「就活の教科書」編集部チェスンウ
こんにちは!「就活の教科書」取材チームのチェです。
本日は、金沢工業大学進路開発センター次長の二飯田一貴さんにお話を伺いました。
二飯田さん、本日はよろしくお願いします!
よろしくお願いします。

二飯田一貴(にはんだ・かずたか)
金沢工業大学 進路開発センター 次長
金沢工業大学出身。大学卒業後、コンピューター関連メーカーで商品企画を担当。
その後、同じ部署に配属された新入社員の能力の高さに驚き、大学での人材育成に興味を持つ。
2009年、母校である金沢工業大学に転職。2014年からは同大学の進路開発センターで学生のキャリア支援、イノベーション教育の支援などに携わっている。
金沢工業大学進路開発センター次長 二飯田一貴さんにインタビュー①:大学での教育
新人の能力の高さに驚き、教育支援に携わる
「就活の教科書」編集部チェスンウ
二飯田さんが会社に勤めている際に出会った新入社員の能力の高さに驚き、教育へ興味を持ったそうですね!
その新入社員というのはどのような人だったのでしょうか?
理解する力や聞く力、それに話す力に長けているのです。
社会人なら当然かもしれませんが、新人でこちらの言葉を正確に捉えて行動できる人は少ない。聞くだけでなく理解しているのです。
その点は新人離れしてると感じました。
彼のレポートや報告書を読む機会が多かったんですが、その内容も的確に捉えられていて、とても印象に残っていますね。
入社1年目の新人がなぜいきなりそんなことができるのかと考えると、きっと学校での教育の成果なんだろうと気づきました。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
社会人に必要なスキルを社会人になったばかりで既に身につけている人はすごいですよね。
プロジェクトデザイン:1年次から“自ら考える”を必修化
「就活の教科書」編集部チェスンウ
社会人になって活躍できるような学生を育てるために、金沢工業大学ではどのような教育を行っていますか?
金沢工業大学の教育カリキュラムに特色があると思います。
1年生のときから“プロジェクトデザイン”という授業があって、学科の違う5〜6人が集められ、世の中の問題や社会ニーズを見つけて解決策を考えるんです。
2年生になると今度は同じ学科内でチームを組み、専門性も踏まえながら取り組みます。
こうした“社会ニーズを考える”授業自体が珍しく、学生が自ら考える力に直結していると思います。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
“社会ニーズ”をどのように学生に対して考えさせているのですか?
授業では事前に指導した上で、実際にどんな社会ニーズがあるかを学生自身に探させます。
社会問題といっても大げさなものではなく、例えば「どんな商品が売れそうか」「今どんなことに困っているか」といった身近な視点でもよく、そうした形で参加していきます。
これは必修科目として全員が必ず取り組むので、“課題を見つけて解決する”力が自然と身についていきます。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
“課題解決能力”は就活でも見られる重要なスキルですね!
その力を1年生から育てられるのは、大きな差になりますね。
“計画を立て、物事をやり遂げる力”を育てる
「就活の教科書」編集部チェスンウ
学生の教育の際に大切にされていることはなんですか?
学生をよく見ることが大切だと思っています。
学生が何か相談してきたら真摯に対応することです。また、授業後のアンケートを必ず取って内容を受け止め、次の授業改善につなげています。
そうした“学生の声をきちんと聞く姿勢”が重要だと考えています。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
また、学生自身が成長するために大切なことはなんでしょうか?
特別なことをしようとせず、与えられたカリキュラムをしっかりやりきることが大切です。
その過程で“自ら考える習慣”が自然と身につくように設計されています。
企業に出ても仕事には必ず納期があり、自分のタスクをこなさなければ周りに迷惑がかかります。
計画を立てて物事をやり遂げる力は社会で必ず役立つので、在学中に自然とその力を養えるのが大きな強みです。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
大学のカリキュラムをこなすことで、計画をやり遂げる力につながってるのですね!
金沢工業大学進路開発センター次長 二飯田一貴さんにインタビュー②:答えのない課題に挑む“コーオプ教育”とは?
大学などの教育機関と企業・自治体が連携し、学生が企業等で社員として長期間働くことで実践的な知識やスキルを習得する産学共同の教育プログラム
インターンシップではない“コーオプ教育”
「就活の教科書」編集部チェスンウ
金沢工業大学で実施されているコーオプ教育について教えてください!
コーオプ教育は“答えのない課題”に挑む仕組みです。
例えば学生が10〜12月に企業へ行っても、その時期にどんな仕事があるかは誰にも分からない。
だから用意されたプログラムではなく、実際の現場でその時期に行われている仕事を自分で考え実行することになります。
その上、給料も発生するため学生は強い責任感を持って働いています。
一般的な無給インターンとは違い、金沢工大では“インターンシップ”ではなく“就労”と定義し、仕事体験ではなく本当の仕事に従事する点が大きな違いです。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
インターンシップだと会社を知ることが主になっていますが、コーオプ教育では、実際に働くことが強く意識されているのですね!
学生は「実際に仕事をしてみたい」という思いで参加
「就活の教科書」編集部チェスンウ
学生はどのような思いで参加しているのでしょうか?
全ての夏休みを費やす覚悟が必要でハードルは高いため、早い段階で手を挙げる学生はまだ少ないです。
事前にマナーや就労の基本をレクチャーし、月1回の月報を提出させてフォローしています。
学生の参加理由で最も多いのは「実際に仕事をしてみたい」というシンプルなもの。
アルバイトではなく企業での本当の仕事を体験したいという思いが強いです。
意識が高いというより、「どんな世界なのか知りたい」と考える学生が多い印象です。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
一般的なインターンシップだと“選考のため”という思いが強いですが、純粋に「世界を知りたい」と思って参加できるのは素敵ですね。
学生だけでなく、企業も成長
「就活の教科書」編集部チェスンウ
どのような企業が参加しているのでしょうか?
受け入れてくださる企業は業種も規模も本当に幅広いです。
大企業から社員100人未満の会社まで様々で、“人事、現場、経営層の全てがこの仕組みを理解しているかどうか”で受け入れ可否が決まります。
ベンチャーだから積極的、大企業だから消極的というわけではなく、学生教育を社会貢献と考えて登録してくださるケースも多いです。
まだまだ受け入れ先が不足しているので、多くの企業様に協力いただけるならありがたいと思っています。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
企業にとって、社会貢献以外にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
企業のメリットとしてよく聞くのは大きく2つあります。
1つは若手社員の教育につながること。
入社して数年の社員は部下を持たないことが多いですが、学生を数ヶ月一緒に働く従業員として教える役割を担うことで成長につながると評価されています。
もう1つは、学生ならではの新しい視点に触れることで社員自身が刺激を受ける点ですね。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
企業にとっても、学生を受け入れることで成長できるのですね!
金沢工業大学進路開発センター次長 二飯田一貴さんにインタビュー③:うまくいく就活とは?
2年生秋冬で“自分がどんな進路に進みたいか”を意識する
「就活の教科書」編集部チェスンウ
これまで見てきた学生の中で、就活がうまくいく学生の特徴はありますか?
うまくいく学生の特徴は“動き出しが早い”ことです。
自己分析や企業研究を早く始めた学生は成功しやすい傾向があります。
具体的には3年生の4〜5月にはインターン先を決めておくのが理想で、そのためには2年生の秋冬ごろから進路に関する意識を持ち始めるのが大切だと思います。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
就活がどんどん早期化している中で、早いうちから意識を持つことの重要性がどんどん高まっていますね。
大学生活は就活だけではなく進学の道もあります。
だからこそ“就活”という枠にとらわれず、自分がどんな進路に進みたいのかを考える時間が必要だと思います。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
「とりあえず就活の準備をする」のではなく「自分の進路をしっかり考える」ことが必要なのですね!
就活では“語れること”が重要
「就活の教科書」編集部チェスンウ
自己分析などで“自分の長所”について良く悩んでしまいます。
「話すのが好き」でも、自分より話すのが得意な人はたくさんいるしな…と考えてしまいます。
話すのが好きならそれで十分です。
自分よりすごい人を見ても「勝てない」と思う必要はなく、好きで得意なら他の人よりずっと話せているのではないでしょうか。
一番でなくても、自信を持って得意だと言って良いと思います。
ただ、話す力は単なる社交性やパフォーマンスではなく“中身”が大事です。
例えば会社で製品やサービスを説明するとき、本当に社会的ニーズのある面白いものなら自然と人に伝わります。
だから話し方だけでなく、話の中身を磨くことが大切で、その力が話す力にもつながります。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
上ばかり見てもキリがないので、しっかりと中身を磨くことが大切なのですね!
また、自己PRでは、過去に参加したプロジェクトの成果だけでなく“なぜその活動に参加したのか”という動機も企業は気にします。
だからそこを語れることが大事です。
私たちは就活用の自己PRのネタ作りを指導しているわけではなく、1・2年生のうちから将来自己PRにつながるような活動を始めさせる取り組みをしています。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
ガクチカはどんな成果を残したかに重点をおいてしまいがちですが、その動機も見られているのですね!
企業選びは“自分が成長できるかどうか”
「就活の教科書」編集部チェスンウ
企業選びでのポイントはありますか?
企業選びで大事なのは“自分が成長できるかどうか”です。
例えば、人と協力して何かを作り上げたいならコミュニケーション力を磨ける環境を選ぶべきだし、専門性を極めたいなら技術を深められる会社を選ぶべきです。
要は“自分がどう成長したいか”というイメージを持ち、それが実現できる会社かどうかを見極めてほしいと思います。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
企業名や、給料などの条件にばかり目がいってしまいがちですが、とても大切な視点ですね。
金沢工業大学進路開発センター次長 二飯田一貴さんから就活生へのメッセージ
「就活の教科書」編集部チェスンウ
二飯田さん、ありがとうございました。
最後に、就活生へのメッセージをお願いします!
就活で大切なのは“自分が将来どうなりたいか、どういう仕事をしたいのか”を考えること
就活で大切なのは「自己分析」と「企業・業界研究」の2つです。
“自分が将来どうなりたいか、どういう仕事をしたいのか”を考えることが重要です。
その際にアドバイスするとすれば、“現時点でできるかできないか”を基準にしないこと。
今は持っていない力でも、半年や1年で成長して身につけられるかもしれません。
だからもしその力を持っていたらやりたい仕事を基準に探してみてもいいと思います。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
自分の“今できること”ばかり考えてしまいますが、もしその力を持っていたらやりたい仕事を考えるのは楽しそうだし、選択肢が広がりますね!
また、入社後に大事なのは“社会ニーズは何か”を考え、それに応えるサービスやモノをつくる姿勢です。
就活でもそのマインドを持ってほしいと思います。
また、納得のいく就活のためには“妥協しないこと”が大切です。
倍率が高くても挑戦したい会社があるなら、十分な準備をした上で臆せず挑戦してほしいです。

自分のキャリアを継続的に考えていく姿勢を持つ
学生には「就活が終わるまで自己分析や企業研究を続けてください」とよく言いますが、本当はそれだけでは不十分です。
やりたいことを考えるのは就活の時期だけでなく、社会に出てからも「何を成し遂げたいのか」を常に考える必要があります。
つまり“一生考え続けるもの”だと思った方がよく、就活だけの作業として終わらせるのではなく、自分のキャリアを継続的に考えていく姿勢が大事です。
そのほうが就活生の皆さんも本気で就活ができるのではないでしょうか。

「就活の教科書」編集部チェスンウ
素敵なメッセージをありがとうございます。
二飯田さん、本日は本当にありがとうございました!

