【インタビュー】東海大学 成川 忠之教授 |「就活を早期行動と戦略で成功させよう」~就活の戦略と方向性を考える~

「就活の教科書」編集部チェスンウ

こんにちは!「就活の教科書」取材チームのチェです。

本日は、東海大学の成川忠之教授にお話を伺いました!

成川忠之教授、本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

東海大学 成川忠之教授

Profile

成川 忠之(なるかわ・ただゆき)
東海大学 キャンパスライフセンター部長(キャリア担当)
経営学部 経営学科 教授

外資系電機メーカーやIT企業で営業・経営管理を経験後、東海大学に着任。総合教育センター主任、教育開発研究センター所長、現代教養センター所長などを歴任し、2022年よりキャンパスライフセンター部長(キャリア担当)に就任。
研究テーマは、「AIによるサイバーソリューションビジネス」「主体的学修の支援システム」「組織のデジタルトランスフォーメーション(DX)」など。
特に、学生のキャリア教育と就職支援を教育の一環と捉え、低学年次からのキャリア設計を重視。「キャリアを基軸に据えた学びのあり方」を構築している。博士(経営学)。

 

東海大学 成川忠之教授にインタビュー①:研究テーマについて

DX・AIによるサイバーソリューションビジネスとは?

「就活の教科書」編集部チェスンウ

さっそくですが、先生の専門分野について教えてください!

私は、経営と情報通信技術(ICT)を組み合わせて「どう経営を効率化・高度化できるか」を研究してきました。
2000年前後に「サイバーソリューションビジネス」という考え方を提唱しました。

「サイバー」はインターネット空間、「ソリューション」は課題解決。
つまり、通常対面で行われている顧客の課題を分析し、最適な解決策を提供するソリューションビジネスをオンラインで行うビジネスモデルです。

当時は「そんなの手抜きだ」「会いに行けばいい」など、まだオンラインでの課題解決は難しかったのですが、コロナ禍でリモートワークやオンライン商談が当たり前になり、まさに私が構想した「サイバーソリューションビジネス」が現実になりました。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

当初からオンラインでのソリューション提供を構想されていたのですね。

私はサイバーソリューションビジネスの先のステップとして「AIによるソリューションビジネス」を提唱しています。

つまり、人間が課題解決の答えを出すのではなく、AIが顧客の課題を分析し、解決策を提示するような仕組みです。

今ではオンラインやAIによる解決が当然の時代になってきています。

今後は、AIが担う「サイバーソリューションビジネス」の研究をさらに発展させていくつもりです。

東海大学 成川忠之教授

AI時代の本当の学びとは? 「AIを禁止するより“使いこなす力”を育てる」

「就活の教科書」編集部チェスンウ

教育現場でのAIの扱いについて教えてください。

私は「AIをただ禁止するのではなく、どう使いこなすかを教えるべき」と思います。

つまりAIを活用すべきことと、使うべきでないことを正しく判断し、使うべきところでは効果的に指示(プロンプト)を伝える力が必要ということです。自分が書いた文章をAIに校正してもらって、元のものと比較することにより、自分の文章力が向上します。英語に翻訳させて、読み返すことにより英語力も向上するでしょう。しかしレポートの宿題をそのままAIにやらせてしまえば、自分の勉強にはなりません。つまり、AI時代ではより一層、自分が何のために学んでいるかということを理解した主体的学びが必要になります。また、AIを活用するためには適切な指示をプロンプトに書き込まなければなりませんから、そのためには基礎知識や論理的な思考力が必要となります。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

プロンプトを書くことも知識が必要ですよね。

つまり、これからの時代に求められるのは以下の三つになります。

主体的に学ぶ力

論理的・批判的に考える力

基礎知識を積み上げる力

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就活生の中でも生成AIを使う人が増える中、この三つの力を身につけることが肝心ですね。

 

東海大学 成川忠之教授にインタビュー②|就活の勝ち筋は方向性にある「ブルーオーシャン×バックキャスティングで内定までを逆算する」

面接で受からない就活生へ|「ブルーオーシャン戦略」で内定を勝ち取る方法

「就活の教科書」編集部チェスンウ

「第一志望に落ちてしまった」「何度も面接しているのに全然うまくいかない」といった悩みを抱えている学生に対してアドバイスをいただけますか?

そういった学生には、まず少しでも多くの企業にエントリーし、内定をもらうために頑張ってみることをおすすめします。その上で、どうしても入社したい企業があるなら、挑戦すれば良いと思います。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

第一志望の企業にこだわらず、まず内定をもらうために行動することが大事ですね。

そのために、「ブルーオーシャン戦略で就活してみること」を推奨します。

ブルーオーシャンとは、言葉の通り、競争の激しいレッドオーシャンではなく、競争の少ない環境で就職活動をしてみるということです。

具体的にBtoBや中堅企業、地方企業などにアプローチすることです。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

面接に落ち続けている就活生は、戦略自体が間違っている可能性もあるということですか?

就職氷河期のように「どこへ行っても就職できない」という時代もありましたが、今は明らかに売り手市場です。

ただし、売り手市場といっても就活生に人気な大手企業には応募が殺到していることも考えるべきです。

そういった企業ばかり受けてしまうと、内定をもらうのは難しくなるかもしれません。

だからこそ、大手企業ばかりを狙わず、幅広い企業に挑戦することを意識してください。

”大学”も”会社”も一つの物差しで「良い・悪い」を測れるものではありません。

私自身も「大企業」「中小企業」での勤務経験がありますが、それぞれに「面白さ」もあれば「大変さ」もありました。

「大企業だから良い、中小企業だから良くない」ということは決してありません。

そんなことより就活生は様々な企業形態を見てみること。

ブルーオーシャンの戦略で内定をもらった上で、大手企業に挑戦するのが現実的です。ただし内定をいただいた企業には誠意を持って対応してください。

東海大学 成川忠之教授

 

面接対策やキャリア設計に必須!就活で役立つバックキャスティングの考え方

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就活において学生はどのようなマインドを持つべきでしょうか?

私は「バックキャスティング」という考え方を学生に伝えています。

バックキャスティングとは、もともとはSDGsの文脈でよく使われる用語で「将来なりたい姿から逆算して今を考える」思考法です。

たとえば「2030年までにこの目標を達成するために、今から何をすべきか」を考えるのがバックキャスティングです。

私は就活においても同じような思考が必要だと考えています。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

学生はどのように活用すれば良いのでしょうか?

できるだけ早い時期から自分がやりたい仕事や活躍したい業界、なりたい姿をイメージして、そこに到達するために今から何をすべきかを考えてください。

将来自分がこういう仕事に就きたいと思うのであれば、そこから逆算して「今の自分は何をすべきか」が見えるはずです。

将来のキャリア設計はもちろん、就活の面接対策にもきっと役に立てると考えています。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

学生だけではなく、キャリアについて悩んでいる社会人も参考になる思考法ですね!

 

“話すほど分かる自分”――就活で効く「オートクライン効果」とは?

「就活の教科書」編集部チェスンウ

自己分析がうまくできない学生におすすめの方法を教えてください!

私がおすすめする方法はオートクライン効果を使ってみることです。

オートクライン効果とは、「独り言のように一人で話していると考えがまとまる現象」です。

自分の言葉を自分の耳で聞くことから新しい気づきが生まれる効果のことです。

頭の中だけで考えるのではなく、一度”声に出す”ことで自分の考えが分かってくるはずです。

実は、キャリアコンサルタントもオートクライン効果を活用し、学生自身が自分の考えに気づかせるために学生自身が話すことを誘導しています。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

成川忠之教授は学生と相談する際、どのように接していますか?

学生が相談に来た時は、「私から質問していき、学生の考えを引き出すこと」を意識しています。

私は絶対に”答え”は言いません。

「あなたはこうです」と決めつけるのではなく、「どうしたいの?」と問いかける。
「こうしなさい」と指示するのではなく、「それはなぜ?」と考えを引き出すようにしています。

多少時間はかかりますが、相談するうちに学生自身が「あ、私ってこうしたいんだ」と気づいていきます。

東海大学 成川忠之教授

 

ガクチカは「何をやったか」より「何を学んだか」:コンテンツよりコンテクストで評価が変わる

「就活の教科書」編集部チェスンウ

大学時代、どんな学びや実績があれば企業に評価されるのでしょうか?

評価対象はいろいろありますが、「経験から何を学んだのか」が一番大事です。

実はコンテンツ(何をやったか自体)はあまり重視されません。

もし、吹奏楽部なら「賞をもらうこと」よりそのために「集団で一つの成果を作る」ことの方を企業は見ています。

同じように、アルバイトでも「どういう気持ちで取り組み、何を学んだか」をアピールしてください。

極端な話をすれば、学生時代に一番頑張ったことがゲームだったとしたら、ゲームを行う中から「オンラインで人と協力して目標を達成する、コミュニケーションをとる」といった学びがあるかもしれません。このような「学び」を強調してください。

就活において評価されるのは「コンテンツ(出来事)よりコンテクスト(学び)」です。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就活においては「何をしたのか」より「そこから何を学んだのか」が大事ということですね。

経験からの学びに取り組む際、必ず意識すべきところは「メタ認知」です。

メタ認知とは、自分のことを客観視する力をいいます。

例えば、ゲームという経験から学びを得る際、「どんな気持ちで取り組んでいるか」「この中で自分は何を学んでいるか」を常に考えることが大切です。

また、自分のことを俯瞰してみることも忘れずに取り組んでみてください。

東海大学 成川忠之教授

 

東海大学 成川忠之教授 成川忠之教授にインタビュー③|カレッジ制とキャリア教育の最前線 ― ワンストップ就職支援・職業志向型学習

東海大学のカレッジ制とは?全国キャンパス×中央機能で実現する「ワンストップ就職支援」

「就活の教科書」編集部チェスンウ

東海大学の「カレッジ制」について教えてください!

まず、東海大学は札幌から熊本まで日本全国にキャンパスがあります。

また、湘南キャンパスには文学部から体育学部まで多くの学部があります。
以前は就職相談ならキャリアセンター、授業の相談なら数学部門と分かれており、学生にとってキャンパス内を移動する負担が大きかったのです。

カレッジ制を導入してから学生は“自分のカレッジ”に行けば授業の相談から就職相談までワンストップで用事が済むようになりました。
カレッジ制によりワンストップの利便性を高めることができました。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

授業選択や就職の悩みなどの相談を一箇所でできることは学生にとって大きなメリットですね。

 

東海大学のキャリア支援とは?授業×就職指導を融合した「教職協働モデル」

「就活の教科書」編集部チェスンウ

「大学が就活のための場になっている」といった意見もありますが、先生は就職支援を教育の一環として捉えているのでしょうか。

PBLといえば「Project Based Learning(プロジェクト型学習)」や「Problem Based Learning(問題解決型学習)」を指しますが、私が提唱しているのは「Professional Based Learning(職業志向型学習)」です。つまり将来志望する職業をベースにして学んでいくという考え方です。

例えば、身近な例として大学進学を考えてみましょう。

多くの学生は「この学部から就ける仕事は何だろう」と考えがちですが、最初から「この仕事をしたいからこの学部を選ぶ」という逆算型の発想が大切です。

だからこそ、学生には、できれば初等中等教育段階から「将来自分はどんな仕事に就きたいか」という志を持ってほしいと考えています。

大学生では、早ければ1年生のうちから目標を立て、将来像を意識して学ぶ姿勢を身につけてほしいです。

年々就職活動が早期化している中、「就活が始まってから慌てて自分の人生を考える」ことは遅いはずです。

今の大学生にはより早い段階から将来を見据えて動き出すことが大事だと伝えたいです。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就活の後悔ランキングに必ず「もっと早く就活しておけば良かった、、」という実体験は必ず入りますよね。

職業志向型学習の考え方は就活に限らず、大学の授業選択についても同じです。

「この授業は楽だから」「この曜日はバイトがあるから」といった理由で履修を決めるより、「自分の将来に必要だからこの授業を選ぶ」という意識を持って積極的に受講するマインドを持ってほしいです。

東海大学 成川忠之教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

成川忠之教授、本日は素敵なお話を聞かせて下さりありがとうございました!

成川 忠之 教授

成川 忠之|東海大学