【インタビュー】法政大学 児美川孝一郎教授「やりたいことはなくていい」| 自分らしいライフキャリアをデザインする方法とは

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この記事から分かること
  • 法政大学キャリアデザイン学部 児美川孝一郎教授にインタビュー
  • ライフキャリアとは「どんな人生を送りたいか考える」こと
  • 管理主義の行き過ぎがライフキャリアを見失わせる
  • キャリアデザインのために、焦ってやりたいことを見つける必要はない
  • キャリアデザインでは、1つに決め打ちせず、あらゆる可能性を見出そう
  • キャリアデザインには、柔軟性と軸、自分を知ることが大切
  • 「ただの趣味」でも真剣に取り組めば、将来の可能性が広がる
  • 「~ねばならない」は取り払おう

こんにちは!「就活の教科書」編集部のじゅりです。
本日は「ライフキャリア」について、法政大学キャリアデザイン学部 教授 児美川孝一郎さんにインタビューしました!
この記事を読めば、「ライフキャリア」とは何か、「ライフキャリアを通じて実現できること」が分かります。加えて、「キャリアデザインの方法」や「キャリアデザインをする際の注意点」などもお伝えしていきますよ!

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

法政大学キャリアデザイン学部、教授の児美川孝一郎と申します。

本日はよろしくお願いいたします。

Profile

法政大学
キャリアデザイン学部 教授
児美川孝一郎(こみかわこういちろう)
1963年東京都生まれ。東京大学教育学部、同大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。1993年より社会学部非常勤講師として法政大学に勤務。1996年より文学部教育学科専任講師、助教授を経て、2003年よりキャリアデザイン学部助教授、2007年より現職。日本教育学会理事。日本教育政策学会理事。

 

【児美川孝一郎教授インタビュー①】自分らしく生きていくために必要なライフキャリアって?キャリアデザインが大切になった背景

ライフキャリアとは「どんな人生を送りたいか考える」こと

最近、周りの友人から「自分がやりたいことが分からず、就活が進まない」と相談をよく受けるんです。

やりたい職業がないと、就活が進まず、キャリア形成を苦しく思う人が多いように思います。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

キャリア形成において、ワークキャリアから「ライフキャリア」の視点に切り替えることは非常に重要です。

ライフキャリアとは、「どんな人生を送りたいか考えること」を指します。

どんな仕事/職業がしたいのかを考えるのではなく、自分自身がどう生きていくのか、自分の人生の中で、仕事はどんな位置づけなのかを考えることが大切です。

職業や業種にとらわれることなく、「人生」自体の過ごし方を考えるキャリア形成が求められているのですね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

 

児美川教授自身が大学時代に持った違和感が問題意識に

そもそも、児美川教授がキャリアデザインを重視されているのには何かきっかけがあったのでしょうか

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

はい。大学時代に持った違和感が大きなきっかけに、教育学→進路→キャリアデザインへと関心を持つようになりました。

私は高校時代、何も疑わず、ただひたすらに志望する大学への入学を目指し、勉強に打ち込んでいました。

志望する大学にも入学でき、大学生活が始まったのですが、1年生の夏休みごろ、「何のために授業受けてるんだろう。こんなことをやるために目指したわけではない」と思うようになったんです。

高校までは、志望校合格という目標があったから頑張れていたんです。

だけど、いざ受かってしまうと目標がなくなってしまった

高校時代の目標だった大学であったにもかかわらず、入学した意味が見いだせない時期をご経験されたんですね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

そうなんです。

大学の授業自体にすら参加しない時期を何か月か過ごしました。

「授業に行かなければいけない」ことに息苦しさを感じていたんです。

ですが、たまたまおすすめされ、大学2年生で履修した一般教養の教育学がきっかけで、教育学にのめりこむようになりました。

受験システムや競争の教育などを俯瞰的に知る中で、「自分自身が持っていた形式的な学びへの疑問」に答える学問であると感じるようになったんです。

日本の教育システムって、私のように「何のために勉強しているのかわからない若者を、たくさん生んでしまっているな」と感じた時、関心が芽生えました。

目的を見失わないためにも、ライフキャリアを考え、キャリアデザインしていくことが重要になるということですね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

 

やりすぎな管理主義が「大学の学校化」を進行させている

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

今の大学生には、時間がないなと思っています。

私が大学生だった時代は、授業の休講なんてよくあることだったんです。

1つのセメスターに10回授業があったらいい方だと思うくらいでした。

授業当日に休講になることも多かったので、図書館行って、暇つぶしをしたり、古本屋さん巡りをしたりしていて、本を読む時間が多くありました。

学生には本を読んで世界を広げてほしいと思っていましたが、出席が成績に直結するんですから、私の時代ほど自由時間が少ないのではないかと考えるようになりました。

なぜ、このような変化が起きているのでしょうか。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

やりすぎな管理主義が、大学を学校に変えてしまっているのです。

本来、大学は「自立的に学生が自由に学ぶ場所」です。

高校などの「決められたカリキュラムを学ぶ学校」ではありません。

ですが、大学が高校の延長線になってしまい、主体性や自立性が求められる学生から、保護され、面倒を見てもらう生徒になってしまっています。

きめ細かさは必要ですが、現在の学校教育は管理主義的な側面が強いように感じています。

講義する側の大学とシステムに乗る学生の共犯関係が続き、思考が停止してしまうのです。

ただ授業に出て、出された課題をこなし、単位をもらう。

自分自身や周りも、そうした大学生活を送りがちになってしまっていたなと感じます。

「就活の教科書」編集部 じゅり

 


【児美川孝一郎教授インタビュー②】やりたいことはなくていいの?キャリア形成の上で大切になる考え方とは

夢が見つからない人へ:「やりたいことはあってもなくてもいい」

大学での自由な学びをしてこないと、自分がやりたいことすら見えなくなってしまうように思います。

ですが、就活の時期はどんな人にでも訪れてしまう…。やりたいことを見つけるにはどうすればよいのでしょうか

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

そもそも、やりたいことはなくていいと私は考えています。

やりたいことはあっても、なくてもいい。

「やりたいことを持ちなさい。やりたいことを持たない奴は駄目なやつ」みたいな風潮のように脅迫的になってしまうと、みんな萎縮してしまうというデメリットがあります。

なかなかやりたいことが見つからない子は悩んでしまうし、「ほかの友達を見ていたら、やりたいことがあってみんな輝いてるのに」と、落ち込んでしまうのです。

私自身、決まった職種を目指している友人を羨ましく思う時期がありました

「あー、私は何も決まっていない。あの子は決まっていていいな」と。苦しかったです。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

焦ってやりたいことを見つける必要はないんです。

やりたいことを持たないからといって、自分は駄目な人だと思う必要は全くありません

 

1つの職業に決め打ちせず、あらゆる可能性を見出そう

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

さらに言えば、1つの職業に決め打ちしすぎるのも危険です。

ピンポイントにやりたいことを決めて努力をしても、実現できない可能性は十分にあり得るのです。

世の中、中高生の時にやりたかった職業に就いている人は、1割程度しかいないでしょう。

ですが、夢を叶えられなかった人は不幸なんでしょうか。そんなことはありません。

選択肢を見失い狭めるのではなく、違う選択肢も視野に入れていくことが大切になるのです。

ピンポイントに決めたとしても、自分に向いていない可能性だって考えられますよね。

自分自身の目的に合わない選択をしている可能性もあるように思います。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

例えば、「アナウンサーになりたい」という夢を持っていたとします。

この時、アナウンサーに決め打ちするのではなく、根っこを掘ることも大切です。

「広報的な活動に携わりたい」と思っているのであれば、「会社の広報」という可能性も生まれます。

根っこを掘っていくことで、「本当にその職種でいいのか」見抜く材料を多く手に入れることができるでしょう。

「夢がピンポイントでいえないといけない」という雰囲気があると思いますが、選択肢を一つに狭めるのはよくありません。

可能性を大きく広げ、考えることが大切です。

いろんな可能性を考える必要があるということですね!

「就活の教科書」編集部 じゅり

 

あなたの趣味はただの趣味ではない!あらゆるところに将来の可能性がある

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

また、何が将来につながるかはわからないからこそ、ご自身の趣味も大切にしてほしいと思います。

例えば、最近流行りの「推し活」もただの趣味と思ってはいけません。

社会では、どこからだって仕事はわいてきます。

発見があるからこそ、何事にも真剣に取り組んでほしいです。

どんな趣味や取り組みにもいろんな可能性があるということなんですね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

私の受け持つ学生の中には、命を懸けてスターバックスでのアルバイトに取り組む学生がいました。

ただのアルバイトと思うかもしれませんが、会話しているうちに、真剣にやっていることは浮き出てきて、思いがにじみでてくるものです。

企業が体育会系の学生を好むことがあるのは、スポーツという本気で取り組む必要があることに挑戦しているからです。

真剣に取り組んだ経験は、就活においてもキャリアデザインにおいても、非常に重要な糧になるのです。

「どうせ私の趣味なんて」と思うのではなく一つ一つ真剣にやることが大切なんですね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

 

児美川孝一郎教授からのメッセージ「〇〇を大切にキャリアデザインを。」

メッセージ①:柔軟性と軸は維持しよう

最後に、キャリアデザインをする際に大切にした方がよい点を教えていただきたいと思います。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

まずは、柔軟性と軸の両立でしょう。

「やりたいことはなくていい」ものの、方向性/方向感覚は持っていた方がよいです。

例えば、モノ志向なのか、ヒト志向なのか。

ルールに則った仕事がいいのか。ゼロから始める仕事がいいのか。

織り交ぜていくと、大きな方向性になっていきます。

柔軟性も軸も大切なんですね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

人間は、常に選択しながら生きています。何をやる時も選び取っています。

学食に行ったら何を食べるか決めるのと一緒で、好みは必ずあるんです。

ピンポイントに考えすぎずに柔軟に考えながらも、譲れない軸となる好みを維持することが重要になってきます。

柔軟すぎると流れてしまうけど、軸があると自信をもって柔軟になっていけます。

 

メッセージ②:自分について知るために、周りを見よう

譲れない軸を見つける上で、自己分析などにも挑戦してきたのですが、逆に何が何だか分からなくなってしまうことがありました。

譲れない軸を見つける際に実践するとよいことなどはありますか?

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

あまりにも自分で自分のことを悶々と考えてしまうとうまくいかなくなる場合があります。

その時は、周りの動きをじーっと見てください

「自分だったらこうはしないな」「自分だったらあの時こうするな」と思う行動が分かり、自然と自分が浮き上がります。

周りは自分の鏡になるので、周囲とかかわることも大切です。

 

メッセージ③:「~ねばならない」を取り払おう

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

最後に、「~ねばならない」を取り払うことの重要性です。

就活時、「~ねばならない」だけで凝り固まってしまえば、エネルギーを割いても何も出てきません。

例えば、新卒へのこだわりが「~ねばならない」につながっているように思います。

ヨーロッパの20代の多くは、「ジョブホッピング」を経験します。

短期間で職を転々とし、「まあこの職かな!」としっくりくる職業を見つけ、30歳になる頃までに身を固めるのが一般的です。

自分自身の就活などを振り返ると、「~ねばならない」に縛られていたなと実感しました。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

社会経験がない学生にとって、希望の職種のすべてを知ることは困難です。

最近は、インターンなどもありますが、実際の業務とは異なる場合も多いです。

1つの職業に絞れないのはごく普通のことでしょう。

新卒という立場は利用できた方が得かもしれません。

ですが、新卒の列車から降りた時に路頭に迷うような乗り方では本末転倒です。

長く働く人生のために、下地を作ることは大切でしょう。従来、職業は変えられるものです。

「~ねばならない」という考えに凝り固まり、エネルギーを割くのではなく、幅広い可能性に身を投じていってほしいです。

私自身も「こうじゃないといけない!」と思い込んでいたことに気づかされました。

キャリアをご研究される児美川教授だからこそ伝えられる心強いメッセージを大変にありがとうございます。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

少なくとも日本の採用システムの現状であれば、1つの職業に絞らない方が齟齬はありません。

幅広くいろんな可能性を広げていってほしいです。

就活生の勇気につながるお話、大変にありがとうございました!

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学       キャリアデザイン学部       児美川 孝一郎教授

ありがとうございました!

一般社団法人 日本キャリアパスポート協会(https://www.career-passport.net/

児美川教授のX(旧Twitter)(https://twitter.com/komikawa_1963?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor