「就活の教科書」編集部野口
こんにちは!「就活の教科書」取材チームの野口です。
今回は、豊橋創造大学短期大学部キャリアプランニング科で、学生一人ひとりに寄り添う伊藤圭一教授にインタビューしました。
ゼミでの地域連携の実践から、学生に伝えたい社会人としての心構え、そして就職活動で大切にしてほしいことまで、たっぷりとお話を伺いました。
伊藤教授、本日はよろしくお願いします!
よろしくお願いいたします!
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
伊藤圭一(いとう・けいいち)
豊橋創造大学短期大学部 キャリアプランニング科教授
豊橋創造大学公務員試験支援センター長 公務員別科長
話すこと、相手にわかってもらうことが大好きで教員の道を目指す。大学院修了後(教育学修士)、専門学校教員を経て現職。楽しく授業をするのをモットーにして笑いのある授業を実践している。特に授業の導入部分の面白さには定評があり、オンライン授業の際は「面白いよ」と家族を誘って学生が授業に参加するため保護者の支持者も多い。また、アクティブラーニングを軸とした授業は高校との連携授業でも好評で年間120回以上の授業を高校でも行っている。そのため高校からの支持をいただき教員向けの研修も担当している。
伊藤圭一教授にインタビュー①キャリアとは「様々な経験の積み重ね」
接し方の違いに気づく経験が、自分と他者を理解する力に変わる
「就活の教科書」編集部野口
さっそくですが、伊藤教授はキャリアについて、学生にどのように伝えているのでしょうか。
私はキャリアというのは「いろいろな経験を積み重ねていくこと」だと考えています。
私が担当しているゼミでは、学生が地域へ出て、地域の方々と一緒に行事に取り組むといった活動を行っています。
こうした活動を通して、「先生じゃない人からも学ぶことができるんだ」という実感を持ってもらうことが、大切だと感じています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
実社会での経験が、学びの幅を広げてくれるのですね。
社会に出れば、相手は必ずしも教員のようにひとしく接してくれるわけではありません。
先生は基本的に学生全員を同じように扱おうとしますが、地域の方々は自然体で関わってくださるため、相手によって接し方が変わることもあります。
そうすると、「なぜ自分と友達とで返ってくる言葉が違うのか?」ということに気づくわけです。
それを否定的にとらえるのではなく、「自分と友達との違いをプラスの意味で理解する」ことにつながる。
そのような気づきを得られる経験も、私はキャリア教育の一環だと考えています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
教育×地域連携で実現するアクティブラーニング
「就活の教科書」編集部野口
先生はみんな優しく教えてくれますよね。
ゼミでは具体的にどのような活動をされているのでしょうか。
ゼミ活動のひとつに、地域の「コミュニティバス」の利用促進があります。
バスに「乗ってもらうにはどうすればいいか?」というテーマで、「このバスがなくなったら生活が不便になる」というような方々と一緒に、「どうしたら日常的に利用してもらえるか」を考え、行動しています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
地域の社会問題に学生が向き合っているんですね。
「若者の視点での提案を聞いてみたい」と地域の方から期待されることも多いです。
学生たちが自分の視点で工夫を凝らして、例えば地域の魅力を伝えるすごろくを作成したり、利用促進のアイデアを出したりしています。
私は教育学部出身なので、教育的な観点も持ちながら、ゼミの中で地域とのつながりを大事にしつつ活動しています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
伊藤圭一教授にインタビュー②「自分を知る」ことが、キャリアの土台になる
経験を通じて自分理解を深めることが重要
「就活の教科書」編集部野口
地域の方から期待が寄せられているというのは、とても素敵な関係性だと感じました。
学生のうちに身につけておいた方が良いスキルはありますか?
「自分のことをよく知っている」ことが重要だと思います。
よく知るためには、様々な場面での勉強や経験が必要です。勉強とは、机に向かう学習を指しているわけではありません。
いろんな場に出て、いろんなことに取り組んでいく中で得られるものが大切だと思います。
それは、積極的かどうかという性格の問題ではなく、ひとつひとつの経験を通じて自分についての理解を深めていく、そういう積み重ねが大切なんです。
自分のことを知ることで、相手を認めることもできるようになり、キャリアというものは自然と積み上がっていくものだと私は考えています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
キャリアは自ら頑張って積み上げていかないといけないと思い込んでいましたが、結果自然に積み上がっていくものなのですね。
例えば授業で、目の前にいる学生があまり話したがらないタイプだったとしても、「この子も今、同じことを考えているんだな」と気づくと、自然と親近感が湧いてくるものです。
相手の考えを受け入れられるようになると、自分自身のことも自然と肯定できるようになっていく。
いわゆる自己肯定感も高まってくるのではないかと思います。
授業を通じて身につけていってほしいと思います。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
社会に出る前に身につけておきたい、柔軟な思考と選択肢
「就活の教科書」編集部野口
相手の考えを受け入れられるようになると、自己肯定感も高まってくるのですね。
社会人になるにあたって、学生にどのような姿勢を持ってほしいとお考えですか?
私たちが若い頃は、「最初に就職した会社にずっと勤め上げるのが当然だ」といった考え方が強くありました。
しかし、「この職場はちょっと合わないな」と感じたとき、無理をして耐え続けるだけではなく、「職場を変える」という選択肢も視野に入れることが必要です。
社会に出れば、誰しもさまざまな壁にぶつかります。そのときに、自分にとって最善の判断ができるよう、常に情報を集め、選択肢を持っておくことが大切です。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
今は転職も当たり前の時代ですものね。
壁にぶつかった時、適切に判断できるように選択肢を持つことが大切なのですね。
自分を責めすぎず、評価を受け入れて一歩を踏み出す
また、物事がうまくいかないとき、真面目な人ほど「自分のせいだ」と抱え込んでしまいがちです。
しかし、それは必ずしも自分だけの責任とは限りません。他人のせいにするのもよくありませんが、「自分が悪い」とすべてを背負い込んでしまう必要もないと伝えたいです。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
真面目な人ほど自分を責めてしまいやすい傾向がありますよね。
就職というのは、自分が「この会社に入りたい」と思っても、最終的に採用や配置、仕事内容を決めるのは企業側です。
ですので、「こうありたい」という理想や目標を持つことはとても大切ですが、実際の場面では、その理想通りにいかないことも多い。
「やりたいことをやりたい」という気持ちは素晴らしいですし、意欲のある人ほど、想いは強いと思います。
それでも、「あなたにはこの仕事ができる」と評価してくれた周囲の声や判断を信じて、一度やってみるという姿勢も必要なのではないかと、最近は学生にもよく伝えるようにしています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「なぜやるのか」を考える習慣が社会での成長を支える
「就活の教科書」編集部野口
「まずやってみる」という柔軟な姿勢が、結果的に本当にやりたいことに近づく一歩になるかもしれませんね。
キャリアを積んでいく過程では、「これってどうしてやらなきゃいけないんだろう?」とか、「なんでこうなるんだろう?」と疑問に思う場面が必ず出てくると思います。
そのときに、「なぜ?」という理由を自分でしっかり考えたり、必要に応じて周囲に尋ねたりする姿勢がとても大切だと私は思っています。
腑に落ちないままにしておくのではなく、納得できないときは素直に聞いてみる。
この習慣を持っておくと、社会に出たあとでも、自分なりに理由や意味を見つけられるようになるのではないかと考えています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
納得できないことを放置せずに、自分の中で意味づける姿勢がとても大切だと感じました。
私自身、授業の中では「動機づけ」を意識しています。
学生に何かを指示する前に、「なぜこの課題に取り組むのか」「これをやることで何が得られるのか」といった目的や意義を、できる限り明確に伝えるようにしています。
こうした経験が、学生たちが将来、自らの選択に直面したとき、「なぜ今これをするのか」を自分で振り返り、判断し、納得して行動できる力につながっていくと思っています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
縦のつながりと多様な関係性が、キャリアの視野を広げる
「就活の教科書」編集部野口
学生の将来への想いが伝わってきました。
学生の主体性を育むためにはどうしたらよいのでしょうか。
社会に出ていくと、年齢や立場が異なる人たちとの関係いわゆる「縦のつながり」の中で生きていくことになります。
ですから、卒業が近づいてくる頃には、ぜひその「縦のつながり」も意識しながら、人との関係性を広げていってほしいと思っています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
私は大学生の時、同学年の友達と輪になっていました。
縦のつながりを作るためには、どんな方と関わってどんな経験をすると良いのでしょうか。
一般的に言えば、学外での縦のつながりを作る手段としては、アルバイトや部活動が挙げられるかと思います。
加えて、学内の学科の先輩に声をかけてみたり、習い事に通ってみるといった方法でも十分に意義があると思っています。
ボランティア活動も非常におすすめです。社会や地域に出れば、同じ年齢の人と出会う機会はむしろ少なくなっていきます。
だからこそ、学生のうちから学校外のコミュニティに参加して、年代の違う人と交流する経験を積んでおくことは、今後のキャリアにも大きく役立つのではないかと感じています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
確かにボランティア活動は地域貢献にもなって良いですね。
伊藤圭一教授にインタビュー③就活生へのメッセージ
新卒は「可能性」を最も評価してくれるタイミング
「就活の教科書」編集部野口
年代の違う人と交流する経験を積んでおくことは、今後のキャリアに役立つのですね。
ファーストキャリアはどのような基準で選べば良いと思われますか?
卒業見込みの時期というのは、学生にとって「これから伸びていく可能性」を、社会が最も高く評価してくれるタイミングだと思っています。
ですから、採用試験を受けるときには、「自分の今だけでなく、これからにも期待してくれているかどうか」という視点で、少し客観的に見てほしいなと思います。
「うちの会社についてどれくらい知っていますか?」といった情報収集だけで終わるのではなく、「あなた自身をもっと知りたい」という姿勢が伝わってくる質問があるのかが大事だと思っています。
「どんなことを頑張ってきましたか?」「それを今後どう活かしていきたいですか?」といった問いかけをしてくれる会社は、学生のビジョンや可能性に関心を持っている証だと思います。
ポテンシャルを高く買ってくれるのだから「その期待に応えて働く」というのはやりがいがあると思います。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
新卒はポテンシャル採用と言いますよね。
自分のポテンシャルを見てくれているかを客観的に判断することが必要なのですね。
就職活動では「一社目に縛られすぎなくていい」と言われることもありますが、実際のところ、やはり一社目の影響は大きいと私は感じています。
まったく異なる業界に転職することも不可能ではありませんが、現実的には「同じ業界内でのキャリアチェンジ」の方が圧倒的にスムーズです。
だからこそ、一社目を選ぶ際には、その業界について十分に調べることが必要だと考えています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「新卒としての就職活動」は一度きり
「就活の教科書」編集部野口
やはり業界選びとファーストキャリアは重要なのですね。
最後に就活生にメッセージをお願いします。
転職であれば何度も経験することができますが、「新卒としての就職活動」は一度きりの貴重な機会です。
書類を準備したり、電車で企業に出向いたり、スーツを着て汗をかきながら動いたりと、大変だと思いますが後悔のないようにしっかり取り組んでほしいと思っています。
もちろん、「悔いが残るかどうか」というのは、実際に就職活動をしている最中にはなかなか実感できないかもしれません。
ただ、もし少しでも「あれ?」と違和感を覚えたときには、そのままにせず、ぜひ誰かに相談してほしいのです。
特に年上の人たちは、すでに同じような経験をしてきた人が多いので、1人で悩み込むよりも、信頼できる人に相談する方が、はるかに効率的だと思います。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
「新卒の就活は一度きり」という言葉に、改めて重みを感じました。
1人で抱え込まずに、信頼できる人に相談することが良いですね。
また、最近の就職活動は年々早期化していますが、早く始めたからといって、必ずしも早く決まるとは限りません。場合によっては、長期戦になることもあるでしょう。
めげずに、一度しかない就職活動を成功させてほしいと願っています。
豊橋創造大学 伊藤圭一教授
「就活の教科書」編集部野口
学生への想いが非常に伝わってきました。
伊藤教授、本日はありがとうございました!