【代表インタビュー】株式会社ヒキダシの木下紫乃さん | 昼スナックママに聞く、「自分の正解」の作り方

【代表インタビュー】株式会社ヒキダシの木下紫乃さん | 昼スナックママに聞く、時代に左右されない「自分の正解」の作り方

「就活の教科書」編集部 野口

こんにちは!「就活の教科書」取材担当の野口です。
今回は、「昼スナック」というユニークな場を通じて、幅広い世代のキャリア支援を行っている、株式会社ヒキダシの代表取締役・木下紫乃さんに取材しました。
5回の転職と3回の結婚、40代で大学院進学と起業。多くの経験をされてきた紫乃ママから、時代を生き抜くための「ヒント」をたっぷり伺いました。
Profile

【代表インタビュー】株式会社ヒキダシの木下紫乃さん
木下 紫乃(Kinoshita Shino)
株式会社ヒキダシ 代表取締役
和歌山県生まれ。慶應義塾大学卒業後、株式会社リクルートに入社。5回の転職を重ね、人材開発会社で10年間管理職を務める。45歳で大学院に進み、株式会社ヒキダシを設立。企業のミドルシニア向けキャリア研修を行う傍ら、東京・赤坂見附にて「スナックひきだし」を開店。「昼スナックのママ」として、多様な人々の相談に乗っている。2024年には社会福祉士の資格を取得。著書『会社を辞めて幸せな人が辞める前に考えていること』『昼スナックママが教える45歳からのやりたくないことをやめる勇気』など。

株式会社ヒキダシの木下紫乃ママにインタビュー①スナックひきだしとは

元リクルート、5回の転職を経験

── さっそくですが、木下さんのご経歴を教えてください。

木下紫乃ママ: 私は現在58歳になりますが、一言で言うと「飽き性」なんです(笑)。1991年にリクルートに入社してから、転職は5回、結婚も3回経験しています。

キャリアの転機となったのは45歳の時です。当時、人材開発の会社で管理職を10年ほど務めていましたが、「このままここで働いていても、キャリアが行き詰まるな」と感じ、慶應義塾大学の大学院に入り直しました。大学院への進学を機に会社を辞め、個人事業主を経て47歳で「株式会社ヒキダシ」を立ち上げました。

 

── 40代後半での起業は、勇気が必要でしたか?

木下紫乃ママ:私の場合は5社も転職してたから他に選んでない選択肢が「起業」だったってだけで勇気とか大げさな感じじゃなかった。うまくいかなきゃまた就職したらいいと思っていたし。

でも実は今の起業トレンドのボリュームゾーンは40代なんです。東京商工リサーチのデータでも、社長の平均年齢は上がっています。20年ほど働いて、経験も人脈もある40代が「何か始めよう」と動くのは、自然な流れかも。「若いうちじゃないと失敗できない」と思われがちですが、実際には経験を積んだ世代が起業をチャレンジしても遅くないんじゃないかな。

 

大人世代のアップデートが必要

── 起業当初から、現在のような活動をされていたのですか?

木下紫乃ママ: 最初は若い世代のキャリアを支援したいと考えていたんです。しかし実際に話を聞いてみると、みなさんやりたいことが明確で、支援が必要ないくらい優秀でした。

むしろ問題なのは「私たち大人世代」の方だと気づいたんです。就活でベンチャーでインターンしようとする子どもに「そんな知らない会社はやめなさい」と口を出す「親ブロック」のように、古い価値観に縛られた大人が若者の可能性を狭めている現状があります。まずは大人世代の価値観をアップデートしなければならないと思ったのがきっかけです。

 

もやもやを吐き出せる昼スナック

── そこからなぜ「スナック」という形になったのでしょうか。

木下紫乃ママ:私たち大人世代は、セミナーや講座など自己投資をすることに慣れてない世代だと感じています。どうすれば本音を聞ける場所を作れるかと考え、思いついたのが「スナック」でした。

仕事や家庭のもやもやを吐き出せる場所として、赤坂見附に「スナックひきだし」をオープンしました。ただ、私は夜になると眠くなってしまうので(笑)、お昼に営業する「昼スナック」というスタイルを選んだんです。

現在は週に一度、木曜日の昼にママとして店に立ち、他の日は「一日ママ・マスター」をやりたい方に場所を貸し出しています。今では30人ほどの個性豊かなママ・マスターたちが、入れ替わり立ち替わりお店を盛り上げてくれています。

 

年齢層は0歳〜80代まで

── お客さんの年齢層は、ミドルシニアが中心でしょうか。

木下紫乃ママ: 当初は「もやもやを抱えた45歳以上」を入店条件にしていたのですが、今では0歳から80代まで、本当に幅広い層の方がいらっしゃいます。

例えば、育休中の20代女性。ご自宅でお子さんと二人きりだと、社会から取り残されたような孤独感に追い詰められてしまうことがあります。うちは店内禁煙でカラオケもないため、日中に安心して外出できる場所として喜ばれています。他のお客さんも「連れておいで」と温かく迎えてくれる、そんな優しい循環が生まれています。

 

── スナックは「常連さんが強そう」というイメージもありますが、初めてでも大丈夫でしょうか?

木下紫乃ママ: もちろんです! うちにいらっしゃる方の半分は「初めて」のお客様で、ほとんどがお一人様です。「昼スナック」という性質上、夜の店にいるような、重鎮のような常連さんはいないです(笑)。

「記事を見かけて、ドキドキしながらドアを開けました」という女性の方も多いですし、数ヶ月に一度、有給休暇を取って遊びに来てくれる方もいます。そんな風に、誰もがフラットに立ち寄れる場所でありたいと思っています。

 

株式会社ヒキダシの木下紫乃ママにインタビュー②就活生や若手社会人へアドバイス

親ブロック:最後は自分で決める

── ここからは、就活生によくある悩みについて伺わせてください。志望先を親に反対される「親ブロック」に遭った場合、どう向き合えばいいのでしょうか。

木下紫乃ママ: 大学院にいた頃、多くの学生さんから相談を受けました。当時は今以上に、親が名前を知らない会社に行こうとすると強く引き止められるケースが多かったですね。例えば、Googleのインターンが決まった子が母親に報告したら「そんな『グルグル』なんて聞いたこともない会社はダメよ!」と言われた……なんて話もありました。

今の若い方は親御さんと仲が良いので、「親を悲しませたくない」という理由で勧められるまま銀行や商社へ進むこともあります。でも、結局合わずに辞めてしまい、後悔しながら報告に来る方も少なくありません。

私は、どちらの道を選んでもいいと思っています。大切なのは「最後は自分で決めた」という納得感です。親の希望を優先するのも一つの決断ですが、もしそうするなら「親に言われたから」という言い訳を捨ててください。自分の意思で選んだと思えないと、後悔した時に親を責めてしまい、誰も幸せになれないからです。

 

ゆるブラック:社内異動を検討

── 最近は、仕事は楽でも成長が実感できない「ゆるブラック」という言葉も話題です。入社した企業がもしそうだったら、どう動くべきでしょうか。

木下紫乃ママ: 成長のルートが他にあると自分で思えるのなら、今は転職が当たり前の時代ですから、外に飛び出してもいいでしょう。ただ、転職の時に大企業のブランドが通用することもあります。「新卒でその会社に選ばれた」という実績は、カードとして持っておいて損はありません。

 

── 環境を変えずに、その場所でできることはありますか?

木下紫乃ママ: すぐに辞める前に、一度視野を広げてほしいですね。大企業は中小企業に比べて職種も部署も多いので、「社内異動」というチャンスがあります。今いる部署が「ゆるブラック」でも、別の部署はクリエイティブかもしれません。自分から「あそこに行きたい」と言い続けることで、道が開ける可能性は十分にあります。せっかく大企業に入ったのなら、チャレンジしてみても良いのではないでしょうか。若いうちはキャリアを横にも広げ人脈と経験、スキルを積んでいくことが可能だと思います。

 

人脈は財産

── キャリアを築く上で、人脈は大切ですよね。

木下紫乃ママ: 最近は退職代行などを使って辞める人も増えていますよね。しかし、私は「会社と喧嘩して辞めない方が良い」と言っています。なぜなら会社を辞めたとしても、そこで培った繋がりは一生をとおしての財産になっていくからです。私自身、5回の転職を経験していますが、前の会社の人たちには今でも助けられたり、仕事の相談に乗ってもらったりしています。

一人でも二人でも「この人とは長く付き合いたい」と思える人がいれば、その縁は絶対に切らないでください。人生のどこかで、また一緒に仕事をする機会が巡ってきます。自ら繋がりを断つのは、長い目で見れば大きな損失です。

 

理想のキャリアを掴むための交渉術

── 職場に不満があっても、なかなか言い出せない人も多いですよね。

木下紫乃ママ: 皆さん、少し我慢しすぎだと思います。悩みを聞いていると、仕事の内容そのものより、人間関係や働き方のズレを一人で抱え込み、我慢に限界が来て勝手に辞めてしまう方が多いように感じます。

 

── 私も、前職は何も言わずに辞めてしまいました。上司に意見を言うのは勇気がいります。

木下紫乃ママ: 言わないと伝わらないですよ。コツは、「自分のわがまま」としてではなく、「組織のメリット」として伝えることです。

組織のメリットとして伝える例
  • NG「私のキャリアのために、これがやりたいです」
  • OK「このスキルを習得してこの業務を担当する方が、組織全体のパフォーマンスが上がります」

木下紫乃ママ: 経営者や上司は、組織を良くしたい、業績を上げたいと考えています。「今のままでは私のモチベーションが下がり、周囲にも悪影響が出る可能性があります。だから数年後にはここへ異動してチャレンジする機会がほしい」といった、合理的な提案であれば、耳を傾けてくれるはずです。

提案をしてダメなら、「ここは言っても変わらない場所なんだ」と納得して次のステップに進めます。言わずに辞めるのは「損」ですよ。自分のキャリアを自分で掴みたいなら、まずは口に出して周りに自分の願いを伝えていくこと。

 

正解がない時代に「自分の正解」を作る

── 最後に、不透明な時代を生きる若い世代へメッセージをお願いします。

木下紫乃ママ: 20年前、今の世の中を誰が想像できたでしょうか。AIの台頭も含め、3年後のことすら誰にも分かりません。だからこそ、「完璧なキャリアプラン」に縛られて、今やりたいことをセーブするのはやめてほしいんです。

世の中は常に変化しています。今の常識が3年後には通用しなくなっているかもしれない。だったら、自分の中の「正解」を信じて動いてほしいです。

もし不安が強いなら、「この2年間だけは、この環境でこれを学ぼう」と期間を決めて取り組んでみてください。終わりを決めれば、どんな環境も自分のための「キャンペーン期間」に変わります。2年経ったら見直して、また次の場所へ移動していけば良いと思います。

「スナックひきだし」は木曜日にママとして営業していますので、もやもやが溜まったらいつでも遊びに来てくださいね。

 

「就活の教科書」編集部 野口

木下さん、本日は心に響くお話をありがとうございました。

人脈の大切さや会社に提案する姿勢など、非常に勉強になりました。

またキャリアに悩んだら「スナックひきだし」でお悩み相談させてください!