「就活の教科書」編集部 野口

杉田 海地(Kaichi Sugita)
株式会社Saix 代表取締役
2025年、株式会社リクルートに入社後、Indeed Japan株式会社にてHR領域(採用市場)におけるデジタルマーケティングの最前線を経験。在職中の同年10月に株式会社Saixを創業。現在は生成AIのプロフェッショナルとして上場企業や成長企業の生成AI研修・コンサルティング支援を行う。
目次
株式会社Saix 杉田海地さんにインタビュー①:AIの現在地と「Claude」の衝撃
チャットからAIエージェントへの進化
── さっそくですが、現在のAIの進化の度合いについて教えてください。
杉田海地さん: 1〜2年前は、チャット形式のChatGPTやGeminiが流行していました。何かを質問して、それに対する回答を受け取るという、相談相手や調べ物をしてくれるような位置づけです。
しかし最近は、「AIエージェント」と呼ばれるものが登場しています。これは、人間が1回指示を出すと、AIが裏側で5個や10個といった複数のタスクを勝手に判断してやってくれるようなシステムです。今まではチャットの相手でしかなかったAIが、明確に「仕事のパートナー」に変わっていることが最近のAIの進化ですね。
アメリカや中国からは、CodexやClaude Codeをはじめとした様々なAIエージェントが次々と出てきています。これらのAIエージェントを使っている会社と使っていない会社では、すでに大きな差が開いていますし、就活生でも同じことが言えると感じています。
就活をするなら、まず「Claude」に課金
── もし杉田さんが、現在のAIエージェントが使える状況で就活をやり直すとしたら、どのようなステップで進めていきますか。
杉田海地さん: まずは迷わず、Claudeに課金します。月額3,000円ほどの費用がかかりますが、そこを投資するのが最初の1歩ですね。
就活には、ES(エントリーシート)を書いて、一次面接、二次面接、最終面接があって……というような一連のステップが決まっていると思います。その流れの中で、書類作成の作業にはAIを使いまくります。
就活におけるリサーチや書類作成をAIに任せることで、単純に時間効率が10倍、20倍と変わってきます。例えば、1人の学生が従来の方法で1社に応募している間に、AIを駆使すれば10社に応募できるだけの準備が整うわけです。もし選考の通過率が同じ1割だったとしても、応募できる母数が変われば、通過する社数や内定をもらえる確率は上がります。AIを使いこなすだけで、それだけの差が生まれるのが今の就活だと思います。
ClaudeはChatGPTやGeminiより精度が高い
── 数あるAIツールの中で、ChatGPTやGeminiではなく、Claudeをおすすめする理由はどこにあるのでしょうか。
杉田海地さん: 一番の理由は、AIエージェントとしての精度ですね。Webでのリサーチ、書類の作成、ブレスト、最終的なアウトプットの出力といった一連の作業をこなす能力は、現時点ではClaudeが頭一つ抜けています。そのため、今就活で使うなら「Claude」を選ぶのが一番賢い選択だと思います。
加えて、最近のAIの使い方として、以前のように複雑なプロンプト(指示文)を細かく書く必要がなくなってきています。つまり、就活生がわざわざAIの勉強をする必要はないということです。まずは課金をして、自分がやりたいことを自然な言葉で言うだけで良いんです。そうして使い込むうちに、一般的な就活エージェントの担当者の方よりも、筋の良いアウトプットを出してくれるようになります。

株式会社Saix 杉田海地さんにインタビュー②:AI×ES作成と「AIバレ」を防ぐ
まずは新卒に求められていることを洗い出す
── 実際にClaudeを使ってESを作成する場合、最初はどのような指示を出して進めていくのがおすすめですか。
杉田海地さん: おすすめは、志望する企業の採用ホームページを開いて、その企業の新卒に求められているスキルやスタンスをすべて洗い出すことです。例えばリクルートであれば、「圧倒的当事者意識」と「思考力」が重要である、といった要件が明記されています。企業の採用担当者は、新卒に求める要素を「地頭力」「行動力」「論理的思考力」というように、いくつかの要素に分解して考えています。まずは、その企業が何を重視しているのかという「評価基準」をしっかり把握することがスタートラインです。
その上で、Claudeのチャット画面に以下のような3行ほどのシンプルな指示を入力します。
「〇〇株式会社の新卒採用で求められるスキルやスタンスはこれらです。これらを基に、選考に通過するためのESを書いてください。今から私が学生時代に力を入れたことを音声入力で伝えるので、すべてを構造に沿ってまとめて、いい感じの文章にしてください」
これだけで、その企業に最適化されたESの土台が完成します。さらに、企業の評価基準をClaudeに与えて、「この要件に照らし合わせた場合、今の文章は何点ですか?」と100点満点で採点させ、足りない要素をロープレ形式で補強していくような使い方も効果的です。
Claudeに人間らしさを採点させる
── 非常に質の高いESが作れそうですが、AIが作った文章をそのまま提出すると、人事の方に見抜かれて弾かれてしまうのではないでしょうか。
杉田海地さん: そうですね、そのまま出すとバレます。ただし、バレないようにする方法もあります。それは「人事がなぜその文章を見て『AIっぽい』と判断して弾くのか」という理由を、すべて言語化して対策することです。
人事が違和感を覚える「AIっぽい文章」には、いくつか明確な特徴があります。
- 「〜です」「〜ます」というですます調が連続していて不自然
- 一般的で機械的な表現が多く、書き手独自の「一次情報」や具体的な経験談が入っていない
- 誰にでも言えるような抽象的な内容に終始している
これらを防ぐために、ここでもClaudeに評価をしてもらうプロセスを挟みます。文章を作成させた後、人間らしい文章になっているかどうかを判定するための採点表をClaudeに作ってもらうのです。
地頭力や行動力といった企業向けの採点軸とは別に、「人間っぽい文章かどうか」という評価軸を1つ設けてもらい、点数で判別させます。客観的に人間らしさを判定させながら修正を重ねることで、機械的な印象を排除していくことができます。
ハルシネーションの罠に要注意
── AIを活用して書類を作成する際に、就活生が特に気をつけることはありますか。
杉田海地さん: AIの技術が進歩したとはいえ、どうしても「嘘(ハルシネーション)」をつくことがあるため、そこは細心の注意を払ってほしいです。企業の情報をAIに調べさせてESを書く場合でも、必ず自分自身で企業の公式ホームページを確認するファクトチェックを行ってください。
特によくあるトラブルが、志望企業と同姓同名の「別会社」が存在するケースです。例えば「株式会社〇〇」を志望しているのに、AIがネット上の情報を拾ってくる際、名前が同じだけの別法人の事業内容や実績を混ぜて文章を作ってしまうことがあります。
これをチェックせずに提出したら、人事には一発で「うちのこと全然調べてないな」とバレてしまいます。AIが書き出した情報が本当に正しい事実なのか、最後のファクトチェックは、必ず人間が行うようにしたいですね。
株式会社Saix 杉田海地さんにインタビュー③:自己分析・面接対策におけるAIとの正しい付き合い方
質問から自己分析シートを作る
── 就活を始めたばかりで、何から手を付ければいいか分からない学生も多いと思います。例えば「自己分析」の段階でもClaudeは役に立ちますか?
杉田海地さん: 自己分析にも活用できます。ただし、就活生がいきなりAIと自己分析をしようとしても、初手でつまずくケースがほとんどです。チャットの画面を見ても、何を打てばいいのか分からないからですね。
そこで、最初は「私は何もチャットが打てない」という前提に立ち、Claude側から自分に対して質問をさせるという使い方をします。
「私はこれから自己分析をしたいのですが、何から話せばいいか分かりません。なので、私の過去や価値観を深掘りするような質問を、まずはあなたから私に投げてください。私はその質問に対して1問ずつ答えていきます」と指示を出すのです。
そうすると、Claudeから「あなたはどのような環境で育ちましたか?」「小学校時代に夢中になっていたことは何ですか?」「自分の強みは何だと思いますか? また、それは親や周囲の人からどのように言われていましたか?」といった質問が順番に送られてきます。これに対して、音声入力などを使って自分の言葉で返信していきます。
この対話をチャット上で50往復ほど繰り返します。そして自分の情報を伝え切った後に、「今までの会話内容をすべて記憶した上で、私の強みや価値観、行動特性をまとめたレポートを作成し、1つの自己分析シートとして出力してください」と指示を出します。
Claudeは記憶能力が高いため、すべてを覚えた状態で、綺麗に構造化されたレポートを作ってくれます。この方法であれば、就活初心者でも迷わずに深い自己分析を行うことができますし、完成したレポートの内容をそのまま面接の受け答えのベースにすることができます。
MBTIを設定して、専用の模擬面接官を作る
── 面接の練習において、Claudeをどのように活用するのが効果的ですか。
杉田海地さん: 面接の練習では、Claudeに特定のキャラクターやMBTIを与えて、自分好みの面接官やアドバイザーに仕立てるのがおすすめです。
例えば、「あなたは企業の面接官です。ENFPの喋り方をして、私の緊張をほぐしながら寄り添って共感的に面接を行ってください」と指示を出せば、話をしっかりと聞いて褒めてくれるパートナーになります。逆に、「あなたはINTJです。論理的で厳格な面接官として、私の志望動機の矛盾点を突くような厳しい質問をどんどん投げてください」と設定することも可能です。
また、「私の現在の就活スケジュールはこれで、8月にはこの選考があります。計画的に準備を進めたいので、今やるべきことを慎重に管理してくれるアドバイザーになってください」と頼めば、スケジュールを管理してくれるサポーターにもなります。このように、自分の目的やその日のモチベーションに合わせて面接のロープレができるのは、AIの強みです。
表現のフィードバックは人間にもらう
── スマホでいつでも模擬面接ができるのは心強いですね。ただ、面接対策をAIだけで完結させても大丈夫なのでしょうか。
杉田海地さん: いえ、面接に関してはAIの限界があるため、うまく人間を頼る必要があります。そもそも面接は、構造的に分けると2つの要素で成り立っていると私は考えています。
2. 表現: 表情、仕草、喋り方、第一印象、服装や髪型
杉田海地さん: このうち、AIが壁打ち相手として分析したり対策できたりするのは、あくまで前者の「情報」の部分です。もう一方の「表現」の部分に関しては、やはり人間が対面でチェックしなければ判断できません。面接は最終的に「人と人」のコミュニケーションだからです。
就活エージェントの担当者やサポーターの方々を頼る際には、「話し方のテンポや印象はどうか」「目線や仕草に変な癖はないか」「服装や髪型などの第一印象は適切か」といった、表現に関するフィードバックを聞くと良いですね。
人間の声や一時情報が入っていないと人事に見抜かれる
── AIに頼る部分と、人間に頼る部分を分けると良いのですね。面接の回答文などを作る際、AIに任せきりにするリスクはありますか。
杉田海地さん: AIを活用する上で絶対に避けてほしいのは、「文章生成を完全にAIに丸投げすること」です。「文章をAIに書かせてそのまま提出したら、人事に落とされた」という話をよく耳にしますが、その原因は0から1の作成をAIにさせてしまっているからです。
しかし、人間が用意したアイデアや情報に対して「足りない視点や論点はない?」と問いかけると、AIは嘘をつきません。客観的なリスクを指摘してくれるので、この使い方をすれば、これほど頼もしい相棒はいないんです。
面接の準備をする際も、回答を1からAIに作らせるのではなく、自分の仮説や実際に言いたいことをAIに話し、「形を整えて、少し志望企業寄りの表現に変えて」という風に使うのが正しいアプローチです。人間の声や一時情報がベースに入っていない文章は、結果として人事に見抜かれてしまうということを覚えておいてほしいです。
株式会社Saix 杉田海地さんから就活生へメッセージ
AIにできないのは「OB訪問」
── AIを使えば、誰でも綺麗な文章や台本が作れるようになるからこそ、周囲の学生との「差別化」が難しくなるのではないかという懸念もあります。杉田さんなら、周りのライバルとどこで差をつけますか。
杉田海地さん: 私が今就活生であれば、AIにできない行動をめちゃくちゃ頑張ります。文章を無限に量産することや、丁寧に体裁を整えることはAIが得意な領域ですから、人間がそこを頑張っても差別化にはなりません。しかし、「OB訪問」は、AIにはできません。
私はリクルートの選考を受けていた学生時代、卒業生も含めて80人ほどの社員の方にOB訪問をしました。FacebookなどのSNSを使って、学生という身分を活かして丁寧にDMを送れば、驚くほど簡単に社会人と繋がることができます。若い学生が熱意を持って行動していれば、「活気があっていいな、応援してあげよう」と、時間を作ってくれる大人はたくさんいます。
Web上で手に入る情報だけで就活をしようとすると、そのリサーチ範囲はWebの枠内に留まってしまいますし、それはAIでもアクセスできる情報です。一方で、実際に足を動かしてOB訪問を行い、現場で働く人と対話をして手に入れた「一次情報」や、人事の裏側の意図などを知ることができれば、企業に対する解像度が格段に上がります。この、自分にしか手に入れられなかった一次情報をESや面接に盛り込むと、差別化になります。
エピソードが強いと、AIはブースターになる
── 最後に、これから就職活動に挑む学生たちに向けて、メッセージをお願いします。
杉田海地さん: 「AIを使えば就活に受かる」「何でもAIに書かせれば楽に就活が終わる」と思っている就活生ほど、今の時代は内定がもらえないと感じています。
AIは、自分自身が泥臭く行動して、一次情報を経験して、強いエピソードを持っていて、初めて「ブースター」として機能します。学生時代に何も行動せず、投げやりな気持ちでAIにすべてを書かせたとしても、出てくるのはどこかで見たような平均的な文章だけです。そんな薄っぺらい内容は、対面の面接になれば一瞬で見抜かれてしまいます。就活の合否を分けるのは、自分自身が何を経験し、どう行動してきたかという中身の強さです。
ですから就活生の皆さんには、文章作成などのAIが得意な作業はツールに任せて徹底的に効率化し、そこで浮いた貴重な時間を使って、OB訪問に行ったり、自分自身の見た目や話し方を磨いたり、AIにはできない領域にエネルギーを注いでほしいと思います。まずは一度、Claudeを実際に触ってその利便性を体感した上で、自分自身の行動力を高めるためのパートナーとして使いこなしてください。応援しています。
「就活の教科書」編集部 野口
杉田さん、貴重なお話をありがとうございました!

