプだな」など、他者との違いを意識することで、結果的に自分自身の特性や価値観に気づくきっかけとなっているようです。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

 


丸尾明美先生にインタビュー②就活ハラスメントが発生している

今も起きている就活中の学生に対するハラスメント

「就活の教科書」編集部野口

丸尾先生の担当されているキャリア科目について、理解が深まりました。

ところで、就活ハラスメントというものを耳にしたのですが、何のことでしょうか。

就活ハラスメントとは、就活中の学生に対するハラスメントのことです。

例えば、インターンシップの合同説明会イベントで、学生が企業のブースにふらっと話を聞きに行ったら、「学校名・氏名・インターンシップの参加日程をすべて記入してください。書かないとこのブースから出られませんよ」と無理やり記入を求められる。

こうした事例が何件かありました。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

驚きです・・・そんなことがあるんですね。

他にも、私が直接学生から聞いたわけではないんですが、面接で少し失礼な質問をされたり、個人の尊厳に関わるような物言いをされたということが起きているといいます。

多くの場合、人事部の社員そうした言動に気をつけるよう教育されていることが多いんですが、人事部員ではない面接官への教育が充分に行き渡ってないとハラスメントだと思わず不適切な発言してしまうことがあるようです。

企業には気をつけてほしいと思いますね。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

学生からすると辛い思いになりますね。

 

人手不足の現代だからこそ、企業が必死になってしまう

そういう不適切な言動を行うと企業側にとっても「パワハラ体質なの?」と疑いがかかりますし、評判が落ちるのでしない方がいいですね。

キャリア支援センターの職員に、就活ハラスメントが現実として起きているという話をしたら、「私の娘も就活生で、娘からもそんな話を聞きました」という声があって、いろいろなところで問題になっているのだと感じました。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

そんなに身の回りにあるのですね・・・

就活ハラスメントは、平成の時代の話でしょうか。

2024年の話なので、現在の話です。

今は特に人手不足で、企業は採用活動に必死になってなんとか学生を囲い込もうとしたのかと思うんですが、度が過ぎるとあまりにもひどいことになりますし、企業自身のためにもならないので、そういう言動は改善してほしいです。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

 

丸尾明美先生にインタビュー③就活生へのメッセージ

就活に悩んでいる学生は仕事観が足りない場合が多い

「就活の教科書」編集部野口

就活ハラスメントについて、企業も気をつけないといけないですね。

丸尾先生のもとには学生が相談に来ることも多いと思います。

悩んでいる就活生にはどういったアプローチをされていらっしゃいますか?

ESが通らない、面接に受からないなどの悩みを抱えている学生は、仕事観が足りないことが多いと感じます。

「その会社に入ったら具体的にどんな仕事をすると思っている?」というような質問を通じて、仕事への理解やイメージを掘り下げるようにしています。

実際、多くの学生が仕事の中身をよくわかっていないまま選考に進んでいます。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

就活に悩んでいる学生は、仕事への理解やイメージが足りなくて就活に苦労している場合が多いのですね。

別のよくある課題として、人と話すことが苦手、自分の考えをまとめることが難しいといったコミュニケーション面での悩みも挙げられます。

このような学生には、まずは思ったことを完全な文章でなくても良いので書き出してみましょうと伝えています。

単語、箇条書きのレベルからでも、書くことで少しずつ考えをまとめ、言語化する習慣をつけるよう促しています。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

 

自分で考えて動ける社会人になってほしい

「就活の教科書」編集部野口

コミュニケーションが苦手な学生は、書く習慣をつけたらいいんですね。

成蹊大学の学生さんや、就活の教科書の読者である就活生にどのような社会人になってほしいでしょうか。

これまでの世の中では単純作業的業務が仕事として成立し、お給料がもらえていたと思うのですが、これからはそういう仕事はAIに仕事を奪われることになると危機感を持っています。

だからこそ学生の皆さんたちには、自分で考えて自分で動ける、考えを人にちゃんと伝えられる人になってほしいと思います。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

AIの進化が凄いですよね。

自分で考えて、行動するって大切ですね。

全ての学生がそうではありませんが、昨今の学生の中には一歩踏みだすときに、失敗を恐れて躊躇してしまう・動き出しが遅くなるといった傾向があるように感じます。

少しぐらいつまづいてもいいから、まず動くことが大事です。

一歩踏み出さないと経験は生まれないし、成長もないので、何かに迷ったときは「まずやってみる」という姿勢を大切にしてほしいと思っています。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

 

ファーストキャリアでは「やりたい仕事」をよく考えてほしい

「就活の教科書」編集部野口

丸尾先生、ありがとうございました。

最後に就活生に向けてメッセージをお願いします。

私自身もそうだったんですが、「ファーストキャリア」は大事だと思っています。最近では転職も珍しいことではなくなってきましたし、もし最初に勤めた企業が合わなければ、もちろん転職という手もあり、やり直しがききます。

私自身もこれまでに複数の転職を経験してきましたし、「本当に違ったな」と思えばやり直してもいいと思います。

とはいえ、「何でもいいからとりあえず」というような選び方はどうかと思うので、学生の皆さんには最初のキャリアはよく考えて選んでほしいと考えています。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

転職も、キャリアをやり直すこともできるけどファーストキャリアはよく考えることが大切なんですね。

企業名や規模にとらわれるのではなく、その仕事の中身に自分なりの意味や価値を見出して納得した仕事に就いて欲しいと思います。

「お給料が高い」「残業が少ない」「休みが多い」「ネームバリューがある」などの条件だけでなく、「会社に入って、こういう日々を過ごしていくんだ」という理解と覚悟を持てる仕事に就いてほしいです。

そのためには、仕事や企業の本質を見ないといけないので、真剣に調べたり考えたりする時間が必要です。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

仕事の条件だけではなく、入社後にやりたいことを明確に理解した方が良いのですね。

「自分がちゃんとこの仕事をやりたい」と思える選択をしてほしいですね。

そして、10年後に「ここを選んでよかったな」と思えるような仕事に就いてほしいと思います。

成蹊大学 全学教育講師 丸尾明美先生

「就活の教科書」編集部野口

本日は丸尾先生のお話を聞いて、ご自身の経験を学生に伝えたいという想いが伝わってきました。

丸尾先生、ありがとうございました!

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