【インタビュー】ビューティ&ウェルネス専門職大学 齋藤典子准教授|就職は“社会の中でどう関わっていくか”を考える

“「就活の教科書」編集部小林”

こんにちは!「就活の教科書」取材チームの小林です。

本日は、ビューティ&ウェルネス専門職大学の齋藤典子准教授にお話を伺いました!

この記事を読めば、「キャリア教育」「キャリアのために必要な力」について知ることができます。

「キャリアデザインって何なんだろう?」や「自分のキャリアってどう考えたらいいの?」などの悩みがある人は必見です!

“「就活の教科書」編集部小林”

齋藤先生、本日はよろしくお願いします!

“齋藤典子

よろしくお願いします。

Profile

齋藤典子准教授

齋藤 典子(さいとう・のりこ)
ビューティ&ウェルネス専門職大学 准教授

大学卒業後、製造メーカーに就職し、人材教育を中心に担当。10年目に社会人大学院に進学し、人的資源管理を学ぶ。
その後、企業で働きながら大学でも教えるようになる。
2021年、企業を退職。同年に『考える力を高めるキャリアデザイン入門』という教科書を執筆。2023年に新設されたビューティアンドウェルネス専門職大学の教員となる。
現在までにこの教科書を用いて教えた学生は、同大学のほか複数の大学を含めて約1600人にのぼる。

目次

ビューティ&ウェルネス専門職大学 齋藤典子准教授にインタビュー①:企業での人材育成経験を通して

製造メーカーで人材育成に携わる

“「就活の教科書」編集部小林”

齋藤先生が、企業に勤められていた時のことについて教えてください!

“齋藤典子

私は製造メーカーに32年間勤めていました。
入社10年目に社会人大学院で学び、卒業後は企業で働きながら大学で教えることもしていました。

大学の教員になったのは5年前なので、キャリアとしては企業での人材育成の経験の方がずっと長いですね。

“「就活の教科書」編集部小林”

企業で人材育成に関わり、実際に労働環境を見てこられたんですね!

 

人材育成経験を次のキャリアへ活かすために大学院へ

“「就活の教科書」編集部小林”

大学院に進もうと思ったきっかけや、大学院での研究内容について教えてください!

“齋藤典子

大学院に進んだのは、それまで企業でやってきたことを整理したいと思ったからです。
特に、「生き生きとした職場をつくるリーダーとは?」という問いに関心があり、リーダーの役割や育成法を研究しました。

もう一つのテーマは女性のキャリア開発です。
製造業の現場では女性リーダーが育ちにくく、その育成方法を探る研究をしていました。

専門分野としては、「リーダー教育」と「女性のキャリア支援」の2つになります。

“「就活の教科書」編集部小林”

働きながら実際の労働環境での課題を整理し、どう育成するのかについて学ばれていたのですね!

 

社会人の悩みには明確な「正解」がない

“「就活の教科書」編集部小林”

企業で人材育成に携わる中で、どのようなことを課題に感じましたか?

“齋藤典子

製造メーカーでは、新入社員から役員までの“階層別教育”を長年担当してきました。
特に、自分の職場で「困っていること」を持ち寄って解決する、実践的な問題解決の研修を重視していました。

新人なら仕事の優先順位、3年目は周囲の巻き込み方、5年目は後輩指導など、そうした課題をどう乗り越えるかを共に考えてきました。

“「就活の教科書」編集部小林”

一口に“社会人”と言っても、新社会人と5年目の社会人では全く悩みが違いますよね…

“齋藤典子

まずは自分の仕事をきちんとこなすことが社会人の第一歩ですが、その後は他部署を巻き込んだり、後輩を指導したり、あるいは会社の方針と自分の業務との接点を考えたりと、成長段階に応じた課題が出てきます。人は新しい課題に直面すると悩みます。

その悩みには明確な「正解」がないので、自分なりに答えを見つけていく力が必要で、それが次のステップに進めるかどうかの分かれ道になります。

“「就活の教科書」編集部小林”

社会人の悩みって「正解」がないんですか…!

 

社会人は悩みを乗り越えられた人が着実に成長していく

“齋藤典子

私はこれまで多くの社員を見てきて、悩み(=課題)を乗り越えられた人が着実に成長していくのを実感してきました。
だから若い人たちにも、答えのない問いに向き合いながら成長していってほしいと思っています。

だからこそ大学生にも、働く中で人は成長すること、そしてその鍵となる「問題解決力」を伝えたいと思っています。
今はそれを大学で教えており、著書『考える力を高めるキャリアデザイン入門』にもまとめています。

“「就活の教科書」編集部小林”

悩みに対して、“どう乗り越えていくか”がとても重要なんですね!

 

ビューティ&ウェルネス専門職大学 齋藤典子准教授にインタビュー②:「キャリア」とは?

キャリアは、「壁にぶつかりながら、それを乗り越えていくもの」

“「就活の教科書」編集部小林”

齋藤先生にとって「キャリア」とはどのようなものでしょうか?

“齋藤典子

人の成長は、直線的に上がっていくのではなく、階段上でところどころ踊り場があるように思います。その踊り場にある壁にどう向き合うか。キャリアは、「壁にぶつかりながら、それを乗り越えていくもの」だと思っています。
だから私は教育の場で、「どうやってその壁を越えさせるか」をずっと考えてきました。

働いていると、どうすればいいかわからないことだらけです。
正解があるように見えて、実際は答えのない課題に向き合うことが多い。だからこそ、自分の頭で考える力が必要なんです。

つまずいたように見えるときも、それは「壁が目の前にあるだけ」。

それをどう乗り越えるかが“成長”であり、“キャリアを積む”ということだと、私は考えています。

“「就活の教科書」編集部小林”

階段のように登るだけじゃなく、ぶつかって乗り越えていく。
「自分が挫折して、つまずいてしまっている」のではなく、「自分の前に壁があるだけ」という考え方はとても素敵ですね!

 

キャリア教育:就活のノウハウを教えるのではなく、「生きる力」や「壁を乗り越える力」を身につける

“「就活の教科書」編集部小林”

齋藤先生にとってキャリア教育とはどのようなものでしょうか?

“齋藤典子

「キャリア」というと、多くの学生は就職活動のことを思い浮かべがちですが、私が取り組んでいるキャリア教育は、それとは少し違います。

就職活動のノウハウを教えるのではなく、「生きる力」や「壁を乗り越える力」を身につけてもらうことが目的です。

“「就活の教科書」編集部小林”

私もキャリアと聞くと、就職活動のことばかり考えてしまっていました…

 

「キャリアデザイン」:人生の中で仕事をどう位置づけるか

“「就活の教科書」編集部小林”

「キャリアデザイン」とはどのようなものなのでしょうか?

“齋藤典子

「キャリアデザイン」とは単に就職を目指すのではなく、“人生の中で仕事をどう位置づけるか”を考えることから始まります。そして、キャリアを育む社会を知り、どんな人生を送りたいのかを考えることです。

その中で必要になるのが、問題解決力主体的に生きる力です。

そうした力を育てることを、私はキャリアデザインの授業で伝えています。

“「就活の教科書」編集部小林”

キャリアデザインは「仕事をどうするか」じゃなくて、「人生の中で仕事をどう置くのか」ということなんですね!

 

ビューティ&ウェルネス専門職大学 齋藤典子准教授にインタビュー③:キャリア教育で伝えていること

「仕事は苦しいけど楽しいもの」:問題解決で自信をつけていくとどんどん仕事が楽しくなる

“「就活の教科書」編集部小林”

キャリア教育の授業では、どのようなことを伝えていますか?

“齋藤典子

私はキャリアデザイン学を専門に学んだわけではなく、“仕事の経験から得たことを学生に伝えたい”という思いで授業をしています。

学生と社会人の間にあるギャップを埋めるのもキャリア教育だと思っています。
「大学の勉強は社会で役に立たない」と言われていた時代もありましたが、私は大学の学び方自体が社会で働く際に必要な力につながっていくものだと感じています。

学びだけでなく、サークル活動、アルバイト経験など、様々な活動が将来に繋がっています。

学生に伝えたいのは、「仕事は苦しいけど楽しいもの」だということ。その面白さは、自分で工夫して見つけるものです。

“「就活の教科書」編集部小林”

「仕事が楽しい」と思える人は、自分が好きな仕事についているからというイメージがあるんですが、仕事を楽しむために工夫ができるということでしょうか?

“齋藤典子

仕事は大変で厳しいもので、現実にはつらさや苦しさも伴います。
だからこそ、どうすれば楽しく取り組めるかを伝えたいと思っています。

カギになるのは「問題解決」です。
誰でも壁にぶつかるけれど、問題を乗り越える力を身につけ、自信を持てるようになると仕事はどんどん楽しくなっていきます。
そのための手法を授業で伝えています。

“「就活の教科書」編集部小林”

“問題解決”を通して成長だけでなく、仕事を楽しめることにもつながるんですね!

 

問題解決のために:疑問を持って事実を調べ、考えて動く習慣を身につける

“「就活の教科書」編集部小林”

“問題解決”するために、重要なことはなんですか?

“齋藤典子

問題解決手法としては、「疑問を持って、事実を調べる習慣をつけなさい」ということを伝えています。

迷ったらまず動いてみる、周りに相談してみることも大切です。

 

「三世代比較」を通して社会の変化を知る:今の学生は最初から「働き続ける」ことが前提の時代

“「就活の教科書」編集部小林”

社会の変化を知るために、授業で実践していることはありますか?

“齋藤典子

学生たちには「三世代比較」を通して、女性の働き方がどう変わってきたかを考えてもらいます。

おばあちゃん世代は高度経済成長の時代、「男は外で働き女は家庭を守る」、なので専業主婦が多い。お母さん世代になると短大を出て一度は就職、結婚・出産を機に退職し、その後パートなどで再就職する人が多く見られました。

一方で、今の学生たちは最初から「働き続ける」ことが前提の時代に生きています

こうした背景を知ることで、祖母、母の時代は女性の平均的な働き方、生き方が何となく見えていたが、実はそれは過去のモデルであることに気づきます。

社会も働き方も大きく変わってきているからこそ、「自分自身の人生をどうデザインするか」を考える必要があるんです。

“「就活の教科書」編集部小林”

三世代で比較するだけでも、大きく社会背景が変化していることがわかりますね!

女性では特に、働き方の選択肢が増えていますね。

 

「これからの人生をどう生きたいか」を男女問わず考える必要がある

“齋藤典子

これは女性だけでなく、男性にも同じことが言えます
未婚率の上昇などで、「一家の大黒柱として家族を支える」というモデルも当たり前ではなくなっています。

だからこそ、「これからの人生をどう生きたいか」を男女問わず考えてほしい

授業では、労働の現状や実態、国際比較などのデータも示しながら、社会の変化を理解し、その中で自分の生き方を見つける手助けをしています。

人生100年時代、変化に備える力自分の足で立てる力を、若いうちから身につけておくことが大切だと思います。

“「就活の教科書」編集部小林”

男女関係なく、社会変化を理解した上で「自分がどう生きるか」を考える必要があるんですね!

 

就職は“自分の好き”だけではなく、“社会の中でどう関わっていくか”を考えること

“齋藤典子

それから、就職は“自分の好き”だけではなく、“社会の中でどう関わっていくか”を考えることです。

そういう視点を持つことで、「自分はどう生きていくか」ということに繋がっていくんです。

“「就活の教科書」編集部小林”

“社会の中でどう関わっていくか”ということは具体的にはどのように考えるのでしょうか?

“齋藤典子

例えばおにぎり一つでも、農家や漁師だけでなく、耕運機をつくるメーカー、運送業、包装資材の会社など、多くの人の仕事が関わっています。
そうした「つながり」に気づくことで、社会の成り立ちが見えてきます

そのうえで、「自分はこの連鎖のどこを担いたいか」を考えていくと、視野が広がりキャリアの選択肢も自然と増えていきます

“「就活の教科書」編集部小林”

私も仕事何したいんだろう?と考える時にいつも自分の好きなことばかり考えていたんですが、「社会の中でどこを担いたいか」という視点で考えたことがなかったです…!

 

ビューティ&ウェルネス専門職大学 齋藤典子准教授にインタビュー④:キャリアのために学生に行動してほしいこと

「話す」「意見を言う」習慣をつける

“「就活の教科書」編集部小林”

学生の間に、自分のキャリアのために行動できることはありますか?

“齋藤典子

社会に出ると発言にはリスクが伴うけれど、学生のうちは比較的安全な環境です。

だからこそ、授業でのグループワークや発表を通じて、自分の意見を言う練習をしておくことが大切です。
習慣にしていけば、自然と発言への抵抗もなくなっていきます。

“「就活の教科書」編集部小林”

学生は社会人に比べて責任も少ないので、失敗を恐れず発言する練習ができるのですね!

 

挑戦し、視野を広げる:失敗からの学びが、成長につながる

“齋藤典子

学生時代にぜひやってほしいのは、「視野を広げる」こと。そして好奇心を持っていろんなことに「挑戦する」ことです。

授業で発言してみる、ボランティアに行く、インターンシップに参加する──そうした経験の中で成功も失敗もありますが、「なぜ成功したのか」「なぜ失敗したのか」と考える習慣を持つことが大切です。それは社会に出た後にも必ず役立ちます。

“「就活の教科書」編集部小林”

行動したいけど、失敗が怖くてなかなか挑戦できない…と思ってしまうのですがどうしたらいいでしょうか?

“齋藤典子

失敗を恐れてチャレンジしない学生も多いように感じます。でも、動かないと成長できません

むしろ失敗から学んだことが、次の成功や自信につながります
学生のうちにそういう経験をしておくと、社会に出てからも応用がきくし、大きな失敗を防ぐ力にもなります。

“「就活の教科書」編集部小林”

失敗を恐れないで「失敗して学びにいく」つもりで挑戦することが大事なんですね…!

 

ビューティ&ウェルネス専門職大学 齋藤典子准教授から学生へのメッセージ

“「就活の教科書」編集部小林”

素敵なお話をたくさんありがとうございます!

最後に、学生へのメッセージをお願いします!

 

自分が納得して「心に落ちた」ことで人は動く

“齋藤典子

学生の皆さんには、失敗を恐れずにいろいろなことにチャレンジしてほしいと思います。
うまくいかないこともあるかもしれませんが、そこから学べることの方が多い。
失敗は成長の大きな糧になります。

また、学生は「教えてください」と言うことが多いですが、教わったことだけでは本当の学びにはなりません。

人は、自分で納得したときに初めて行動に移せるものです。

授業でも、私の言葉よりも、グループワークなどを通じて同世代の声に触れ、「心に落ちた」ことの方が大きく影響を与えます。そうした体験を大切にしてほしいと思います。

誰かに言われてやるのではなく、自ら動く姿勢が重要です。

自分の意志で動くことで、やる気も責任感も大きく変わります。
受け身ではなく、主体的に行動する経験を、学生のうちから意識して積んでいってほしいですね。

 

「選んだ道を正解にする」姿勢を:今いる場所を肯定し、自分で意味づけていく

“齋藤典子

私はいつも学生に、「自分の選んだ道を、良かったと思えるように行動していこう」と伝えています。

過去にある有名大学で授業をした際、入学した大学に満足していない学生が多くいました。
でも、どんな環境でも「ここで頑張る」と決めて行動すれば、それが自分の正解になっていきます

キャリアデザインのスタートは、今いる場所を肯定し、自分で意味づけていくことです。

“「就活の教科書」編集部小林”

素敵なメッセージをありがとうございます!

私も自分の人生を前向きに、自分なりに考えていこうと思います、本日は本当にありがとうございました!