「就活の教科書」編集部小林
こんにちは!「就活の教科書」取材チームの小林です。
本日は、武庫川女子大学の内田正博教授にインタビューしました。
内田先生、本日はよろしくお願いします!
こちらこそよろしくお願いします。
内田正博教授
内田 正博(うちだ・まさひろ)
武庫川女子大学共通教育部教授、前キャリアセンター長
関西学院大学文学部独文学科卒業後、同大学大学院文学研究科にてドイツ文学を専攻。学部在学中にサンケイ・スカラシップを得てドイツ留学。大学院修了後、1975年親和女子大学でドイツ語教員として教壇に立ち、その後1982年、神戸大学教養部および教養部改組後の国際文化学部・研究科で教鞭をとり、その傍ら学部の就職支援委員会の委員から委員長を務め、それがきっかけとなって、学生の就職・キャリア支援に本格的に取り組むことに。やがて2006年に全学キャリア教育科目「職業と学びーキャリアデザインを考える」(神戸大卒業生によるリレー講義)を立上げ、2007年神戸大学のキャリアセンター設立とともに初代センター長を務め、各学部・各部署の就職支援組織の情報共有と連携を図り、全学的なネットワーク型のキャリア就職支援体制を構築。2012年定年退職後は、武庫川女子大学で共通教育部教授としてキャリア教育科目を担当するとともにキャリアセンター長として学生のキャリア就職支援に従事(前キャリアセンター長)。
目次
武庫川女子大学 内田正博教授にインタビュー①:キャリアの意味──就活にとらわれず「どんな人生を送りたいかを考える」
キャリアの意味とは?「働くこと軸とする人生の歩み」
「就活の教科書」編集部小林
さっそくですが、内田先生は「キャリア」についてどのように考えていますか?
私は「キャリア=働くことを軸とする人生の歩み」だと思っています。
少しだけ補足すると、学生には「キャリアとは、働くことを軸として、自らの 役割 を模索しながら担おうとする人生 の歩みである」と伝えています。
この私の定義は、文部科学省の中央教育審議会の報告書(2004年)が示すキャリアの考え方に基づいています。
そこではキャリアをまず「キャリア」が「個人」と「働くこと」との関係の上に成立する概念だということ。
キャリアはきわめて個人的なもので、人間の数だけキャリアがあります。また、ここで言う「働く」は、「お金を稼ぐために働く」ことだけではありません。
職業生活以外にも、ボランティアや趣味などの多様な活動を含み、個人がその職業生活、家庭生活、市民生活等の全生活の中で経験する様々な立場や役割を遂行する活動が、働くということであり、例えばお母さんの家事や学生の学業なども働くこと、仕事(work)に入ります。
つまり、ここでは「働く」は活動すること、自分の役割らしく生きることと言えるかもしれません。学生の場合、働く(work)は、主に勉強、学業ですね。
そう考えれば、人は、子どもから老人に至るまで、いろんなかたちで働いているのです。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
一見、キャリアという言葉は学生にとってまだ実感しづらいものに見えますが、大人になると自然と“キャリア”の意味が分かってくるものなのでしょうか?
大人でも、先に述べたようなキャリアの意味を知っている人は少ないと思います。
学生から見た大人は、「落ち着いていて、貫禄もある」「悩みなんかなさそう」というふうに映っているかもしれません。
でも、大人も大人なりの悩みがあります。
「自分は若者にどう見られているんだろう」「自分は今所属している組織の中で、あるいは誰かの役に立てているんだろうか」「自分は組織からどう評価されているんだろう」「家族や親戚の間では自分はどんな存在なんだろう」などなど、いつもではないにしても、心の中で悩みを抱えながら、モヤモヤしながら生きています。
私が、私のキャリアの2つ目の定義で「役割を模索しながら」というフレーズを入れたのも、学生だけでなく、老人も含めた大人を意識して考えたものです。
そうした悩みやモヤモヤは程度の差こそあれ、若くても、年を取っても変わらないものです。
そういう存在が、人間という生き物です。
キャリアの元の意味は「轍(わだち)」だと言われています。キャリアを自分が歩んだ人生の足跡と思えば、理解しやすくなるのではないでしょうか。
内田正博教授
就活をすること自体が目的ではない
「就活の教科書」編集部小林
キャリアについて考えるうえで「学生が意識しておいたほうがいい」というポイントはありますか?
まず、キャリアを先に述べたような意味ではなく、もしキャリアを何か勝ち組の職業生活のようなものと捉えているなら、そういった「キャリアのために~する」といった考え方にとらわれすぎないことです。
先に話したように、キャリアは自分自身の人生の歩みであり、学生にとっては、これから自分だけの自分らしい人生をどのようにかたちづくっていくかが問題なのに、「みんながキャリアのために〜をするから自分もやる」など、キャリアについて思い違いをしているような感じがします。
私の周りでも「就活がすごく気になっていて、なんとか就活を乗り越えないと」といった自分を思い詰めている学生をよく見かけます。
そこで、私はあえて学生に問いかけます。
「就活の目的は何か?」「何のために就職するのか?」
その答えを、“自分の人生をどう生きていきたいか?” “自分はどんな人生を築いていきたいのだろう?” という、そもそも論から考えてもらいたいと願っています。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
確かに、私も“大学生=就活をしないといけない”と思い込んでいました、、、
就活を経験しなくても、自分の人生を歩むことはできます。
例えば、「お米を作っている農家の人」「ラーメン屋さんを営んで働いている人」など、就活をしたことはないけど、ちゃんとやりがいをもって働いていれば、自分らしい人生を歩んでいる人たちがその例です。
人間にとって大切なのは、経済的自立、社会的自立を果たすことです。
だから私は、就活をすること自体が目的ではないと学生たちに言います。
「就活のその先」があると。
就活は、人として経済的自立、社会的自立を得るための手段の一つにすぎません。
できればさらにその先に、経済的自立は何のためか、についても考えてほしいですね。
大切なのは「働くことであり、自分の人生をどう生きたいか」なのです。
とはいえ、多くの学生にとっては、「企業に就職する」という選択肢になる場合が多いと思います。
そのとき、結果として自分にとっては「就活」が必要になるといったプロセスを踏んでほしいと思います。
内田正博教授
武庫川女子大学 内田正博教授にインタビュー②:やりたいことが見つからない学生が動き出すための最初のステップ──「好きなもの、趣味」
やりたいことがない人は、まず一歩動いてみる
「就活の教科書」編集部小林
内田先生の「自立して自分の人生を考えていく」というメッセージは、とても印象的でした!
一方、「自分がなりたいものがない」「やりたいことが分からない」と悩んでいる学生が多いと思います…
私は現時点で「やりたいことがない」「なりたいものがない」こと自体はそれほど問題ではないと思っています。
問題なのは、そこで止まってしまうことなのです。
止まっていたら、見える景色はずっと同じですよね?
つまり、動かないと自分が「やりたいこと」「なりたいもの」「自分らしさ」は分からないのです。
でも、一歩動くだけでも、景色は変わります。
そうして、初めて自分の中に何かが見えてきたり、言葉が見つかったりするんです。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
そもそも、最初の一歩はどう踏み出したらいいのか分からない学生もいます、、、
まず、今自分に与えられた課題や仕事に真摯に取り組むこと。あるいは、自分の身近にある「好きなもの」「興味」に全力で打ち込んでみることです。
好きなものであれば、とりあえず「推し活」でもいいし、「筋トレ」でもいいです。
例えば、趣味に全力を出してやっていくと、自然と仲間ができたり、世界が広がったりします。
「あなたとアイドルのライブに行きたい」と思う人も出てくるかもしれない。
そこで、また新しい景色が見えて、興味や視野が広がっていきます。
それが、もしかすると他のものに変わるかもしれませんが、それも含めて、いつか「やりたいこと」につながる可能性があるのです。
内田正博教授
“好き”を無理に仕事につなげなくていい
とはいえ、「好きなこと=仕事にしなきゃいけない」というわけではありませせん。
自分の興味や好きなことは、あくまで「趣味」であっても大丈夫です。
ただ、その趣味を続けるためにはお金が必要になります。
そのため、自分が働きやすい職場を見つけて、そこで自立して生活を整えながら、好きなことを続ければいいんです。
他方、今目の前にある課題や仕事に打ち込むことも大切です。武庫女の卒業生が、後輩に向けて次のような言葉を贈ってくれました。
「今、夢がなくても大丈夫!ただ次の二つは大切です。(1)目の前の課題に一所懸命取り組む。(2)自分はどうしたいのか自問自答し続ける。それが、次の扉を開く。」
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
「好きなことを仕事にしたい」学生もいると思いますが、その場合はどうなるのでしょうか?
いうまでもなく、好きなことが仕事になる場合もあります。
例えば、推し活を通じてアイドルグッズのショップを開くような人もいるでしょうし、食事が好きで、それが高じてグルメライターになるような人もいます。
しかし、そうなるためには、単なる好きを超えて、人の何十倍も努力しなければなりません。
ですから、全員が好きなことを仕事にできるわけではないし、そこを目指さなければいけないわけでもありません。しかし、人生にとって好きなことや趣味は大切です。
大事なのは、「一生関わっていたいものや趣味を持ちつつ、それを続けられるよう経済的・社会的に自立すること」だと言えるでしょう。
もし誰もが、好きなことを仕事にしなければならないと考えるなら、それは一種の思い込みです。
先ほどとは別の卒業生ですが、あるOGは次のような言葉を語ってくれました。
「(初めから)自分に合う仕事は探しても無い。仕事に自分を合わせなさい。」キャリアにはこうした側面もあるのです。
一番重要なことは、経済的・社会的自立でしたね。
内田正博教授
武庫川女子大学 内田正博教授にインタビュー③:変化の時代を生き抜くために必要な力──「思考力・学び続ける力・主体性・社会的関心」
人生100年時代に必須となる力とは?「思考力」「言語化能力」「行動力」そして「生涯学び続ける力」
「就活の教科書」編集部小林
内田先生のキャリア教育の授業の動画を見て、「思考力」「自ら学ぶ力」、「生涯学び続ける力」という言葉が印象的だったのですが、こういった力が人生の中で、どんな場面で大切になってくるのかをお伺いしたいです。
「思考力」「自ら学ぶ力」「生涯学び続ける力」は、就活だけではなく、社会人として人生を生きるうえで欠かせないものです。
思考力は質問力と結びついています。
よい仕事をするためにも自分らしい人生を送るためにも、自分や自分の仕事、自分の人生にどんな質問を投げかけるかによって、仕事や人生の質が変わってきます。
ちなみに、以上の他に、きわめて重要なのは、言語化能力、自分の考えや経験の意味を自分の言葉で語る能力です。
私は学生に「経験の言語化」の重要性を訴えていますが、その重要性は社会人になっても変わりません。その他にもう一つ、決定的に重要なものとして「行動力」も加えなければなりません。
ところで、今は「人生100年時代」と言われていますよね?だからこそ「生涯学び続ける力」がいっそう大切になってきました。
長いスパンで仕事をしていくことになるし、それに加えて、時代の急激な変化の中で仕事内容も変わったり、転職も当たり前の時代になってきました。
リスキリングやリカレントが求められる時代に、自分の人生をどう歩むかを自分で考え、自分で学ぶ力は強力な武器になります。
つまり、勉強は、大学まですることではなく、社会人になっても続けるものなんです。
ちなみに、この場合の勉強とは、学校で教科を学ぶ時のような狭義の勉強だけではなく、本や講演、経験や人や自然、あるいは仕事の現場から広く学ぶこと、広義の勉強を意味します。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
大学を卒業してからは勉強しなくてもいいと思っていました…
仕事には必ず「専門知識」と「スキル」が要る
学生のみなさんの前の世代では、「一度、企業や組織に入れば、あとは会社が面倒を見てくれる」という感覚がどこかにあったと思います。
また、「大学までは頑張って勉強して、あとはそこまで頑張らなくていい」みたいな風潮もありました。
でも、今はまったく違います。
本当に学ばなければならないのは、社会に出てからです。
むしろ大学は、社会に出てから充実した仕事人生を送るためにも、「考え方や学び方を学ぶ場所」と考えるべきでしょう。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
今の時代では、ずっと学び続けなければならないのですね…
そうです。人生は学びの連続です。その学びを楽しめるかどうかで、人生の質が変わってくるのです。
じつは昔も、納得のいく仕事人生を送った人は、やはり自分で考える力があって、主体的に学んだ人たちでした。
加えて今は、転職も当たり前の時代になりましたよね?
つまり、一つの会社に一生しがみつく必要がなくなったんです。
もし、会社にハラスメント上司がいて、そんな状況を容認し続ける職場なら、黙って我慢を続ける必要はありません。
あるいは、自分の能力をもっと活かせる場所があるなら、そこへ移ればいいのです。
ただし、そのためには、「自分はこういう能力があります」とPRできる武器が必要になります。
だからこそ、日頃から思考力を鍛え、学び続けて、自分のスキルを高めること。そして、そんな自分を他者に伝える力、言語化能力が必要になります。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
具体的にどういったものが必要になるのでしょうか?
私は「社会人基礎力」を含む仕事力全体像の図をあげています。
真ん中に社会人基礎力があって、右側に専門知識・スキル、左側に基礎学力がありますよね?
そして、それら3つの下に、公共心、思いやり、倫理観、礼儀などの人間性・基本的な生活習慣が置かれています。
そのうち大学入試で求められるのは基礎学力、就活ではもちろん基礎学力も必須ですが、主に問われるのは社会人基礎力と人間性。専門知識とスキルは、医師や薬剤師など在学中から学ぶものもありますが、殆どの場合は、就職後に経験を積みながら習得していきます。
卒業して仕事をするうえでは、どんな仕事であっても専門的な知識とスキルが必要です。
一見、あまり専門性がなさそうに見える仕事でも実は専門的な知識が必要なのです。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
世の中にあるすべての仕事には専門性があるのですね!
例えば、その日の授業終了後に教室を掃除してくださる清掃スタッフ。
掃除ひとつとっても、「頑固な汚れをどう落とすか」「限られた時間でどう効率よく進めるか」といった「プロとしての知識と技術」が必要です。
銀行員も、美容師さんも同じです。
それぞれの分野で専門知識があるからこそ、そのサービスに対して私たちは代価を払うわけです。
その専門知識やスキルをブラッシュアップするためにも、学び続ける力は不可欠です。
内田正博教授
リスキリングの時代と「社会人の勉強不足」
「就活の教科書」編集部小林
最近、「リスキリング(=学び直し)」という言葉をよく耳にするのですが、なぜ必要なのでしょうか?
今の時代は、企業側が社員に学び直しを推奨しています。
生成AIやロボットの飛躍的な進化に見られるように、あまりにも時代と社会の変化が急激なので、過去の成功例はもはや役に立たない。
企業のあらゆる部署が、新しい商品やサービスの創造に向けて、新しい知識やスキルを身につけることが求められるからです。
それに対して、国際比較のデータを見ると、日本の社会人は、諸外国と比べて圧倒的に勉強していないという統計があります。
もしかすると、残念なことですが、「社会人になったからもう勉強しなくていい」といった安易な考えを持っている人が多いのかもしれません。
日本は諸外国に比べて生産性が低いとよく言われますが、その要因の一つとして、勉強しない大人があるんじゃないかと思っています。
しかし、学び続けることは、「職業上のキャリアアップにつながる」ことの他に、「脳の活性化」「自分の可能性を拡げる」「若さを保つ」その他多くのメリットがあります。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
学び続けることで、たくさんのメリットがあるのですね!
学び続ける姿勢を保ち続ける人の例「俳優の吉永小百合さん」
「就活の教科書」編集部小林
学び続けることで「若さを保つ」とはどういうことでしょうか?
日本で「学び続ける姿勢を維持する人」の例として、私は俳優の吉永小百合さんをあげています。
彼女は年齢を重ねても学び続ける姿勢を持ち続けています。
常に自分の知らないものに興味を持ち、「どうやって吸収しようか」と前向きに向き合い続ける。
彼女は2025年で80歳です。世間で「美しい」「若々しい」と言われていますが、私は学び続ける姿勢こそが、彼女の若さを保つ秘訣ではないかと考えています。
ちなみに、吉永さんの座右の銘は「いつまでも生徒」です。
何十年も前のことですが、この言葉を知ったとき、私は、彼女のいつまでも学び続ける姿勢と謙虚さを感じて感銘を受けました。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
逆に、学び続けない人はどうなるのですか?
いい質問ですね。個人的な意見ですが、学び続けないことのデメリットとして、次のようなものが考えられます。
- すでに持っている知識だけでやりくりするしかない
- できることがとても限られてしまう
- 思い込みや先入観で物事を判断する
- 視野が狭くなる
- 話が面白くない。生産的な雑談ができない
- 想像力と創造力が乏しい
- 問題発見力と問題解決力がない
- 良質のリーダーシップがとれない
- 主体性のない指示待ち人間になる
- 人望や信頼感が乏しくなる
- 社会で起こっていることに鈍感になる
- 良好な人間関係や素適な出会いに恵まれない
- 好奇心と向上心と若々しさに欠ける。
- 自分の成長に鈍感になる
- 自由で幸福な人生から遠くなる
結果として、「上から言われたことをやるだけ」になってしまう恐れがあります。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
受動的で周りに流される人になってしまう危険があるのですね…
主体性と社会的関心が、就活も人生も左右する
あるいは、逆に頑固になって周囲とコミュニケーションがとれなくなってしまう場合もあります。
どんなことでも、「世間ではこれが正解だから」と言われてやったとしても、楽しめないですよね?
「自分がやりたいからやる」。
何事でも主体的に取り組んでこそ、そこに楽しさや納得感が生まれるのです。
ところでみなさんは、就活がうまくいく学生とうまくいかない学生、その違いは何だと思いますか?
その答えは、私の仕事上の先輩でもあり、一橋大学のかつての就職情報室のチーフだった伊集院正さんから教わりました。今から20数年前の話ですが、次の言葉です。
就活がうまくいく人とそうではない人の違いは、「自立」と「社会的関心」である。
「自立」は今であれば「主体性」と言い換えることもできるでしょう。つまり、主体性を持って自分で考え、自分で選び、自分で行動できるかどうかに尽きます。
ただ、「主体性」とは何かをしっかり考える必要がありますね。主体性があれば何ができるようになるのかなど・・・。
その上で、社会で起こっていることに関心を持ち、自分なりの考えを持てているかどうか。
主体性と社会的関心、この二つを持っていれば、おのずと就活はうまくいくのです。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
学生にとって世の中について興味を持つのがなかなか難しいですよね…
たしかに、現代の若者は昔に比べて社会的関心が少ないと感じます。
例えば、ニュースの話をする際、その事件も、人物も知らないことがあって、こちらがびっくりすることがあります。
まず、社会で起こっている様々な出来事に関心を持ち、「知る」こと、そして自分なりの意見を持つことが大事だと思います。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
主体性があるかないかはどういった要因が関わりますか?
主体性は、後天的に身につけることもできますが、家庭も大きく関わっていると感じています。
例えば、親が世間の正解にとらわれすぎて、「あなたのためなのよ」「こっちのほうが幸せなのよ」など、常に自分が考える“正解”を押しつける家庭があります。
そういう家庭で育った子は、表情に乏しく、自分から「これがやりたい」と言いづらい。
もしやりたいと言っても、結局のところ、親から否定されてしまうからです。
その結果、最初から自分で考えることをせず、自分の意見を言わなくなってしまいます。
私の考える理想的な親は、子どもに質問して考えさせ、主体性を育てる親です。
実際に学生から聞いた話ですが、その親は、高校生の娘に卒業後の進路は自分で考えなさい、就職してもよいし、大学進学でもよい、自分で考えて決めなさいと言ったそうです。その学生は色々悩んだ末に結局大学進学を選んだのですが、思考力と共に行動力もあり、非常にしっかりした学生でした。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
主体性は生まれつきのものではなく、環境によって育まれるものなんですね。
一方、普段からしっかりしていて、笑顔も明るい学生の背景には、親が静かに見守ってくれたというケースが多いように感じます。
例えば、親子間でお金の貸し借りがある時、一般的な親なら「返さなくていいよ」と言ってしまうところですが、そこをきちんと返させることで、子供の自立心を育てる親がいます。
それは「甘やかし」ではなく、自立や主体性を促す接し方です。
また、多少リスクがあっても、「失敗しても大丈夫だよ。まずやってみたら?」と言ってくれる親がいれば、子どもも自然とチャレンジするようになります。
内田正博教授
武庫川女子大学 内田正博教授にインタビュー④:就活生へのメッセージ
就活が学生にもたらす本当の意味「就活は成長の機会」
「就活の教科書」編集部小林
就活をすることは学生にとってどのような意味がありますか?
私は、就活は学生にとって成長の機会であると考えています。
まだ就活が本格化していない3年生と、就活を終えた4年生の間では、明らかに雰囲気が違いますよね?
3年生に比べて4年生は堂々としているのです。
その違いは「就活を経験したかどうか」だと思います。
ただ、その取組み方が真摯で前向きだったかどうかは重要です。
就活では、初対面の大人と話をする、自分のことを語る、自分を深く振り返る。
就活ほど自分と向き合う時期は、人生の中でもめったにないんです。
就活をすることで、社会を知り、人との出会いで刺激を受け、自分自身の理解が深まっていく。
多くの学生は就活を通して、自分が大きく「成長した」と口にします。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
学生たちは就活を通じて大きく成長していくのですね!
就活は本当に楽しい?「学生生活を充実させることが成功の第一歩」
「就活の教科書」編集部小林
内田先生は「就活は楽しめるもの」だと思いますか?
就活を楽しめるかどうかは個人差があると思いますが、私の授業で就活を終えた学生に聞くと、9割以上の学生が、就活は「楽しかった」と言います。
就活は楽しむことができる。かつて私の担当した学生がそのことを教えてくれました。
ある時その学生から、就活状況を知らせるメールが届き、一日に面接が4つもあって大変だと書いてきました(コロナ禍よりはるか以前のことで、オンライン面接などなかった時代です)。
その後の言葉に私は注目しました。「でも、とても楽しいです。」
その時はまだ内定をもらっていなかった学生がしんどいはずの就活を「楽しい」と言ったことにびっくりしましたが、次に続く文を読んで納得しました。
「自分が学生時代に頑張ったことを真剣に聞いてくださるので、どんどんお話ししてしまいます。」
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
就活を「自分の頑張ったことを聞いてもらえる場」と捉えているのですね!
まったくその通りです。数年前、授業感想文に次のようなメッセージを書いた学生がいました。これを読んだとき、素晴らしい気づきだと驚嘆しました。
「就活を通して成長できたことは間違いないですが、“就活” というもの自体を頑張るのではなくて、“就活は今まで生きてきた自分の人生を発表する場所”だと思います。」
言い換えれば、就活を楽しむコツは、“学生生活を充実させること”です。
就活は、大学入試と違って偏差値だけでは決まりません。大切なのは経験値です。
エントリーシートや面接で「学生時代に頑張ったことは?」と聞かれますが、もし空っぽの内容、例えば、授業を受け身で聞くだけの教室と家を往復するだけの学生生活では、その人を知るための判断材料、その人が仕事ができるかどうか、一緒に働いて楽しいかどうかなどの判断材料がありません。企業側としても聞きようがないのです。
それに対して、アウトプットする「ゼミ」などの学業、「部活」「サークル」「ボランティア」「アルバイト」「趣味」など、何か一つでも”全力で取り組んだ経験”があれば、それは立派なガクチカになります。
内田正博教授
ガクチカが弱いと感じても大丈夫?「派手な経験は必要不可欠ではない」
「就活の教科書」編集部小林
ガクチカというと、リーダー経験などの派手な経験が必要なのかな?と考えてしまいます。
今まで、私は大手企業や優良中小企業に内定をもらった学生をたくさん見てきました。
その中で、派手な目立ったガクチカはできなかったのに、立派に就職を果たした学生がいました。
短大に通っていた学生で、その学費は自分が働いて払わねばなりませんでした。
そんな彼女にできるガクチカは、学業とアルバイトだけ。海外留学はおろか部活さえ叶いません。
しかし、バイト先では問題解決能力を発揮して「締め作業のマニュアル」を作って職場に貢献し、学業も真摯に取組み学年3位、GPAも高得点を取り、特技の習字は11年間続けるなど、そうした日々の積み重ねをエントリーシートに丁寧に書いて、大手企業の内定を勝ち取りました。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
ガクチカに、肩書きなどは必要ないのですね。
ガクチカとは文字通り、学生生活で力を入れてがんばったこと。その中身は当然人によって違います。とくに派手な経験は必要ありません。
「何を経験したか」ではなく、「その経験から何を学び、どう成長したか」が大切です。
重要なのは、結果ではなくプロセス、成功より成長です。
内田正博教授
就活で大切なのは「行動」と「挑戦」──失敗を恐れない姿勢が未来を切り開く
「就活の教科書」編集部小林
内田先生、ありがとうございました。
最後に、就活生へ向けてメッセージをお願いします!
私が一番伝えたいのは「行動すること」「チャレンジすること」です。
行動を起こさず何も経験しなければ、そもそも人は本当に大切なことを考えることすらできません。「考えて行動するのではなく、考えるために行動する。」三木谷浩史さんの名言です。
そのためには、どんな場合でも「失敗を恐れない」というマインドが大切です。
学生からみると、「学生のうちの失敗は許されるけど、社会人になったら許されないんじゃないか」と思うかもしれません。
しかし実際は、学生と同じく社会人もたくさん失敗を経験しています。
例えば、会社が新商品を出すとき、その中で失敗が9割以上、1割がヒットすればよいくらいなのです。
大谷翔平が出演するTVCMで、次のようなフレーズが出てきます。
「失敗の数だけ、僕たちは成長できる」
失敗を拒否して行動しなければ、決して成長しませんし、人は変われません。成功と成長のために、失敗は不可欠です。
就活はたしかに大変ですが、「大変」は「大きく変わる」とも読むことができますね。
大変なので痛い失敗もしますが、その失敗からたくさんのことを学びながら、人はたくましく成長してしていくのです。
成長するためには失敗はつきものです。つまり、失敗と成長はワンセットだと言ってよいでしょう。
物事に挑戦する時、失敗したくない気持ちが先に立ち、挑戦自体を避けてしまうと、幸福で楽しい人生にはなりません。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
就活に対する漠然とした不安に対しては、どのように向き合ったらいいのでしょうか?
まず、まだ就活を経験していないのに、なぜそんな不安や拒否感を抱くのか、自問自答してみてください。
その不安は、思い込みと無知からくることに気づくでしょう。また、もしかすると社会人になりたくない、学生のままでいたいという気持ちが潜んでいるのかもしれません。
もし就活をつらい、きびしい、しんどいものという先入観、思い込みがあれば、ちょっとした失敗しただけでも、やっぱり就活はいやなものだと思ってしまいますね。
「先入観は、可能を不可能にする」
これは大谷翔平が大切にしている言葉で、高校の時に監督から学んだそうです。何事においても、思い込みや決めつけは、自らの可能性を自分の手で閉ざしてしまうのです。
しかし、そんな思い込みを払拭し、失敗こそ成長のきっかけと思える学生は、試行錯誤して悩みながらも、就活とその失敗から多くのことを学びながら成長し、成長実感を得ていきます。
そう考えれば、就活はめんどくさいだけのものでも、苦しいだけのものでもありません。
失敗を恐れずに、たくさん行動して、チャレンジしてください。必要なのは、ちょっとした勇気です。
就活を通して、学生は自分と向き合い、社会を知り、多くの出会いを経験します。
その延長線上にあなたの成長があり、だからこそ就活を楽しめるのです。
同じところに立ち止まっていれば、見える景色はいつまでも変わりません。
最後に、長くなりますが、私の授業で後輩に向けて書いてくれた4年生のメッセージを紹介しましょう。目を見張るほど逞しい女子学生でした。
「可能性 は自分で広げるものだ。誰にでもチャンスはいつでもあるし、何でもできる。問題は、できるかできないかではなく、やるかやらないかだと思う。やれば、経験の中から新たな課題や発見が生まれる。自分の『見たい、知りたい、聞きたい、やりたい』を、卒業するまでに『見た、知った、聞いた、やった』にするだけで、就職活動の面接で困ることは何もない。私は本当に、自分の経験をありのままに語って内定を頂いた。就職活動が勝負なのではなく、就活が始まるまでが勝負です。楽しい就活でした!」
ここには、私の言いたかったことが集約されています。
また、それができるような学生生活、自分のことが好きだと言えるような学生生活を送ってください。
アランの幸福論の中の言葉を贈りたいと思います。
「幸福は行動の中にしかない」
就活に限らず何事においても、前向きに本気で取り組むこと、その姿勢とプロセスこそが、あなたの人生とキャリアを豊かなものにしてくれます。
内田正博教授
「就活の教科書」編集部小林
素敵なメッセージをありがとうございます!
内田先生、本日は本当にありがとうございました!

