「就活の教科書」編集部 野口

小形 美樹(おがた・みき)
仙台白百合女子大学 人間学部 グローバル・スタディーズ学科 教授
宮城県仙台市生まれ。東北大学大学院経済学研究科博士課程後期修了(博士(経営学))。国家資格キャリアコンサルタント。民間企業勤務後、人材育成コンサルティング事務所を16年半主宰。その後、大学教員に転職し仙台市内短期大学での勤務を経て、2021年4月より仙台白百合女子大学グローバル・スタディーズ学科教授。
目次
仙台白百合女子大学 小形美樹先生にインタビュー①:自己分析の注意点と「SWOT分析」の活用
「SWOT分析」を自己分析に応用
── さっそくですが、自己分析で悩む学生に、どのようなアドバイスをされているか教えてください。
小形先生: 担当している「キャリア・デザインⅠ」では、学術的根拠に基づく診断ツールの他に、ビジネスで使われるSWOT分析を紹介しています。SWOT分析は自己分析にも非常に有効なフレームワークです。私の授業で使用している教科書では下記のように解説しています。
SWOT分析は、内部環境(組織)要因である自社のポジティブな要素を「強み(Strengths)」、ネガティブな要素を「弱み(Weaknesses)」、外部環境要因でポジティブな要素を「機会(Opportunities)」、ネガティブな要素を「脅威(Threats)」に整理して、企業の戦略をプランニングする際に使われる分析ツール。(『キャリア基礎講座テキスト 第3版 自分のキャリアは自分で創る』荒井明著・玄田有史監修、日経PBより引用)
小形先生: 設問に答えるだけのツールと違い、SWOT分析は自分で考え、社会情勢と照らし合わせる必要があります。自分の内面(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を整理することで、より客観的で説得力のある自己分析ができるようになります。
- 「自分の強み・長所」を箇条書きで書き出す
- 「自分の弱み・短所」を箇条書きで書き出す
- 就活市場における自分へのメリットを箇条書きで書き出す
- 就活市場における自分へのデメリットを箇条書きで書き出す
- 書き出したことを掛け合わせて分析する
学術的根拠に基づく自己分析ツールも利用
── 戦略的に自分を見つめ直せるのですね。学術的根拠に基づくツールには何がありますか。
小形先生: 「キャリア・デザインⅠ」の授業では、ジョン・L・ホランドが開発した「VPI職業興味検査」で職業に対する興味を深堀りしたり、エドガー・シャインの「キャリア指向質問票(Career Orientations Inventory)」で自分のキャリア・アンカーをつかませることもしています。
また、厚生労働省の「職業情報提供サイト job tag」を使い、職種について調べたり、自分の価値観から適職を探す方法も伝えています。
自己分析に悩んだら、大学のキャリアセンターが紹介するものに取り組んでみるのがよいと思います。
診断ツールに一喜一憂しすぎない
── よくある診断ツールに関してはどうお考えですか。
小形先生: 今の学生さんはSNS等の影響もあり、さまざまな診断ツールに馴染みがありますよね。診断ツールをきっかけに自分を知るのは良いことですが、結果に一喜一憂しすぎるのは禁物です。
分析結果には「良いところ取り」で向き合えば良いのです。たとえネガティブに感じる結果が出ても、別の切り口で見れば強みになります。ツールを過信して自分を型にはめるのではなく、前向きに捉えるための材料として使ってほしいと考えています。
仙台白百合女子大学 小形美樹先生にインタビュー②:インターンシップ:自分を知るための実践の場
学びを体験に変える「インターンシップ」
── 「インターンシップ・リテラシーⅠ・Ⅱ」という授業を担当されているのですよね。
小形先生: 私の所属するグローバルスタディーズ学科では「インターンシップ・リテラシーⅠ・Ⅱ」という科目を実施しています。これは、夏休みのインターンシップに行く前の「事前研修(I)」と、インターンシップ後の「振り返り(II)」を行うもので、インターンシップの体験を単なる思い出にせず、就職活動に繋げるための授業です。
また、宮城県でも地元企業のインターンシップへの参加を推奨するプログラムがあります。職員の方に大学にお越しいただき、授業でお話を伺うこともあります。また、就職支援会社の社員の方に自分でインターンシップ先企業を探す方法を教えてもらうこともあります。社会人と直接話す経験は、学生にとって「働くこと」を身近にする大きな刺激になります。
最近では、「A社で5日間、B社で5日間」といったように複数の企業や職種をインターンシップで体験し、比較する学生も増えています。実際に現場を肌で感じることで、自分に合う環境を冷静に見極める力が養われていくのです。
変化の時代にこそ必要な「キャリア・アンカー」の意識
── 先生ご自身も多彩な経歴をお持ちですが、転職が当たり前の時代に必要な視点は何でしょうか。
小形先生: 先程お話しした「キャリア・アンカー」ですが、これは周囲の環境が変わっても、働く際に自分がここだけは譲れないと考える「価値観や欲求」の拠り所のことです。人によって専門性であったり、保障や安定だったり、自律や独立だったりといろいろです。
例えば、専門家であることが自分にとってのキャリア・アンカーである人が、経理のプロフェッショナルとして、キャリアアップしていく道などもあります。私も、会社員からフリーランス、大学教員と立場は変わりましたが、一貫して「人の教育や成長に関わる」という軸を持っていました。
就活中に「これが一生の仕事だ」と決めるのは難しいかもしれませんが、「自分は何を大切にしたいか」という軸(筋)が通っていれば、たとえ転職してもキャリアは豊かなものになっていくと思います。
頭で悩むより、まずは「現場」で実践してみる
── 学生時代に適職を見つけるのは難しいですよね。
小形先生: おっしゃる通り、大学にいる間に「これだ!」と1つの仕事に絞り込むのは非常に難しいことです。本学の健康栄養学科や子ども教育学科のように、入学時点で目指す資格(管理栄養士や教員など)が決まっている学生もいますが、企業への就職を目指す学生にとっては、選択肢が多すぎて迷うのが普通です。
そこで、頭の中で「どの仕事が合うかな?」と悩むよりも、現場を肌で感じてみることがおすすめです。特にインターンシップは、単なる就業体験ではなく、自分を知るための「実践の場」として有効だと考えています。
仙台白百合女子大学 小形美樹先生にインタビュー③:就活で「折れない」ためのマインドセット
不採用は実力不足ではなく「企業側の事情」と考える
── 選考に落ちてしまい、自信を失くしてしまう学生にはどう声をかけていますか。
小形先生: 私自身も転職する際、30社ほど不採用になり、自己嫌悪に陥った経験があります。当時は「自分の実力が足りないからだ」と思い詰めていましたが、後になって分かったのは、不採用の理由は自分自身の問題だけでなく、企業側の採用枠や時期、適性といった「事情」が大きく関係しているということです。
就活は、頑張れば結果が出る「受験」とは異なります。あなたが否定されたわけではなく、単に「今は縁がなかっただけ」という場合も多いのです。自己嫌悪に陥る必要はありません。
場数を踏めばコツが掴める
── 自分のせいだと思い込みすぎないことが大切なのですね。
小形先生: 最初は落とされて当たり前です。場数を踏むうちに、面接やグループディスカッションにも慣れ、自然とコツが掴めてくる時期が必ず来ます。あまり自分を責めず、「縁がなかっただけ」と次へ進む勇気を持ってほしいです。
仙台白百合女子大学 小形美樹先生から就活生へのメッセージ「一歩踏み出す勇気を」
── 最後に、就活生に向けてメッセージをお願いします。
小形先生: 初めは怖いと感じるかもしれないですが、恐れずにまず動くことを勧めたいと思います。家でパソコンやスマホの画面を眺めているだけでは、仕事の本当の姿は見えてきません。まずは恐れずに一歩、外の世界へ踏み出してみてください。
インターンシップでも、合同企業説明会でも構いません。実際に動いてみると「自分には無理だと思っていたけれど、意外とできそう」と気づいたり、他大学の学生と出会って刺激を受けたりと、リアルな場所でしか得られない発見があります。まずは一歩踏み出すということをお勧めしたいと思います。
「就活の教科書」編集部 野口
