【インタビュー】著書「キャリアブレイク」石山恒貴教授(法政大学大学院)、片岡亜紀子講師(早稲田大学)「手放すことは空白ではない」

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こんにちは!「就活の教科書」編集部のじゅりです。
本日は、2024年10月に著書「キャリアブレイク」を出版された、法政大学大学院政策創造研究科教授 石山さんと早稲田大学グローバルエデュケーションセンター講師 片岡さんにインタビューしました!

石山さんと片岡さんは、新しいキャリアの役割に向けて自分と社会を見つめなおす期間「キャリアブレイク」を研究されていらっしゃいます。

この記事を読めば、「キャリアブレイクとは何か」「キャリアブレイクが必要な背景」などが分かります。加えて、「ありのままの自分を知る方法」などもお伝えしていきますよ!

「就活の教科書」編集部 じゅり

 

法政大大学院石山教授と、早稲田大片岡講師へのインタビュー。            小さな質問にも、大変丁寧にお答えくださいました。

法政大学大学院 石山恒貴教授はこんな人!

Profile

石山恒貴(いしやま・のぶたか)
法政大学大学院政策創造研究科教授
博士(政策学)。NEC、GE、米国系ライフサイエンス会社を経て、現職。
日本キャリアデザイン学会副会長、人材育成学会常任理事、Asia Pacific Business Review(Taylor & Francis)Regional Editor 等。 専門は組織行動論・人的資源管理が研究領域。
主な著書に『定年前と定年後の働き方:サードエイジを生きる思考』(光文社新書)、『越境学習入門:組織を強くする冒険人材の育て方』(共著、日本能率協会マネジメントセンター)、『日本企業のタレントマネジメント:適者開発日本型人事管理への変革』(中央経済社)等がある。


早稲田大学 片岡亜紀子講師はこんな人!

Profile

片岡亜紀子(かたおか・あきこ)
早稲田大学グローバルエデュケーションセンター講師
法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了、博士(政策学)。NEC、教育事業会社等を経て現職。
専門はキャリア形成、リーダーシップ開発、地域のサードプレイス。
主な著書に『地域とゆるくつながろう!:サードプレイスと関係人口の時代』(共著、静岡新聞社)、『LIFE CAREER(ライフ・キャリア):人生100年時代の私らしい働き方』(共著、金子書房)がある。

石山教授、片岡講師へのインタビュー①:「キャリアブレイク」ってそもそも何?ブランクじゃないの?

「キャリアブレイク」とは、今までのキャリアを手放して自分と社会を見つめ直す期間

お二人は、「キャリアブレイク」について研究されているんですよね!

ですが、「キャリアブレイク」という概念にあまりなじみがなく…。そもそも「キャリアブレイク」って何なんでしょうか。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

キャリアブレイクとは、「今まで中心的に活動してきたキャリアの役割を手放すことによって、新しいキャリアの役割に向けて自分と社会を見つめなおす期間」を指しています。

より具体的にお伝えすると、「離職・休職期間」のことです。

学生の「休学」も一種のキャリアブレイクと言えるでしょう。

かつては、「キャリア ”ブランク” =空白期間」と呼ばれたこともありましたね。

 

「キャリアブレイク」は空白(ブランク)期間ではない

「キャリアブレイク」と「キャリア”ブランク”」…。

言葉も似ていて、離職・休職・休学は空白期間だと思うのですが、いったいどのような違いがあるんでしょうか。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

キャリアブレイクは空白ととらえられがちですが、空白期間ではないと私たちは考えています。

手放すことに価値があり、矛盾していますが、空白にも豊かさがあるんですよね。

ブランクだととらえてしまうと、「離職・休職期間中なので、あなたはキャリアを失いましたよ」ということになってしまう。

確かにそうですね。

「離職・休職期間」を経験したから、キャリアに穴ができるというのは違うと思います。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

キャリアって一般的には、仕事のキャリアだと思われがちです。

ですが、実は現在、幅広くキャリアをとらえたライフキャリアと呼ばれる概念も存在しています。

例えば仕事していくにしても、何か病気をするかもしれないし、介護をする必要があるタイミングもあるかもしれない。

結婚して育児をする場合もあるし、仕事だけ、ワークキャリアだけを純粋に考えることってそもそも不可能なんですよね。

「キャリアは仕事だけの話ではない」ということなんですね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

人間として生きるっていうのは、仕事に限らず、家庭生活、市民生活なども含んだ、ライフキャリアが大切になるんです。

 

あえて何かを手放し自分を見つめる「キャリアブレイク」

キャリアブレイクと似た概念の言葉もあるんですよね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

そうなんです。

「キャリアブレイク」と似たような言葉として、リカレント教育サバティカル休暇などがあります。

リカレント教育は、1回社会に出てから、また大学で学び直したりすること、サバティカル休暇は、例えば7年ぐらい働くと1年ぐらい休んでいいよみたいな休暇のことです。

そのほかには、ギャップイヤーサードプレイスなどの考え方もありますよ。

しかし、キャリアブレイクがこれらと違うのは、「あえて何かを手放して自分を見つめ直してみる」という要素が強いこと。

この点が明確に違う点なんですよね。

「あえて」手放し、豊かな空白を過ごすのが、「キャリアブレイク」なんですね!

「就活の教科書」編集部 じゅり

 


石山教授、片岡講師へのインタビュー②:「キャリアブレイク」が生まれた背景。提唱されたきっかけって?

元石山ゼミ生の片岡講師が提唱した「キャリアブレイク」

法政大学大学院     石山恒貴教授

「キャリアブレイク」を失った空白(ブランク)期間のようにとらえることに関心を持ち、研究されていたのが、片岡さんだったんですよ。

片岡さんが「キャリアブレイク」を提唱されたということでしょうか?

「就活の教科書」編集部 じゅり

早稲田大学           片岡亜紀子講師

はいそうなんです。

早稲田大学グローバルエデュケーションセンター講師の片岡亜紀子です。

よろしくお願いします。私は実は、法政大学大学院に在学中、石山さんのゼミに入っていたんです。

2014年に修士論文を書いたんですが、そのテーマが女性の離職だったことで、「キャリアブレイク」につながったんですよね。

そんなきっかけがあったんですね!

「就活の教科書」編集部 じゅり

 

片岡講師も「キャリアブレイク」経験者

片岡さんが修士論文で、「キャリアブレイク」をテーマにしたきっかけなどはあったのでしょうか。

「就活の教科書」編集部 じゅり

早稲田大学           片岡亜紀子講師

会社を辞めて初めて気づいた「いろんな規範」がきっかけでした。

私は、NECという会社に数年務めた後、離職、キャリアブレイクを経験したんです。

その時初めて、周りと同じ行動をとる「横並び」に安心感を持っていたことに気づいたんですよね。

私は学生時代、周りが行くから短期大学に行く、みんなが就職するから就職をするみたいな具合で、選択を積み重ねていました。

進学して留学するような子がいると、「なんでそんな思い切ったことができるんだろう」と思うくらいでした。

違うことをするということにも恐れを感じ周りの目を気にしていたことに気づいたんです。

私も休学していたことがあるんですが、「大学に行くと感じる疎外感」がありました。

自分以外は大学生だけど、「私はいったい何者なのか?」と。

「就活の教科書」編集部 じゅり

早稲田大学           片岡亜紀子講師

じゅりさんもそういった経験があったんですね。
 
実際、調査をしてみると、「休むこと」に抵抗がない、肯定的なライフイベントととらえる少数派はいたものの、「休むことで社会に取り残されている」「自信がなくなっていく」と感じる人もいました。
振り返ってみると、私自身も同じような思いを抱いていました。
 
書籍『キャリアブレイク』にも関連する話が出てくるのですが、会社を辞めた後、手芸店の会員になろうとした際、職業欄の存在に気付き、結局会員証の作成をやめてしまいました。
 
今思えば、なぜそんなことにこだわったのかと思うのですが、「無職」と書くことに対する抵抗があったのです。
 
「休むことは悪だ」という考えに、囚われていたのかもしれません。

 

スティグマ的要素を持つ「キャリアブレイク」

「社会に取り残される」と感じてしまうのは、なぜなんでしょうか。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

「キャリアブレイク」がスティグマ的要素を持っていることも大きな要因でしょう。

スティグマとは、レッテルを貼る意味合いを持つ言葉で、分かりやすい例として、「オタク」があります。

私は、昔からアニメが好きな「アニオタ(アニメオタク)」なんです。

私が会社に勤めていた頃は、アニメが好きとかっていったり、コミケ(コミックマーケット)で同人誌を売ったりすると、「変わった人だね」だと思われてしまっていた。

確かに「キャリアブレイク」にもレッテルを貼られている感じがしますね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

そうなんですよね。

マッチョイズムと呼ばれる、弱肉強食の世界だからこそ、「仕事をする以上、昇進しなきゃいけない」「弱みを見せちゃだめ」みたいな考え方が日本でもまだ存在しています。

 

石山教授、片岡講師へのインタビュー③:書籍「キャリアブレイク」を出版

早稲田大学           片岡亜紀子講師

こうした問題意識から、「キャリアブレイク」を提唱し、この度、書籍「キャリアブレイク」を出版することになったんです。

本書では、「キャリアブレイク」経験者8人の事例を掲載しています。

大体20代から30代の人だったんですけども、石山先生が実施されていた、離職や休職を経験した皆さんのご経験を聞き取るインタビューに参加しました。

会社で大変な目にあって退職代行を使って辞めた人もいるし、働きながら長時間残業しすぎて、うつ状態になった人もいました。
 
大変な経験をした方も多かったのですが、「キャリアブレイク」を通じて、皆さんそれぞれがいろんな自分に気づいていきます
 

「キャリアブレイク」を実際に経験した方の経験談を知ることができる一冊なんですね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

キャリアブレイク — 手放すことは空白(ブランク)ではない

書籍「キャリアブレイク — 手放すことは空白(ブランク)ではない」

 

法政大学大学院     石山恒貴教授

キャリアブレイク中に、1ヶ月間、2ヶ月間、家に引きこもる生活を試してみると、息苦しさが緩和され、だんだん元気になっていく。

そうすると、「ありたい自分」に徐々に近づいていくんですよね。

「ありたい自分」というのは最終的に、日々変わっていくものではあります。

けれど、「ありたい自分」に近づくっていうのは、「大企業の正社員」という一面だけではきっとなくなっていくんですよね。

大事だと思っていなかったものが、大事になっていく

そうした、「とらわれから解放されていく姿」を描いています。

早稲田大学           片岡亜紀子講師

キャリアブレイクについてかなり詳しく知ることのできる本です。

キャリアに悩んでいたり、息苦しさを感じていたりする方は、ぜひ手に取ってみてくださいね。

私も読んでみたいです!

「就活の教科書」編集部 じゅり

キャリアブレイク — 手放すことは空白(ブランク)ではない

キャリアブレイク — 手放すことは空白(ブランク)ではない

石山 恒貴, 片岡 亜紀子, 北野 貴大
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石山教授、片岡講師からのメッセージ

好きなキャラクターを紹介すると、自分の興味関心が分かる

ありのままの自分を見つけるのって、とても重要なことである故、かなり難しいと思うんです。

どういったことをすればありのままの自分を見つけられるんでしょうか。

「就活の教科書」編集部 じゅり

早稲田大学           片岡亜紀子講師

石山先生がワークとしても実施されているんですが、「好きなキャラクターを紹介してみる」ことも一つの方法です。

子供のときに憧れていたヒト・モノは、自分自身の価値観に沿っている側面がすごくあると思うんです。

「こうなりたい」と、自分が生きたいように、やりたいように考えているからです。

私は元々「赤毛のアン」がすごく好きなんですが、ワークを通じて、「周りに物がない中でも、頭の中でいろんなものを素敵なものに仕上げて考えていくあの自由さ」に憧れていることに改めて気づきました。

自分自身の好きなものを通じて、自分がひそかに持っている「こうなりたい」という気持ちを発見することができるんですね。

「就活の教科書」編集部 じゅり

「ありのままの自分」を見つける問い
  1. 好きなキャラクターは?
  2. キャラクターと自分の似ているところは?
  3. キャラクターと自分の違っているところは?
  4. キャラクターと入れ替わったら何をしてみたい?
  5. このキャラクターが目指していることは?
  6. キャラクターを好きになったきっかけは?
  7. キャラクターが話した心に残っているセリフは?

引用:石山恒貴・岸田泰則・北川佳寿美・谷口ちさ・中山由起子作成「自分の好きなキャラクターを紹介しようワークショップ」より

法政大学大学院     石山恒貴教授

私は進撃の巨人の「ハンジ」が好きなんです。

巨人を恐れることなく、興味津々に近づいて、解剖したりする姿が何だか好きなんですよね。

私も好きです!

私は「ハンジ」の性格自体が好きなんです。

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

そうだったんですね!

じゅりさんと私のように、同じキャラクターが好きでも、意外と、なぜ好きなのか理由は個々で違うこともあります。

自分に似たキャラクターが好きになる人もいるし、反対に自分と違うキャラクターが好きという人もいます。

自分自身の興味関心をあぶり出す良い方法になりますよ。

 

石山教授「キャリアブレイクを文化に」

最後にお二人から、読者の皆さんにメッセージをお願いします!

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

いろんな人に、「キャリアブレイク」を知ってもらいたいと思っています。

「キャリアブレイク」の共著者、北野貴大さんが「キャリアブレイクを文化にしたい」とおっしゃっているんです。

文化にしたいというと、「みんながやるべき」ととらえられてしまうかもしれませんが、あくまでも取りたい人が取るべきだと思っています。

文化にしたいというのは、今までだったらキャリアブレイクを取りたいと思った人がいても、「それってよくないよね」という雰囲気があった点を変えていきたいということです。

選択肢がどんどん多様になり、増えていくようにと想い、「キャリアブレイク」を出版しました。

いろんな自由な選択ができるような社会にしたいっていうことだと思っています。

就活生の皆さんは、これからキャリアの選択肢がどんどん多様化して、自由に選択できる社会にもっとなっていくと思うんですね。

選択自体が大変ってこともあるかと思いますが、やっぱり選択ができない社会とかキャリアより選択ができた方が魅力的です。

「キャリアブレイク」も選択肢の一つにいれながら、多様な選択肢を自由にどんどん楽しめるようになってもらえればなと思います。

 

片岡講師「自分の好きなこと/価値観を大切に、前へ進んで」

早稲田大学           片岡亜紀子講師

この本を出版するために、いろんな人にインタビューをする中で、当たり前の選択肢としてないことへの苦しみ、窮屈さを肌でものすごく感じました。

もし、「キャリアブレイク」が文化として、当たり前の選択肢としてあったならば、ほっとする人ってたくさんいるんじゃないかと思っているんです。

「こんなのもあるよ」、「こんな選択ができるんだよ」ということが浸透すればすごくいいなと思っているので、ぜひ本著を読んでいただきたいと考えています。

「キャリアブレイク」がより多くの人に届いてほしいですね!

「就活の教科書」編集部 じゅり

早稲田大学           片岡亜紀子講師

大学で就活支援の授業を担当していた時期、多くの方が大学の自由さ」から「社会に入ることへの恐怖」を抱くことが多いと感じました。

その気持ちは本当によく分かります。

未知の世界で、訳が分からないことだらけですよね。

ですが、皆さんが生きていくこれからの社会には、これまで以上に多くの選択肢が増えていくと思います。

不安もあるかもしれませんが、「自分の好きなこと」や「価値観」を知っていれば、どんな仕事でも「どう工夫したら自分にとって面白くなるかな」と考えることで楽しみを見出せるかもしれません。

就職活動を楽しんでとは簡単には言えませんが、その過程を通じて「自分にはこんな一面があるんだ」という発見や「できなかったことができるようになってきた」といった瞬間がきっとあると思います。

ご自身の「好きなこと」や「価値観」を大切に、一歩ずつ進んでほしいと願っています。

石山さん、片岡さん、読者の皆さんの勇気につながるお話、大変にありがとうございました!

「就活の教科書」編集部 じゅり

法政大学大学院     石山恒貴教授

ありがとうございました!

早稲田大学           片岡亜紀子講師

ありがとうございました!

キャリアブレイク研究所:https://careerbreak-lab.studio.site/

石山恒貴研究所:https://ishiyama-lab.jp/

法政大学大学院 政策創造研究科:https://chiikizukuri.gr.jp/

石山教授X:https://x.com/nobu_ishiyama