【インタビュー】熊本学園大学 徳永彩子教授|予測できない出会いや出来事を活かす力が未来を決める

“「就活の教科書」編集部野口”

こんにちは!「就活の教科書」取材チームの野口です。

今回は、熊本学園大学の徳永彩子教授にインタビューしました。

徳永先生、本日はよろしくお願いします!

“徳永彩子教授”

よろしくお願いいたします。

Profile

徳永 彩子(とくなが・さいこ)
熊本学園大学商学部ホスピタリティ・マネジメント学科 教授

1999年 西南学院大学文学部外国語学科英語専攻(英語学学士)卒業。就職氷河期に大学を卒業、西日本鉄道株式会社に入社。2004年 西南学院大学大学院経営学研究科へ進学し、勤務しながら経営学の研究に励む。その後大学教員となり、現在熊本学園大学商学部ホスピタリティ・マネジメント学科で教授を務める。

熊本学園大学徳永彩子教授にインタビュー①:就活氷河期を乗り越えて:夢を諦めずに切り拓いたキャリア

マスコミ志望から、思いがけない道へ

“「就活の教科書」編集部野口”

徳永先生は就職氷河期に大学を卒業されたということですが、当時のことについて教えてください。

“徳永彩子教授”

西南学院大学の英語専攻を卒業後、マスコミ志望だった私は地元・福岡のアナウンススクールに通いながら、数十社程マスコミ業界に応募しました。

しかし就職氷河期真っ只中で、ほとんどの企業が採用を見送る中、選考を勝ち進むも内定には至りませんでした

そんな中、就職課の支援が大きな支えになりました。顔を覚えていただいた課長からのすすめもあり西日本鉄道(西鉄)を受けることになりました。

“「就活の教科書」編集部野口”

最初はマスコミ業界を志望されていたのですね。

“徳永彩子教授”

西鉄の面接で「秘書検定2級」を評価され入社、役員秘書として勤務いたしました。

正直、「就職氷河期に就職できて良かった」と「夢を叶えられなかった」という両方の複雑な気持ちがありました。

そんな時、新入社員研修の講師に「今の年齢なら何でもできるわね」と言われた一言が心に残り、「まだ諦めなくていい、夢を追っていい」と気付かされました。

その後、秘書の仕事にやりがいを感じ、秘書学に出会い、独学で学び始めます

“「就活の教科書」編集部野口”

確かに、「今の年齢なら何でもできる」と言ってもらえるとポジティブになれる気がしますね。

 

秘書学の勉強をする中での出会いから、大学教員へ

“徳永彩子教授”

秘書学の勉強を独学でする中、大学の秘書科の学科長をされていた先生に手紙を書いたことがきっかけで、勉強会に参加するようになりました。

さらに、秘書検定1級を取得した際、現役大学教員だった別の先生との出会いから、「私もこのような先生になりたい」「秘書学を研究したい」という思いが芽生えました

その後、勤務と両立しながら母校の大学院進学を志し、0から経営学の勉強に励みました。

“「就活の教科書」編集部野口”

秘書学の勉強をする中での出会いから、大学教員を志すようになったのですね。

“徳永彩子教授”

大学院進学時には、上司や教授陣の理解を得ながら修士課程を修了しました。

秘書科教員としてキャリアをスタートし、福岡で教える夢を叶えるため転職。

その後、博士号も取得し、現在はビジネスマナーやホスピタリティを教える大学教員として学生と向き合っています

“「就活の教科書」編集部野口”

偶然の出会いから、ご自身の夢を叶えられていてとても素敵です。

 

自身の経験からのキャリアの教訓

“徳永彩子教授”

私のこれまでのキャリアを振り返ると、2つの理論が当てはまります。

  • 今ある環境で最善を尽くすことで、道が拓ける(自律的キャリア形成理論)
  • 予測できない出会いや出来事を活かす力が未来を決める(プランド・ハップンスタンス理論)

やはり「偶然は自分でつくることができる」のだと思います。
目の前のことに一生懸命向き合ってると、自然と人が応援してくれるし、道が開けてくるんですよね。

また、いわゆる“成功してる人”って、実はみんなが計画通りに来たわけではなくて、たまたまの出会いや出来事をきっかけに、今の場所にたどり着いてる人が多いんです。

だから就活では、業界を一つに絞りすぎず、2〜3パターンは考えておいたほうがいいと思います。

加えて、就職課のサポートプロの目から自分をブラッシュアップしてくれる。本当に心強いので、ぜひ活用してほしいです。
そして、「この人の話もっと聞いてみたいな」と思える人がいたら、遠慮せずにどんどん近づいていっていいんです。
メンターになってくれる人を自分から探すことも大事だと思います。そういった出会いってものすごく大きいんです。

“「就活の教科書」編集部野口”

上手くいかなくても、挫けてしまうのではなく、偶然を味方にしながらキャリアを切り開いて行った徳永先生の言葉にはものすごく説得力があります。

 

熊本学園大学徳永彩子教授にインタビュー②:女性のキャリア研究:「一皮むけた経験」

人が「一皮むける瞬間」に着目

“「就活の教科書」編集部野口”

徳永先生の女性のキャリア研究ではどのようなことを研究されていますか?

“徳永彩子教授”

これまで、女性管理職の方々70名に「キャリアの中で一皮むけた経験」について3つほど伺い、論文にまとめました。

入社3年目や新入社員時代、あるいは23年目など、時期は様々ですが、どの年代でも一皮むける経験があるのです。

“「就活の教科書」編集部野口”

「一皮むける経験」とは面白いテーマですね。

どのようなタイミングで“一皮むける”のでしょうか?

“徳永彩子教授”

行動パターンとして共通していたのは、「現実を直視すること」「局面から逃げないこと」
この2つが、一皮むける経験に結びついていることが明らかになりました。

男性のキャリアでは、「仕事上の経験や困難」が転機になることが多いですが、女性の場合はそれだけではなく、「出産」「離婚」など家庭に関することも大きな要因になります。

こうしたライフイベントに前向きに向き合うことで、大きな成長を遂げているのです。

“「就活の教科書」編集部野口”

「出産」だと、家族が増えてさらに仕事に力が入りそうと想像できますが、「離婚」はどのような要因になるんでしょうか?

“徳永彩子教授”

出産すると、子どもを保育園に預ける関係で、“5時までに仕事を終えないといけない”。
そうすると取り組む姿勢が変わり、自然と効率的に取り組むようになるんですよね。そういう話を聞かせてもらいました。

それから離婚だと、「離婚したことに比べたらもう何でもできる」と前向きな気持ちに変わったという話もありました。

“「就活の教科書」編集部野口”

ライフイベントを乗り越えて、前向きな姿勢に変わることで「一皮むける」のですね!

 

日常の声かけがキャリアに影響する

“「就活の教科書」編集部野口”

会社としても、女性のキャリアのために体制を整えることが求められるんでしょうか?

“徳永彩子教授”

これまでに7社、70名の女性管理職の方にお話を伺ってきましたが、「一皮むけた経験」のきっかけになる出来事は、企業の規模や社風によって少しずつ違ってくるんですね。

だからこそ、企業としては自社の社員が反応しやすい経験のパターンを把握しておくことが大事です。

そのうえで、上司による日常のアドバイスや、ミスをしたときのフォロー、人事異動といった意図的な働きかけを通じて、「一皮むける経験」の機会を増やしていくことが、結果的に社員の成長、ひいては企業の成長につながるということが、研究から見えてきました。

 

熊本学園大学徳永彩子教授にインタビュー③:大学でのキャリア教育・ゼミ活動

「ビジネス実務総論」「ビジネスマナー」:実践的に社会で必要なマナーを身につける

“「就活の教科書」編集部野口”

現在、大学ではどのような授業を行なっているのか教えてください。

“徳永彩子教授”

現在は「ビジネス実務総論」「ビジネスマナー」などの授業を担当しています。

前者ではビジネスの基本的な理論を学び、後者ではロールプレイングを通して、実践的にマナーを身につけていく内容になっています。

いずれも社会に出る前に知っておいてほしい、大切なスキルを扱っています。

“「就活の教科書」編集部野口”

社会に出た時に役立つスキルが実践的に学べるのはとても嬉しいですね。

 

ゼミでの活動:ビジネス系検定の資格取得とビジネスパーソンのキャリア研究

“「就活の教科書」編集部野口”

徳永先生のゼミでは、どのような活動を行なっていますか?

“徳永彩子教授”

ゼミでは、主にビジネス系検定の資格取得と、ビジネスパーソンのキャリア研究の2本柱で取り組んでいます。
6月と11月には秘書検定やサービス接遇検定があり、その前までは試験対策を中心に行い、試験後は面接対策や秘書学(=ビジネスパーソンに必要な知識や技能)の勉強を進めています。

さらに、時事問題の発表やビジネスパーソンを招いた講演会なども実施しています。

“「就活の教科書」編集部野口”

ゼミで資格の試験対策をされるのですね。

“徳永彩子教授”

また、私どものホスピタリティ・マネジメント学科では、3ヶ月の長期インターンシップを実施しており、これは他大学にはあまりない特色です。秋学期か春学期のいずれかに、月曜を除く週6日間、現場で学びます。

3ヶ月もインターンに行けば、その会社の雰囲気や社風がよく分かりますし、裏方の仕事も実際に経験できます。
だから、就職前に「本当に自分がやりたい仕事かどうか」をしっかり見極めることができるんです

ゼミではインターンシップ中も毎週の活動報告を行い、学びの振り返りも大切にしています。

“「就活の教科書」編集部野口”

大学で長期のインターンシップを実施しているのは珍しいですね。

大学でのキャリア教育を通して、卒業時に学生にはどのようになって欲しいですか?

“徳永彩子教授”

周りの方との信頼関係をしっかり築いてほしいと思っています。
信頼関係があるかないかで、普段の仕事のパフォーマンスって全然変わると思うんです。

信頼関係があると安心して自分の力を発揮できますし、逆にそれがないと、うまくコミュニケーションが取れなくて力を出しづらくなることもあると思います。

だから、感謝の気持ちを持って信頼関係を作って、責任感を持って仕事を全うしてほしいです。

“「就活の教科書」編集部野口”

信頼関係はどんな仕事においても大切なことですね。

 

熊本学園大学徳永彩子教授にインタビュー④:キャリア形成において重要なこと

キャリア形成においては「好奇心」と「行動力」が重要

“「就活の教科書」編集部野口”

キャリア形成において学生に必要とされてくることは何でしょうか?

“徳永彩子教授”

大事なのは、好奇心と行動力だと思っています。
自分にはできるかわからないけど「やってみよう」と思えるチャレンジ精神も欠かせません。
一皮むけた経験にも「チャレンジ」は共通する要素としてよく出てきます。

「ちょっと頑張ればできるかもしれない」と思えることに自分から手を挙げて取り組む。

それが行動力につながって、周りの応援や手助けも得られるし、結果としてセルフイメージも高まっていく。

そんな経験が自己肯定感を育てていくと思います。

ChatGPT に質問する

“「就活の教科書」編集部野口”

チャレンジした経験が自己肯定感を育てていくのですね。

実際に、好奇心や行動力があるなと感じる学生は多いですか?

“徳永彩子教授”

私どものホスピタリティ・マネジメント学科には、航空やホテル、医療、旅行会社などの業界を目指す学生が多く集まります。

すでに明確な目標を持って入学してくる学生が多いので、授業でも本当にキラキラした目で取り組んでくれますし、自分から積極的に動けるタイプの学生が、他の学科と比べても比較的多い印象ですね。

“「就活の教科書」編集部野口”

明確な目標があるというのは積極的に行動する原動力にもなっていそうですね。

 

人生の大切なタイミングでは意識的に立ち止まり、考える時間を持ってほしい

“徳永彩子教授”

女性のキャリアには、就職・結婚・出産・転職といった節目が必ずあります
その節目ごとに、「自分は何をしたいのか」「何をしていると幸せか」といったことを見つめ直して、キャリアをデザインしてほしいと思っています。

ふだんは流れに身を任せる“ドリフト”でいいんです。
でも、人生の大切なタイミングでは、意識的に立ち止まり、考える時間を持ってほしいと、学生にもそう伝えています。

ChatGPT に質問する

“「就活の教科書」編集部野口”

人生の重要なタイミングでは、改めてしっかり考え直すということが大切なんですね。

 

就活生へのメッセージ:「就職活動はいろんな大人の目を通して自分をブラッシュアップしていくもの

“「就活の教科書」編集部野口”

徳永先生のキャリアについてやキャリア教育について教えて頂き、ありがとうございます。

最後に就活生にメッセージをお願いします。

“徳永彩子教授”

就職活動は一人で黙々と進めるものじゃなくて、いろんな大人の目を通して自分をブラッシュアップしていくものだと思います。

エントリーシートは自分のパンフレットみたいなものですから、ゼミの先生だけじゃなく、就職課のプロの方にも見てもらって磨いてほしいです。
面接も同じで、毎回反省して「もっとこう答えればよかった、こう話せばよかった」という気づきがあるはず。
それを次に生かして、成長していってほしいです。

私自身も、西鉄に就職した時、就職課長さんに「徳永さんのこれからは全然心配してませんよ」って言われた一言が、今でも励みになっています。

だからこそ、学生のみなさんにも、ぜひ大人の力を借りながら、自分自身を磨いていってほしいと思っています。

ChatGPT に質問する

“「就活の教科書」編集部野口”

自分のキャリアを考える時に、まず大人の手を借りるというのはとても大切なことですね。

徳永先生、本日はありがとうございました!

熊本学園大学 研究者情報