【インタビュー】武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長伊藤羊一さん「自分を諦めるな」Lead the Selfとは?

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伊藤羊一

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「就活の教科書」編集部野口

こんにちは!「就活の教科書」取材チームの野口です。
今回は、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長の伊藤羊一さんに「アントレプレナーシップ学部の特徴」や「これからの社会に必要な人材」についてお話を伺いました。

伊藤さん、本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

武蔵野大学伊藤羊一さん

Profile

伊藤羊一

伊藤羊一(いとう・よういち)
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長

東京大学卒業後、日本興業銀行に入行し14年勤務。プラス株式会社で11年間、マーケティングや子会社経営を経験。その後、ヤフー株式会社にて「ヤフーアカデミア」の学長として次世代リーダー育成を担う。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。他にも「Musashino Valley」や「ウェイウェイ」代表として次世代リーダー開発を行う。代表作「1分で話せ」は67万部超のベストセラーに。

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長伊藤羊一さんの経歴と教育観とは?

東日本大震災で変わったリーダーシップの本質

「就活の教科書」編集部野口

さっそくですが、アントレプレナーシップが重要だと考えられたきっかけを教えてください。

2011年の東日本大震災が大きな転機になったと思います。私は当時、「プラス」という会社に勤めておりましたが、震災によって物理的なネットワークや物流がほぼすべて崩壊しました。
それまでは、「成果を出すこと」「マネジメントをしっかり行うこと」といったことを重視して働いていました。しかし、あの時はそういった発想では通用しない状況だったのです。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

震災時は「成果」や「マネジメント」などと言える状況ではありませんよね。

組織をどう成長させるかというよりも、そもそも「何をどうしていいかわからない」という状況で、現場では誰もが戸惑っていました。
指示を出すはずの上の立場の人たちも機能していない中で、「自分が決めるしかない」と感じました。その時に、自分の意思で動くことの大切さに気づきました。これが、私にとって「真のリーダーシップ」に目覚めた瞬間でした。

武蔵野大学伊藤羊一さん

 

自分を導く力=アントレプレナーシップとは?

「就活の教科書」編集部野口

震災の時は誰でも戸惑うと思います。

「真のリーダーシップ」とは、どのようなものなのでしょうか。

リーダーシップというと、「声を上げて皆を引っ張っていく」ような印象があるかもしれません。

ですが、私が思うリーダーシップとは、「自分の意思に基づいて、自らの未来を切り拓いていくこと」だと考えています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

真のリーダーシップとは「自分の意思で未来を作っていくこと」なのですね。

私は「Lead the Self」(リード・ザ・セルフ)=「自分自身をリードすること」と「アントレプレナーシップ」は同義語だと捉えており、どちらも重要だと考えています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

 

20代は仕事のできないクラゲ人間だった

「就活の教科書」編集部野口

自分自身をリードする力とアントレプレナーシップが同じような概念なのですね。

伊藤さんはグロービス経営大学院などで講師としても活躍されていますが、なぜ教育の道に進まれたのでしょうか。

私は20代の頃、どうしようもない社会人でした。仕事もできない、スキルもない、人とのコミュニケーションも苦手で自信がありませんでした。

26歳の頃仕事がうまくいかず、メンタルのバランスを大きく崩してしまいました。当時はまだ「メンタルヘルス」という言葉も浸透していなかった時代ですから、「自分は怠けているだけなのでは」と自分を責めながらも、なんとか出社を続けていました。毎朝、吐き気に襲われながら出社していました。まるで「クラゲ」のように職場をただ漂っているだけのような感覚でした。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

伊藤さんにもそんなご経験があったのですね。そこからどのように復活されたのでしょうか。

3つの大きな要素があったと思います。

1つは、「自分がやりたい」と思えたこと。

2つ目は、良い上司や仲間に恵まれたこと。

そして3つ目は、「仕事があったこと」です。つまり、自分に役割が与えられたという感覚を持てたことが、とても大きかったのです。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

自分に役割があると感じられたのですね。

長い時間をかけて少しずつ「仕事ができるようになってきたかもしれない」と感じるようになりました。そして気づいたのは、「正しい方法を学べばできるようになる」ということです。

例えば、私はもともと「考える力」がまったくありませんでした。でも、グロービスで「考え方」を学んだことで「こう考えれば結論が出るのか」と理解できたんです。

私は20年かけて苦しみながら学んできましたが、そのプロセスをもっと多くの人に伝えたいと思い、過去の自分のように悩んでいる人たちに「こうすれば大丈夫だよ」と伝えています

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

ご自身の学びが、次の世代の学びに繋がっているのですね。

 


武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(EMC)とは?

高い志と倫理観に基づき、失敗を恐れずに踏み出し、新たな価値を生み出すマインド

「就活の教科書」編集部野口

伊藤さんはずっと順風満帆なキャリアを歩んでこられた方だと思っていました。ご自身の経験をもとに教育の道に進まれたのですね。

そもそも「アントレプレナーシップ」をどのように定義されているか教えていただけますか。

アントレプレナーシップとは、「高い志と倫理観に基づき、失敗を恐れずに踏み出し、新たな価値を生み出すマインド」です。これは起業する人だけでなく、すべての働く人に必要な心構えです。

「志」とは、必ずしも立派な目標でなくて構いません。「やってみたいこと」や「夢」でいいんです。そして、それが社会的に正しい方向を向いているか、つまり倫理観に基づいていることも大切です。

新しいことに挑戦すれば、必ず失敗します。失敗を恐れないのではなく、「失敗するのが当然」という前提でチャレンジすることが重要です。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

失敗を恐れず、チャレンジすることが重要なのですね。

そして、やりたいことに取り組む中で、「誰かの役に立つ」つまり「価値を生み出していくこと」は大げさなことではなく、誰かに喜ばれたり、必要とされたりすることそのものです。

本来、人が自然に持つはずのこの姿勢が、日本社会では当たり前になっていない。

だからこそ「やりたいことに挑戦していい」と思える環境をつくりたくて、この学部を立ち上げました。

武蔵野大学伊藤羊一さん

 

日本初アントレプレナーシップ学部設立:信念で実現

「就活の教科書」編集部野口

そんな想いでアントレプレナーシップ学部を立ち上げられたのですね。

武蔵野大学は日本で初めてのアントレプレナーシップ学部なのですよね。

私はヤフーアカデミアで人材育成を行い、社会人に対してはアントレプレナーシップを伝えられる実感がありました。ただ、本当は学生にも早いうちから伝えたいと感じていました。

そんな中、武蔵野大学の学長と出会い、食事をすると「そういう教育を学生向けにやろう」と意気投合しました。

話を深めていく中で、「新しいことに挑戦する人を育てたい」という想いが一致し、それならアントレプレナーシップ学部しかないと考えました。結果、日本初の学部になりました。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

学長との意気投合で出来たなんて凄いですね。

学部とはそんなに簡単に作れるものなのでしょうか。

もちろん、設立は簡単ではありませんでした。教員の確保や勤務形態の調整、給与体系の見直しなど、すべてが初めての挑戦で、文科省の認可も遅れ、入試も一度中止になりました。

既存の大学関係者からは「成り立たない」と否定されることも多かったですが、人は目覚めれば驚くほどの力を発揮するという確信がありました。「新しいものをつくるなら、自分がやる」と決めたんです。

苦労はありましたが、信念だけは揺るぎませんでした。

やりきれた理由は、気合と覚悟しかなかったと思っています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

まさに伊藤さんのアントレプレナーシップから生まれた学部なんですね。

今、アントレプレナーシップ学部はすごく人気なのではないでしょうか。

ありがたいことに、アントレプレナーシップ学部は志願者が増えており、注目度が高まっていることを実感しています。

最近では、受験系人気YouTuberの方が今注目の大学トップ5にアントレプレナーシップ学部を選んでいただきました。

他大学は大学単位での紹介だったにもかかわらず、アントレプレナーシップ学部だけが「学部単位」で選ばれていました。社会からの関心が確実に高まっていると感じています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

『wakatte.TV』びーやまさんの著書「17歳の時に知りたかった受験のこと、人生のこと」

 

1年次は全員寮生活!主体性を育てるユニークな学びの形

「就活の教科書」編集部野口

人気YouTuberの方がご紹介されたんですね。

改めてになりますが、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の特徴を教えていただけますか。

アントレプレナーシップ学部の特徴は1年生全員が寮で生活することです。

実家にいると、どうしても親からの影響を受けやすくなります。これまでと変わらない生活環境の中では、自分の考えで行動する機会が限られてしまいます。だからこそ、まずは一歩外に出て、自分で生活するという体験が重要だと考えました。

アントレプレナーシップ学部の仲間と寮に住み、自分で生活を営むことで、自然と主体性が育まれます。仲間の挑戦や考えに触れることも、刺激になります。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

全員で寮生活ですか。共同生活は楽しそうですし、勉強になりそうですね。

 

全員が海外短期留学を経験、世界を知る

加えて、アントレプレナーシップ学部では、学生全員が海外短期留学を経験するプログラムを実施しています。世界を知る目的は、異なる文化や価値観に触れることで、多様性への理解を深めることです。

日本はとても暮らしやすい国で、安心感もありますが、ダイバーシティーが足りないと感じていました。だからこそ、一度「アウェー感」を味わってもらいたいと考えました。

日本を離れ、異なる文化や価値観や行動様式に触れ、「世の中にはいろんな人がいる」と実感してほしいと考えています。日本では当たり前のことが、他国ではそうでない場合もあります。そうした違いに気づくことが、自分の視野を広げるきっかけになるはずです。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

全員海外留学を経験できるのですね!行き先はどちらでしょうか。

渡航先は、学生の希望をもとに大きく分けて2つの地域です。ひとつはアメリカ・シリコンバレー、もうひとつはアジア諸国です。今年はフィリピン、昨年はインドネシアへ行きました。どちらの地域でも、現地の起業家との対話の機会を設けています。現地の起業家は自分の人生を自ら切り開いている方々で、学生にとって大きな刺激になると考えています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

 

武蔵野大学「成長実感」学生満足度No.1の学部

「就活の教科書」編集部野口

現地の起業家と対話できるのは貴重な経験になりますね。

アントレプレナーシップ学部の学生さんはどういったタイプの方が多いのでしょうか。

「アントレプレナーシップ学部」と聞くと、「起業したい人が集まる場所」と思われる方も多いかもしれませんが、割合としては少数です。

多くの学生は「自分の好きなことを見つけてやってみたい」と思っています。入学時点で「これがやりたい」と明確に言える学生ばかりではありませんが、4年間の中で、それを探し、育てていく。そういう学びの場にしていきたいと思っています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

学生のうちににやりたいことを見つけられそうですね。

アントレプレナーシップ学部の学生さんから寄せられる声はありますか?

武蔵野大学全体で行われている「成長実感」についてのアセスメント調査で、アントレプレナーシップ学部の学生たちは、「自分が成長している」と強く実感している割合が、他の学部と比べて圧倒的に高い結果となりました。大学への納得度や授業内容、教員への満足度も他学部と比較すると高い水準を示しています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

凄いデータですね!

この結果の背景には、授業の進め方が関係しています。アントレプレナーシップ学部では座学はほとんど行わず、学生同士が議論したり、実際に動くインタラクティブな授業が中心です。

そうした中で、学部そのものに対して強い愛着を持つ学生が多く、「この学部が大好き」「通っていて本当に良かった」といった声が寄せられています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

アントレプレナーシップ学部は座学ではなく、学生主体の授業が多いのですね。寮生活も含めて学生生活が楽しそうです。

起業でも就職でも、公務員になるのでも、どんな道を選ぶかは本人が決めればよいです。4年で卒業する必要はなく、何年かかっても構わないので「これが自分の道だ」と思えるものを見つけてほしいんです。

4年生に進路について下級生にプレゼンしてもらったのですが、みんな本当に目がキラキラしていた。その姿を見て、良かったと感じました。

武蔵野大学伊藤羊一さん

 

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長伊藤羊一さんから就活生へのメッセージ

就活でも社会でも問われる、自分の意思を形にする力

「就活の教科書」編集部野口

進路についてのプレゼン、私も聞いてみたいです。

伊藤さんは、これからの社会に必要な人材はどのような人だとお考えでしょうか。

これからの社会で求められるのは、「こうしたい」という自分の意志を持ち、それを形にできる人材です。

「失われた30年」と呼ばれ、日本は30年近くも経済成長が停滞している状況にあります。1980年から1995年までは、日本もアメリカと同様に成長していたのですが、1995年以降、その成長が急に止まりました。

1995年といえば、「Windows 95」が登場し、インターネットが一般に広がり始めた年です。以降、自由な発想で新しいものを生み出す時代が始まりました。アメリカでは、個人の欲求や思いつきを起点にした起業が次々と生まれ、FacebookやAmazonのような世界的企業が登場しました。

武蔵野大学伊藤羊一さん

GDP(国内総生産)の推移

一方で、日本は「自由に何でもやっていい」と言われたとたん、手が止まってしまったような状況です。自由な発想で新しい価値を創造する力に関しては、なかなか対応できなかったというのが現実です。

実際、就職活動においても「正解を答えなければいけないのでは」と不安に感じる学生が多くいます。しかし、本当に大事なのは、「あなたはどう考えているのか」をしっかりと伝えられるかどうかです。自分の意見を持ち、表現できる人が、これからの時代に求められると考えています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

自分の意見を持ち、表現できる人が、これからの時代に求められるのですね。

就職活動では、どうしても「大企業の社員として求められる模範的な答え」を意識してしまう傾向があります。しかし、それを企業側が求め続けるようであれば、その企業の将来は厳しくなるかもしれません。企業側は「あなた自身の意見を聞かせてほしい」という姿勢を持つべきですし、学生の皆さんも、そうした自由な発想や個性を尊重してくれる企業を選んでほしいと考えています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

 

刺激 → 対話 → 行動のサイクルを回して自己効力感を育む

「就活の教科書」編集部野口

就活生も面接で自分の意見を言ってもいいのですね。

自信がない学生が多いと思いますが、自己効力感はどのように育てれば良いのでしょうか。

アントレプレナーシップは「自己効力感」にも繋がると考えています。つまり、自分にできるという感覚を持つことが重要で、そのためには実際に「やってみる」経験が不可欠です。

「刺激を受ける」「考える」「話す」「やってみる」というサイクルを何度も繰り返していくことで、自信が積み重なり、自己効力感が確実に育まれていきます。

授業の外でも、面白いと思ったことには積極的に触れてみてください。たとえば友達との対話、イベントに参加する、映画を観るなど、様々な方法で刺激を得て、それについて話し、試してみる。こうした行動の積み重ねが、学びの本質だと考えています。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

刺激を受けて、考えて、共有して、実践することを繰り返すと良いのですね。

 

「自分を諦めないで」

「就活の教科書」編集部野口

伊藤さん、ありがとうございました。

最後に就活生にメッセージをお願いします。

「自分の人生を諦めないで」と伝えたいです。

面接で結果が出なかったとしても、それはあなたという人間の価値が否定されたわけではありません。単にその企業との相性が合わなかっただけのことです。あなたを必要としている会社は、必ずどこかにあります。

ですので、「自分なんてダメだ」と思わないでください。何度も落ちると心が折れそうになるかもしれませんが、そこで諦めてほしくないです。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

「必要としている会社は必ずどこかにある」心が救われる就活生が多いお言葉だと思います。

そして、基本的ですが、「よく眠ること」も大切です。

メンタルのコンディションは、睡眠でかなり改善されるものです。しっかり休んで、心と体の状態を整えてください。

最後になりますが、諦めず、自分を信じて進んでいってほしいと思います。

武蔵野大学伊藤羊一さん

「就活の教科書」編集部野口

お話を伺って、アントレプレナーシップ=起業家だけに必要な力ではなく、「自分の人生を自分で生きる」ためのマインドなのだと実感しました。

伊藤羊一さん、ありがとうございました!

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部

伊藤羊一公式サイト