【インタビュー】埼玉工業大学キャリア支援センター 藤田拓勧さん | 適性や学歴で悩むのはもったいない!「後悔しない就活」の進め方

【インタビュー】埼玉工業大学キャリア支援センター 藤田拓勧さん | 適性や学歴で悩むのはもったいない!「後悔しない就活」の進め方

「就活の教科書」編集部 野口

「就活の教科書」取材担当の野口です。
今回は、埼玉工業大学キャリア支援センター講師として、学生の就職支援に尽力されている藤田拓勧さんに、就職活動が学生にもたらす「自己成長」について伺いました。
Profile

埼玉工業大学キャリア支援センター 藤田拓勧
藤田 拓勧(Fujita Hiroyuki)
埼玉工業大学 キャリア支援センター 講師
嘉悦大学 経営経済学部 経営経済学科 兼任講師
一般社団法人アジア学生研修機構 理事

埼玉工業大学情報社会学科卒業、法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修了。国家資格キャリアコンサルタント、教員免許(公民)保有。TIS(SE、プロジェクトリーダー)を経て、現職。同大学にて、キャリア科目の講義や就職活動の支援、資格取得講習やASEAN・グローバルサウス地域を巡る海外リーダーシップ研修の企画・実施・運営等、キャリア教育領域の業務を担当。自身の就職活動では、12社の企業から内定を獲得。

埼玉工業大学の藤田拓勧さんにインタビュー

12社内定の秘訣と「適性」の捉え方

── さっそくですが、藤田さんご自身の就職活動について教えてください。

藤田さん: 私は、現在の職場でもある埼玉工業大学に籍を置き、就職活動では、IT企業の他、小売、保険、商社、メーカーなど、業界や企業規模を問わず、多くの企業を受けました。

 

── その結果、12社から内定を獲得されたと伺っています。素晴らしい成果ですが、たくさん受ける中で不採用になることもあったかと思います。どのようにモチベーションを保っていたのでしょうか。

藤田さん: 実は、当初第一志望としていた企業は不合格だったんです。その時はひどく落ち込みましたし、理由が知りたくて「企業に電話して聞いていいですか」とキャリア支援の先生に相談して止められたこともあります。

ただ、いつまでも落ち込んでいても仕方がないと割り切りました。当時はかなりの行動量があったため、明日、明後日とすぐに次の選考がやってきます。良くも悪くも、立ち止まって考え込む暇がない状況に自分を置いていたことで、いつの間にか乗り越えられていました。

また、様々な業界を受けていたため、「まだ別の業界の選考が残っている」「すでに複数の内定を持っている」という状況を作れていたことも、心の余裕に繋がっていたと思います。何より、活動する中で内定という成果が少しずつ出てくるのが嬉しくて、前向きに取り組めていましたね。

 

── 現在、学生のキャリア支援をする中で、業界は絞るべきか、広く見るべきか、どちらのアドバイスをされていますか?

藤田さん: 私は業界は広く見るようにアドバイスしています。

業界や職種によっては、特有の専門試験が設けられており、そこで適性がはっきりと出てしまうことがあります。業界を一つに絞り込んでしまうと、もしその業界全体の適性がないと判断された場合、行き詰まってしまいます。そのため、初めの段階から制限をかけず、少なくとも3つの業界は選択肢として持っておくよう指導しています。

 

── 自己分析の段階で「自分はこの業界が向いている」と決めてしまう学生も多いですが、適性はどのように判断すべきだとお考えですか?

藤田さん: 最終的に「内定が出るかどうか」だと考えています。

概ね、仕事はやったことがないことをやるわけですから、向き不向きや適性は、そもそも分からないはずです。企業様には恐縮ですが、最後まで選考に進み、内定をいただいた後に、冷静に考えて、周囲に相談したりして、自分にできそうか、やっていけそうかを判断すれば良いのではないでしょうか。私自身、多くの企業から内定をいただいた経験からもそう感じています。

ただし、就職活動を始めるにあたって、方向性を1つでも決めないと動き出せない学生も多くいます。基本は3業界ほど見てほしいと伝えますが、「まずは行動を起こすために、軸となるものを1つ決め、とにかく動き出そう」という声かけも同時に行っています。

 

性格検査は取り繕わず正直に

── 藤田さんの研究テーマ「就職活動における困難な体験が大学生の自己成長感に与える影響」について教えてください。

藤田さん: 就職活動における困難な体験が、学生に自己成長感をもたらすのではないかという仮説のもと研究を行いました。結論から言うと、自己成長を感じることもあれば、感じないこともあるという結果が出ました。

意外だったのは、「性格検査」に関する結果です。性格検査で学生が感じる困難度が、「他者との関係構築」という軸において自己成長感に繋がりやすいという傾向が見られました。学生は性格検査を受ける際、「企業が求める人物像に合わせて回答した方が良いのではないか」と深く悩みます。その試行錯誤のプロセスが、自己成長感に良い影響を与えているのではないかと考察しています。

一方で、自己成長感を低下させてしまう体験もありました。代表的なのが「集団面接」です。他の学生と並んで面接を受けることで、他の学生と比較してしまい「自分はできていない」と自信を喪失してしまうケースがあるようです。

 

── 性格検査について、企業に合わせて答えるべきか、自分を貫くべきかという議論がよくありますが、藤田さんはどのようにお考えですか?

藤田さん: 私は、性格検査は「正直に答えるべき」だと考えています。理由は2つあります。

1つ目は、多くの性格検査には回答の矛盾や虚偽を見抜く項目が含まれており、自分を偽ってもバレてしまうことが多いからです。「嘘つき判定」が出てしまえば、当然採用には結びつきません。

2つ目は、入社後のミスマッチを防ぐためです。仮に企業に合わせた検査結果で入社できたとしても、本来の性格と会社の社風や業務内容が合わなければ、結果的に入社後に苦しむことになります。そのため、学生には常に正直に答えるようアドバイスしています。

 

── そうした様々な体験も含めて、就職活動という「プロセス」そのものに価値があるとお考えなんですね。

藤田さん: そうですね。就職活動は教育的な観点からも、社会に出る前の訓練という意味でも、とても大きな価値のある活動だと思います。私がこうして研究に取り組んでいるのも、就活のプロセスがいかに学生の成長に繋がっているかを証明したいという想いがあるからなんです。この意味合いや価値がなくならないように、現場からもどんどん発信していきたいなと考えています。

 

「学歴コンプレックス」で可能性を狭めないでほしい

── 大学生の中には「学歴」に対してコンプレックスを抱いている方も少なくありません。この点についてはいかがでしょうか。

藤田さん: 私の修士論文のテーマはまさに「学歴コンプレックス」でした。私自身、偏差値が高いとは言えない大学の出身でしたので、就職活動を始める前は「自分は就職できるのだろうか」「うちの大学では厳しいのではないか」という不安がありました。

しかし、実際に就職活動を進めてみると、難関大学の学生が隣にいるような選考でも突破できる体験をしました。その時、「学歴コンプレックスを抱えて自分のキャリアの可能性を潰してしまうのは、非常にもったいない」と気づいたのです。それが、このテーマで研究を始めたきっかけです。

 

── 実際、就職活動において学歴はどの程度影響するのでしょうか。

藤田さん: 現在はどの企業も人手不足の状況が続いており、大学名や偏差値を問わない企業が多数を占めています。そのため、学生には「学歴コンプレックスは概ね関係ないから、そこで諦めないでほしい」と常々伝えています。

ただ、一部の企業に学歴フィルターが存在しているのも事実です。夢ばかりを語るわけにはいきません。難関大学の学生たちは、そこに至るまでに相応の努力をしてきたことを評価されていますし、されるべきだと考えます。もし難関でない大学の学生が、そうした企業を目指すのであれば、「受かるべくして受かるための準備」を人一倍しなければなりません。挑戦すること自体は素晴らしいことですが、それに見合った行動や準備が伴う必要があると指導しています。

 

条件より「何を仕事にするか」を軸に

── 最近は就活の早期化が進んでいますが、「内定ブルー」に陥る学生についての見解をお聞かせください。

藤田さん: 感覚として、内定ブルーに陥る学生は一定数いると感じています。就活の早期化により、3年生の3月の時点で多くの学生が内定を持っているというデータもあります。

しかし、企業側の採用活動のピークは例年通り3月から6月頃です。早期に内定を獲得した学生は、その時期に周りの友人たちが本格的に動き出しているのを見て、「本当にこの会社でいいのだろうか」と不安になり、就活を再開してしまうというサイクルが起きています。

 

── 納得いかないまま就職するよりは、やり直すのも一つの手だとは思いますが、いかがでしょうか。

藤田さん: 就職活動をやり直すこと自体は否定しません。しかし、私が日頃から伝えているのは「スタートする前の準備が大事だ」ということです。

しっかりとした準備をせずに手当たり次第に選考を受けて、たまたま内定が出たからといって就活を終えてしまうと、不安を抱えることになる確率は一気に高まります。そこから「負のスパイラル」に陥ることも少なくありません。最初はしっかりと準備をし、自分で狙って内定を取る。そうすることで納得度が高まり、安易に就活を再開するケースは減っていくと考えています。

また、理系の学校推薦などの仕組みを利用している場合、安易な辞退は自分だけでなく、在籍する大学の信頼や一企業の採用全体にも影響を与えます。もちろん就活は学生自身のためのものですが、だからと言って、何でもして良いわけでもないと思います。社会人になるための準備期間でもある就活中に、そうした組織的な背景も考えて行動してほしいと伝えています。

 

── 売り手市場や就活の早期化を踏まえて、最近の学生に感じる傾向はありますか?

藤田さん: 先ほど「就職活動は教育的な観点からも、社会に出る前の訓練という意味でも、とても大きな価値のある活動」とお話ししましたが、最近は精神的・内面的な変化がないまま就職を終えてしまう学生が増えているのではないかと懸念しています。

人手不足の売り手市場に加え、働き方改革などで企業側も居心地の良い環境を用意して学生を待っています。語弊を恐れずに言えば、極端にこだわらなければどこかには入れる「楽勝就活」になりつつあります。

最近『ゆるい職場』という書籍が話題になりましたが、仕事の負荷が低く、叱責もされない居心地の良い環境に入社した若者が、「このままで自分は成長できるのだろうか」と不安になって会社を辞めていく現象が起きています。本来経るべきプロセスを経ずに就職し、環境だけが整備された結果、こうした混沌とした状況が生まれているように感じます。

 

── 就活の軸として、福利厚生や給与などの「条件」を優先する学生も多いですね。

藤田さん: 労働環境や条件はもちろん大切ですが、会社に入ってするのは「仕事」です。まず「何を仕事にするのか」を中心に考えないと、社会人生活はなかなか安定しないと思います。

仕事内容を中心に考えて内定を獲得し、最後の比較検討の段階でそうした「条件」を見るべきです。「条件が良いから仕事内容はなんでもいい」というわけにはいきません。自分がどんな仕事をして生活していくのかを、もっと真剣に考えて欲しいと思います。

 

やりたいことは、やってみないとわからない

── 最後に、これから社会に出る就活生へ向けてメッセージをお願いします。

藤田さん: 大学生の多くは「自分がやりたいことがわからない」「何が向いているのかわからない」と悩みます。しかし、やりたいことも向いていることも、実際にやってみないとわかりません。

私自身、5年間システムエンジニアとして働きましたが、この仕事が自分に向いていると思ったことは一度もありませんでした。それでも、周囲の方々に支えられながら、5年間充実して働くことができました。やっていくうちにできるようになりますし、好きになることもあります。

ですから、まずは「自分が社会に対して何で貢献できるか」「どのような仕事でお金を稼いでいくのか」を中心に考えてみてください。そして、最初から完璧な答えを求めず、まずは「働く」という意思を強く持って、一歩を踏み出してほしいと願っています。

「就活の教科書」編集部 野口

就職活動を単なる「内定獲得の手段」としてではなく、「自己成長の機会」として捉える藤田さんのお話は、多くの就活生にとって新しい視点を与えてくれるものでした。条件面だけでなく、「仕事そのもの」と向き合うことの大切さを改めて実感しました。
藤田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!