「就活の教科書」編集部野口
今回は、北海道武蔵女子大学経営学部の渡邊泰宏准教授に取材しました。
楽天での実務経験を経てアカデミアへ転身された渡邊先生が考える、今の時代に求められる「リーダーシップ」について伺いました。

渡邊 泰宏(わたなべ・やすひろ)
北海道武蔵女子大学 経営学部 経営学科 准教授
大学院修了後、2007年に楽天株式会社へ新卒入社。システム開発部署にてプログラミングやウェブサービスのプロデューサーを経験。その後旭川大学、東京富士大学を経て、2022年より北海道武蔵女子学園に赴任。専門分野は経営組織論。
目次
北海道武蔵女子大学 渡邊泰宏准教授にインタビュー①理論と実践を往復する学びの原点
「経営学は実学」恩師の言葉で飛び込んだ成長企業での日々
── 渡邊先生は、民間企業(楽天)での実務経験をお持ちですが、大学教員を志したきっかけは何でしょうか。
渡邊先生:もともとは大学院で研究の道を志していましたが、当時の指導教授から「経営学は実学なのだから、一度現場を見てきたらどうか」と背中を押されたのがきっかけです。
楽天に入社した2007年当時は、市場が毎年10%以上成長するような、非常にスピード感のある環境でした。私はシステム開発の部署でプログラミングやプロジェクトの進行管理を経験し、そこで得た「ビジネスの現場感覚」は今の研究や教育に大きな影響を与えています。
五感で学ぶ現場の価値:理論を自分の一部にする
渡邊先生:経営学は、理論と実践の往復が欠かせません。教室でマーケティングや組織論の理論を学んだら、今度は実際の企業などの現場に足を運んで、自分の目で確かめてみる。この「理論と実践」を往復するのが、私たちの学びの基本スタイルです。
人間は現場に行って五感を使わないと、本当の意味では学べないと考えています。だからこそ、PBLや産学連携のプロジェクトを通じて、現場で学ぶことの価値を肌で感じてほしいと思っています。
北海道武蔵女子大学 渡邊泰宏准教授にインタビュー②実社会の「正解のない問い」に挑む
多様な強みを活かし合う「権限なきリーダーシップ」の育成
── ムサシサッポロプロジェクトについて詳しく教えてください。
渡邊先生:経営学部で主に取り組んでいるのは、2年生の必修科目である「リーダーシップ応用演習」です。ここでは、パートナーとなる連携企業が抱える本気の課題に学生たちが挑みます。
例えば、プロバスケットボールチームのレバンガ北海道と連携してイベントを企画したり、地方の自治体と一緒に地域活性化のプロジェクトを動かしたりと、多岐にわたる活動をしています。
渡邊先生:これらのプロジェクトの目的は、主体性や、課題発見力を養うことです。今の時代、一人の強力なリーダーが全員を引っ張る「牽引型」だけでは通用しません。多様なメンバーがそれぞれの強みを活かし、時に入れ替わりながらサポートし合う、「権限なきリーダーシップ」が主流となりつつあります。そのため協働する力を、プロジェクトでの実践を通して身につけてほしいと考えています。
コミュニケーションとリーダーシップの違い
渡邊先生:コミュニケーションとリーダーシップは、似ているようで別物です。私の講義では以下のように定義しています。
- コミュニケーション:「情報を伝達し、相互理解を深める力」
- リーダーシップ:「明確な目標に向かって、他者と力を合わせて動く力」
渡邊先生:本学の学生はコミュニケーション能力が高く、他者と関係性を築くことにはとても長けています。しかし、社会に出ると「目標を設定して、議論を積み上げていく力」が求められます。
グループワークなどを通じてリーダーシップの基礎力を養うことが、社会に出てからも大事な土台になると考えています。
企業が抱える「本気の困りごと」が学生を成長させる
── 参加した学生さんから寄せられる声はありますか。
渡邊先生:学生からはよく「本当に頭を悩ませて大変だった」という声が上がります。というのも、プロジェクトで扱うのは授業用に作られた課題ではなく、連携企業が日夜考えても解決策が見つからないような本気の困りごとだからです。
例えば、「ネット通販が当たり前の時代に、どうすれば地元の本屋さんに足を運んでもらえるか」といった難問に挑みます。学生たちは自分たちで現場に足を運び、徹底的に調査を重ねる。そのプロセスの中で、起きている問題に対して、具体的に何を目指して取り組むべきかという課題を自ら設定していくのです。
正解が簡単に見つからない。そんな難しさがあるからこそ、多くの学生が「やりがいがあった」「取り組みがいがあった」と話してくれています。
「現場の体験」から導く解決策
渡邊先生:今の時代、AIを使えばそれらしい答えはすぐに出てきます。しかし、それでは「わかった気」になって終わりです。私は学生たちに、簡単に答えを出さず「なぜだろう?」と問い続けてほしい。徹底的に調べ、現場の空気を感じ、粘り強く考え抜く。このプロセスで得られる「体験」こそが、ビジネスで通用する本当の力になります。
1年次から段階的にリーダーシップを育むカリキュラム
渡邊先生:本学の経営学部では、1年次から段階を踏んで「リーダーシップ」を育むカリキュラムを組んでいます。いきなり企業課題に取り組むのは難易度が高いため、本学では以下の3ステップを設けています。
1年前期:リーダーシップ開発演習Ⅰ(心理学)
心理学の視点から、グループワークの基礎となる「他者と関わる力」を学びます。
1年後期:リーダーシップ開発演習Ⅱ(デザイン学)
ものづくりを通してプロトタイプを作り、解決策を導き出す思考法をトレーニングします。
2年前期:リーダーシップ応用演習(産学官連携プロジェクト)
実際に企業が抱える「本気の困りごと」にチームで取り組みます。
渡邊先生:授業は座学中心ではなく、毎回必ずグループワークやアウトプットを行うようにしています。自分の考えを言葉にして外に出すというプロセスを通さないと、学びはなかなか「自分ごと」として定着しないからです。
北海道武蔵女子大学 渡邊泰宏准教授からメッセージ:好きと得意を武器に
── 最後に、これから社会に出る就活生へアドバイスをお願いします。
渡邊先生:伝えたいことは2つです。
1つ目は、「得意なことを見つける」こと。
先ほどお話しした通り、これからの時代のチームは、一人のカリスマではなく、多様なメンバーがそれぞれの強みを持ち寄ることで機能します。自分がチームの中でどの役割を担えるのか、その「武器」を見つけることこそが、あなたらしいリーダーシップを発揮するための第一歩になります。
2つ目は、「好きなことを見つける」こと。
社会には「正解のない問い」が溢れています。困難な課題にぶつかった時、最後まで粘り強く考え抜き、一歩踏み出すための原動力になるのは、やはり「これが好きだ」「面白い」という個人の熱量です。
その熱量は、必ず周囲に伝播します。誰かが本気で楽しんで取り組んでいる姿はチームを鼓舞し、自然と周りを巻き込んでいく。つまり、自分の「好き」を大切にすることは、結果としてあなたらしいリーダーシップを発揮することにつながります。
私もこの年になって、新しい大学の立ち上げというチャレンジの中で、改めて自分の「好き」や「得意」に気づくことがあります。
これらを見つけるには、行動するしかありません。企業の説明会やインターン、大学のプロジェクトも良いです。皆さんの可能性は無限大なので、自分で手を挙げ、新しいことにチャレンジしてみてください。

「就活の教科書」編集部野口



