【インタビュー】立命館大学 菊池美由紀 准教授 | 敗者復活を体現したキャリア論 | 人生はやり直せる

本ページはプロモーションを含みます

立命館大学 共通教育推進機構 准教授菊池 美由紀

就活の教科書は、有料職業紹介許可番号:27-ユ-304518)の厚生労働大臣許可を受けている株式会社Synergy Careerが運営しています。

「就活の教科書」編集部野口

こんにちは!「就活の教科書」取材チームの野口です。
本日は、立命館大学でキャリア教育を担当されている菊池美由紀准教授にキャリアについてインタビューしました。

菊池先生、本日はよろしくお願いいたします!

よろしくお願いいたします!

立命館大学 菊池美由紀 准教授

Profile

菊池 美由紀 (きくち・みゆき)
立命館大学 共通教育推進機構 准教授

就職氷河期に就活を経験。大学卒業後、NECに総合職として入社するも、ミスマッチを感じて2年半で退職。その後、複数の企業を経て30代半ばでキャリアコンサルタント資格を取得。ハローワークの職業相談員としてキャリアカウンセリングを行ううちに、キャリア教育に強い関心を抱くようになり、36歳で大学院へ進学。修士・博士課程を経て、愛知県内の大学に勤務し、2025年4月より立命館大学キャリア教育担当教員として着任。

 

菊池美由紀准教授にインタビュー①立命館大学でのキャリア教育

「就活の教科書」編集部野口

さっそくですが、菊池先生は立命館大学でどんな授業をされているのでしょうか。

私が立命館で担当しているキャリア教育には大きく分けて2つのタイプがあります。

第一に、さまざまなゲストスピーカーから話題を提供してもらい、テーマについてレポートを書いたり学生同士でディスカッションをしたりしながら考察を深めていく講義型の授業。

第二に、企業からリアルな課題を提示してもらい、学生が課題を解決するための提案をするという課題解決型の授業です。

授業形式は違いますが、どちらの授業も教員が学生に「正解を教える」というよりは、大学での過ごし方や今後のキャリアについて「考える機会を提供する」ことに重きを置いています。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

立命館大学のキャリア教育では「正解を教える」よりも「考える機会を提供する」ことを重視されているのですね。

課題解決型の授業において、教員にはペースメーカーに徹することが求められています。

私は前任の先生から、授業で「教えない」「喚起する」「専攻学問に配慮する」ことの大切さを教えてもらいました。

でも、まだまだこれまでのやり方を引きずってしまい、このやり方が身についていないので、日々反省しています(笑)

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

教員という職業は「教えてくれる人」だと思い込んでいました。

課題解決型の授業で菊池先生は「ペースメーカーに徹すること」を心がけているのですね。

 


菊池美由紀准教授にインタビュー②自身のキャリアをもとに伝えたいこと

やりたいことがわからなかった学生時代

「就活の教科書」編集部野口

菊池先生は学生時代、悩みがありましたか?

大学生の時は私も自分のやりたいことがはっきりしなくて、どうしたらいいかわかりませんでした。

やりたいことが見えてきたのは、30代半ばから。

いろいろな職場や職種を経験して、まわりの人たちから褒められたり怒られたりして、徐々に自分の得意なことや苦手なことがわかるようになりました。

それでやっと自分のやりたいことが見えてきたように思います。

だから、学生から「やりたいことが分からないから、就職活動が出来ない。動けない」と言われると「そりゃそうだよね」と思ってしまいます。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

菊池先生も学生時代、やりたいことがわからなかったのですね。

就活生の時どのように会社を選んでいたのでしょうか。

私自身やりたいことが分からなかったので、とりあえず安定していそうな大手企業を中心に見ていました。

育児支援制度が充実しているBtoB企業に応募し、社風のよさそうなNECに決めました。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

決め手は社風が良さそうな企業だったのですね。

 

就職氷河期にNECに入社

私が就職活動をしていたのは「氷河期」と呼ばれる時代で、内定をもらうことがものすごく難しい時期でした。

そんな時期に内定をもらえたことは本当にありがたかったのですが、入社してから大企業の文化や、扱う製品に興味を持てないことに気づき、結局2年半で離職してしまいました。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

大手企業に就職したのに、退職されたのですね。

その後は会社の倒産、出産による雇用打ち止め、体調不良、夫の転勤など自分の意志というよりは、やむを得ない理由でキャリアを転々とする日々が続きました。

この時、しみじみと「キャリアって思い通りにならないものだな」と思いました。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

様々な理由があったのですね。

それでも働き続けたのは、育児休業期間中に「自分は専業主婦に向いていない」ということに気づいたからです。

学生時代は子どもが出来たら専業主婦になる将来を描いていましたが、実際、専業主婦になってみると、孤独で、私らしさを失ってしまうようで恐ろしくなりました。

仕事が出来なくなって初めて、働くことで得られる達成感や、仕事を通じて社会とつながれることのありがたさに気づきました。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

「専業主婦に向いていない」ですか・・・その立場にならないとわからないですよね。

でも、子育てと仕事の両立は気が狂うほど大変でした。

いつも時間に追われて疲れていました。

泣き叫ぶ子を保育園に連れていくとき、近所のおじいちゃんから「こんなに小さいのに保育園に行くの?かわいそうに」と言われ、落ち込んだことを思い出します。

まだまだ女性に母親らしくあることが求められていた時代だと思います。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

子育てと仕事の両立、尊敬でしかありません。

 

ハローワークでの支援から感じた違和感

ハローワークで働いていた頃、生活保護を受けている方々の支援をしていました。

特に多かったのが、離婚して子どもを育て生活に困っている女性からの相談でした。

「事務職に就きたいんです」という声が多かったんですけど、事務職ってやっぱり人気があるので、なかなか紹介しても決まらない。

そうすると、「人生って一回落ちちゃうと、もうダメなんですかね……」なんて言われることもあって。

その言葉が、今でもすごく心に残っているんです。

だからこそ、「敗者復活って無理なのかな?」「何度でもやり直せる社会になったらいいのに」って、本気で思っていました。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

ハローワークでの支援の経験からやり直しのきく社会への想いが生まれたのですね。

でも正直、自分自身も「敗者復活できてないんじゃないか」ってずっと感じていました。

NECを辞めたあとは非正規で働いていた期間が長いので、定年まで働けないし、給料も安定しない。もちろん昇給もボーナスもない。

周りは正社員で出世してるのに、私は・・・と比較してしまうこともありました。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

私はよく周りと比較して落ち込むことがあるのですが、菊池先生にもそんなご経験があるのですね。

 

努力すれば、なんとかなる社会を創りたい

そこから大学院に進んで、学位を取って、ようやく今ここにいます。

博士号を取るまでには、本当に血のにじむような努力をしました。

ずっと「どうやったらこの状況を乗り越えられるんだろう」って、模索し続けてきました。

それでも耐えられたのは、自分の人生を通して「やり直しはできる」ってことを、証明したいという気持ちがあるからだと思います。

努力すれば、なんとかなる社会。

そんな社会を、少しでも実現していきたいなって思っています。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

菊池先生ご自身の人生を通して、やり直しできることを証明したかったのですね。

 

菊池美由紀准教授にインタビュー③就活生へのメッセージ

日本ではまだまだメンバーシップ型雇用が一般的

私はやりたいことが分からなかったので社風で会社を選びましたが、結局離職しています。

では、やりたいことを仕事にしていれば離職せずに済んだのでしょうか?

日本ではまだまだジョブ型雇用ではなく、メンバーシップ型雇用を維持している会社が多いです。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

ジョブ型雇用は「仕事に合う人」を採る仕組みで、メンバーシップ型雇用は「会社に合う人」を新卒一括採用する仕組みですよね。

はい、メンバーシップ型雇用は「就職」ではなく「就社」です。

「就社」の場合、職務内容が限定されないので、希望する会社に入ったとしても、希望する仕事ができるとは限りません。

「大学で学んだことを活かせる仕事がしたい」と思っても、配属されるのは全く関係のない部署になることもあります。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

就社ですか・・・

確かに「部署異動の希望が通らない」という話を聞いたことがあります。

たとえジョブ型雇用だったとしても、入社前に「やりたい」と思っていた仕事は、どの程度実態と一致しているのでしょうか。

実際に働いてみないと、分からないこともたくさんあると思います。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

 

やりたいことを仕事にしなくても良い

「就活の教科書」編集部野口

正直、実際に働いてみないとわからないですよね。

菊池先生同様「やりたいことがわからない」と悩んでいる学生が多いと思いますが、この悩みについて菊池先生はどうお考えでしょうか。

もちろんやりたいことがある人は、それを仕事にするのもいい。

でも、やりたいことを仕事にしなくても良いと思っています。

やりたいことを仕事にできる人ってほんの一握りだと思いますし、まずは生活の糧を得ることが大事なんじゃないかな、と思います。

だから、仕事は「生活のため」と割り切ってもいいし、趣味の時間を確保できるような働き方でもいい。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

無理に「やりたいこと」にこだわらなくてもいいんですね。

やりたいことを仕事にすると、嫌いになる場合もありますしね。

社風も自分のやりたいことも、自分の得手不得手も、結局のところ実際にやってみないと分からないのではないかと思っています。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

 

後悔しないような就活をしてほしい

「就活の教科書」編集部野口

就活に対して真剣に向き合っていた学生ほど、今回のお話を通して視野が広がり、気持ちが軽くなったと思います。

就活生はどのように就活をすれば良いと思われますか。

やってみないと分からないけれど、適当に就活をして、内定をもらったところに就職すればよいとは思いません。

「やれるだけのことはやった」と思えるくらい就活をやっておかないと、就職前に「これでよかったのかな」と不安になってしまいます。

就職後も仕事で困難に直面するたびに「もっとまじめに就活すればよかった」と後悔すると思います。

一生懸命悩んで、考えて就職活動をやれば、何かあったときに後悔することは少ないのではないかと思います。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

入社後に後悔しないように、一生懸命就活することが良いのですね。

他にも学生時代にやっておいた方が良いことはありますか?

大学時代はとにかくいろいろな人と会って、いろいろなことをやってみてほしいと思います。

私たちは自分と似た人と一緒にいる方が楽だから、気がつけば大学でも休日でもアルバイトでも、自分とよく似た人と過ごしがちです。

でも似たような人とばかり過ごしていると、自分の価値観に凝り固まって多様なものの見方が出来なくなってしまいます。

偉そうなことを言っていますが、私自身、外国の方や世代の違う方と働くことにとても苦労した経験があります。だからこそ、若い頃にもっといろいろな人と関わって、多様性を受け入れられるようになっておけばよかったと反省しています。

関わると言っても、ただ挨拶を交わすだけの浅いかかわり方ではなく、一緒に働いたり、暮らしたりするなど、本音をぶつけ合わざるを得ないようなかかわり方が出来るとよいなと思います。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

ついつい気の合う友人とばかり一緒にいました。

自分と異なる価値観を持った人と関わることが良いのですね。

 

就職活動では立ち止まって悩むより、動きながら考える

就職活動は選ばれる場であると同時に、学生が企業を選ぶ場でもあります。

コロナ禍を経てオンラインによる就職面接が普及し、以前ほど就職活動が大変ではなくなってきました。

だから、就職活動では「自分のことが分からない」と立ち止まるよりは、動きながら考える。

就職活動で様々な人と出会うことを通じて、自分のやりたいことや得手不得手に気づき、就職先を絞り込んでいく、というのも良いように思います。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

「立ち止まるよりも、動きながら考える」ですか。

人と出会うことによって自分の得意なことが見える化されることもありそうですね。

 

人生はやり直せる

「就活の教科書」編集部野口

菊池先生、ありがとうございました。

最後に就活生に向けてメッセージをお願いします!

「新卒で採用されるのは人生で一度だけだから」と考え、失敗が怖くて踏み出せない方も多いのではないかと思います。

でも、人生はやり直せると思っていますし、やり直せると思いたいです。

私自身、大学卒業後、複数の企業、職種を経験してきました。

だから皆さんも、考えこんで動けなくなるよりは今できることを一生懸命してみる。

いろいろな人の話を聞いたり、インターンシップやアルバイトでいろいろな仕事を試してみたりして、完ぺきではなくても「ここなら…」と思えるところを決め、就職してみる。

就職したら、まずは一生懸命頑張ってみる。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

新卒カードという言葉もありますし、就職活動を失敗したくないと考える就活生が多いですよね。

完璧でなくても少しでも良いと思った企業に就職してみるのも良いのですね。

入社後どうしてもだめだと思ったら、やり直せばよいと思います。

ただ、転職はやはり大変です。

仕事をしながらの就職活動は気力も体力もいります。

新しい職場でゼロからスタートするとなると、今まで学んできたことや習得したやり方をいったん捨てて、新たに仕事のやり方を覚える必要があります。

加えて、新たに人間関係を築き、その職場のやり方を覚え、成果を出していくためにはどうすればよいのかを短期間で考える必要があります。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

転職が当たり前の時代になりましたが、転職活動と新しい職場でのスタートは大変だと感じています。

だからこそ、大学では学び方を学んでほしいなと思います。

高校までは先生が教えてくれる内容を暗記、もしくは応用すれば正解でした。

でも社会に出れば、正解がない問いに取り組む必要があります。

Aがよいと思っていても様々な理由によりBを選ばざるを得ない場合もあります。

また、目まぐるしく変わる社会では正解だったものが正解でなくなることもあります。

嫌いだから、苦手だからと言って逃げるわけにはいかないこともたくさんあります。

だからこそ、時間も自由もある大学時代に、学び方を学んでおかれるとよいと思います。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

菊池先生はご自身の経験をもとに、大学生に「学び方を学ぶことの必要性」を教えていらっしゃるのですね。

「人生はやり直せる。」迷ったときでもまずは一歩踏み出してみたらよいと思います。

そうすれば、新しい世界が見えるかもしれません。

立命館大学 菊池美由紀 准教授

「就活の教科書」編集部野口

「失敗してもいい」「人生はやり直せる」ということを、実体験に基づいて語ってくださいました。

私も迷ったら、一歩踏み出してみようと思います。

菊池先生、本日はありがとうございました!

立命館大学 研究者学術情報データベース

大学におけるキャリア教育の社会学-偏差値序列に対する適応と抵抗のストラテジー