「就活の教科書」編集部 野口

佐々木 研(ささき・きわむ)
一般社団法人ミライ企業協議会 代表理事
CH 代表
2013年、NPO法人やPR会社と共に「ミライ企業プロジェクト」を設立。大阪の中小企業の魅力を発掘し、学生のキャリア教育と結びつける活動を10年以上継続。「人を大切にする経営学会」の事務局を務める傍ら、複数の大学でキャリア科目の講師を務める。
目次
一般社団法人ミライ企業協議会 佐々木研さんにインタビュー①:ミライ企業プロジェクトとは
大阪の中小企業の魅力を届けるために
── さっそくですが、「ミライ企業プロジェクト」を立ち上げた経緯を教えてください。
佐々木さん:独立前、私は企業のCSR室(社会貢献事業部)の立ち上げに携わっていました。大阪は日本でも有数の中小企業が多い地域ですが、当時は学生にその魅力が十分に届いていないと感じていました。そこで「地元企業の存在をもっと知ってほしい」という想いから、2012年に中小企業限定の求人フリーペーパーを制作したのが活動の原点です。
その活動の中で、「大阪を変える100人会議」というコミュニティに参加し、キャリア教育支援をする「NPO法人JAE」の山中昌幸代表と、中小企業の広報支援をする「株式会社PRリンク」の神崎英徳代表に出会いました。
「NPO法人JAE」の山中昌幸代表は、インターンシップが普及する前から長期インターンシップの普及活動をしている先駆者で、大学でキャリア科目を担当されていました。私がフリーペーパーの取材で山中さんを訪ねた際、「キャリア教育の現場で使える教材がまだない。一緒に作らないか?」と提案をいただいたのが大きな転機となりました。
学生が企業で働く「人」に触れる機会を作りたい
佐々木さん:当時の就活は、会社の規模や条件で選ぶことが主流でした。そうではなく、企業の本当の中身や、そこで働く「人」に触れる機会を作りたいと3社で意気投合し、2013年に「ミライ企業プロジェクト(ミラプロ)」を始動させたのです。
学生の皆さんが一つの価値観に縛られず、フラットに企業を見極める目を持ってほしいという願いが、ミライ企業プロジェクトの根底にあります。
── 具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?
佐々木さん: 私たちが大切にしているのは、単なる「採用マッチング」ではありません。若手の皆さんの職業観の醸成、そして地域のミライを共に創ることを目的としています。そのため、中小企業の方々と学生さんとの接点作りを創出するために、様々な取り組みを行っています。
ミライ企業プロジェクトの設立当初は企業同士が学び合う「スタディツアー」から始まりましたが、その後、独自の教材「ミライ企業図鑑」を大学へ提案したことで、出前授業(大学での講義)の機会が大幅に増えました。出前授業で出会った学生たちがミラプロのイベントに参加してくれるようになり、現在のミライ企業プロジェクトへと発展したのです。
企業と学生が共に社会課題を考える「ミライ会議」
佐々木さん:現在は企業と学生のコミュニティを融合させた「ミライ会議」というイベントを定期的に開催しています。その時々のタイムリーなテーマを掲げ、ディスカッションやワークを通じて、立場を超えて共に学びを深める形にしています。
── どのようなテーマでディスカッションするのでしょうか。
佐々木さん:テーマはウェルビーイングや、自分のサードプレイスを見つける「越境人財」といった話題から、貧困や障がいといった社会課題まで幅広く扱ってきました。先月は「これからの時代、AIとどう付き合っていくか」というタイムリーなテーマでワークショップを行ったばかりです。
佐々木さん:こうした企画は、事務局の運営に携わっている学生スタッフたちが自分たちの興味関心をベースに、参画企業の皆さんと連携しながら企画・運営しています。
── ミライ企業プロジェクトの運営に、学生さんも参加されているのですね。
佐々木さん:はい。出前授業の後に「名刺をください!」と連絡先を求めてきてくれる熱心な学生が毎回いるんです。彼らにはまず「ミライ会議」への参加を勧め、その上で運営スタッフとして深く関わるか、一参加者として楽しむかを、学生自身の意思で選んでもらっています。
近年は、学生スタッフが自分たちの興味関心をベースに、参画企業の方々と連携しながら企画・運営までを主導してくれています。
「何をするかではなく、誰とするか」
── 佐々木さんが大切にしている価値観があれば教えてください。
佐々木さん:私が大事にしていることは、「何をするかではなく、誰とするか」です。
ミライ企業プロジェクトを支えてくれているのは、長年関わり続けてくれている本当に信頼できるメンバーたちです。
私個人の事業としては、「中小企業の経営サポート」と「若者のキャリア支援」を二つの柱にしていますが、これらはあくまで「方法論」に過ぎないと考えています。企業の規模や立場がどうあれ、「この人と一緒に何かを成し遂げたい」と思える方と事業を進めること。これが、私にとって大切な軸です。
一般社団法人ミライ企業協議会 佐々木研さんにインタビュー②:就活生へ伝えたい「いい会社」の見極め方
── 出前授業で学生へ伝えている、アドバイスをいただけますか。
二次情報ではなく「空気感」を感じてほしい
佐々木さん:企業を探す際、規模や知名度、給与条件といった「表面的な情報」だけで判断してほしくありません。本当に大切なのは、そこでどんな人が働き、どんな空気が流れているかです。ネット上の「二次情報」ではなく、インターンシップや会社見学、私たちが開催する「ミライ会議」のような場に参加して欲しいです。
その上で、自分がこれからの人生で何を大切にしたいかの「軸」。その軸と、実際に自分の目で確かめた企業の姿を照らし合わせた上で、自分に合うかどうかを判断してほしいと思います。
「人を大切にする経営」をしているか
佐々木さん:私は「人を大切にする経営学会」の事務局も務めていますが、良い会社を見極める一つの指標として「社員やその家族を本当に大切にしているか」を見てほしいと思っています。また、障がいのある方や高齢者、外国人の方などにとっても働きやすい場を作っているかどうかも、ぜひ見てほしいと思います。
── 人を大切にしている会社かどうかを見極めるポイントはありますか?
佐々木さん:実際に会社を訪問したとき、社長と社員の距離感はどうか。HPはキラキラしているが働いている社員の人たちが「死んだ魚のような目」をしていないか。空気が殺伐としていないか。その空気感は、実際に行かないと絶対に分からないと思います。なので会社の「空気感」を判断軸として持っておくと良いと思います。
もしも興味があれば、私が編纂に携わった『人を大切にする経営学用語事典』も手に取ってみてください。本事典の編集長である元法政大学大学院教授の坂本光司先生が、これまで8,500社以上の企業を見てきた知見をもとに、「いい会社」の定義を1,000の用語で解説しています。
「事典」という名前ではありますが、ぜひ読み物としてパラパラと捲ってみてほしいです。そうすることで、私が先ほどからお伝えしている「人を大切にする経営」の輪郭がよりはっきりと見えてくるはずです。就活において、自分がどんな価値観を良しとする会社で働きたいかを考える機会になると思います。

「就活の教科書」編集部 野口
「誰と働くか」という視点は、会社名ばかりを追ってしまいがちな就活生にとって、ハッとさせられる言葉だったのではないでしょうか。
佐々木さん、ありがとうございました!

