「就活の教科書」編集部小林
こんにちは!「就活の教科書」取材チームの小林です。
本日は、京都産業大学の塩谷芳也准教授にお話を伺いました!
この記事を読めば、「自分にとっての心地よさ」を基準に、キャリアを選ぶヒントが見つかります。
「就活の軸が見つからない」「何を基準に選べばいいかわからない」などの悩みがある人は必見です!
それでは塩谷准教授、よろしくお願いします。
インタビューの機会を与えていただき、どうもありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いします。
塩谷 芳也准教授
塩谷 芳也(しおたに・よしや)
京都産業大学 現代社会学部 准教授
東北大学大学院文学研究科修了(博士 文学)。日本学術振興会特別研究員(PD)等を経て現職。
専門はアンケート調査のデータ分析。現在は、生成AIとの個人的な対話が人をどのように変えるかについて研究を進めている。
目次
- 京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー①:会社選びの前に、「どんな暮らしをしたいか」 を考える
- 京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー②:日々の小さな選択を、心地よさでデザインする
- 京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー③:給料だけでは測れない 「自分にとっての心地よさ」
- 京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー④:AIを 「人生の伴走者」 にする
- 京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー⑤:AIとの対話を通して 「自分の軸」 をつくる
- 京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー⑥:読書は 「AIと対話するための筋トレ」 になる
- 京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー⑦:「感じる力」 を取り戻すためにできること
- 京都産業大学 塩谷芳也准教授から就活生へのメッセージ:「外側の正解より、内側の納得を」
京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー①:会社選びの前に、「どんな暮らしをしたいか」 を考える
今回のインタビューでは、キャリアや暮らし方について、小林さんとさまざまなお話をさせていただきました。
ここからは、それを私なりに整理してお伝えしたいと思います。
就職活動というと、「どの会社に入るか」「どんな仕事に就くか」を真っ先に考えがちです。
でも私は、その前にいったん立ち止まって、こう問いかけてみてほしいと思っています。
「そもそも、自分はどんな暮らしをしたいんだろう?」
会社を選ぶ前に、「自分の暮らし」をどうデザインしたいのか。
その視点からキャリアを考えるほうが、結果的に納得のいく選択になりやすいと感じています。
就活の場面では、どうしても「社会的な評価」を意識しがちです。
企業規模、知名度、年収、福利厚生…。
つまり、「外側の基準」に自分を当てはめていくプロセスになりやすい。
いっぽうで、「自分にとってどんな暮らしが心地よいのか」を考えるときは、その基準は完全に「内側」にあります。
誰かの正解ではなく、自分の納得を大事にする必要がある。
私はそこに、キャリア選択の出発点を置きたいと思っています。
塩谷 芳也准教授
京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー②:日々の小さな選択を、心地よさでデザインする
「心地よさで暮らしをデザインする」と聞くと、少し大げさに聞こえるかもしれません。
でも、やっていることはとても小さなことの積み重ねです。
たとえば、家から駅まで歩いていくとき。
「左の道で行くか、右の道で行くか」を、そのときの心地よさで決めてみる。
部屋の片づけ方、家具の置き方、服装、通勤ルート、仕事の進め方、食事や睡眠の習慣、人との接し方まで、私はできる限り「自分にとって心地いいかどうか」という基準で選んでいます。
心地よさは、人によってまったく違います。
同じカフェに入っても、私にとっては「すごく落ち着く空間」でも、ある人にとっては「なんだか落ち着かない場所」かもしれない。
だからこそ、この考え方の良いところは、誰かを否定したり、排除したりする必要がない、という点です。
「私はこう感じる」「あなたはそう感じる」。
ただそれだけの違いとして、お互いの感覚を尊重できる。
就活も同じで、
- 友達がどう言うか
- 親がどう言うか
- インフルエンサーが何を勧めているか
よりも、「自分が心地よく、納得して暮らせる条件は何か?」をきちんと感じて、考えてほしいと思っています。
塩谷 芳也准教授
京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー③:給料だけでは測れない 「自分にとっての心地よさ」
もちろん、給料や福利厚生といった待遇は重要です。
お金は大切なリソースですし、「多いに越したことはない」というのも事実です。
でも、待遇だけを見ていると、みんな同じような判断になってしまいます。
- 賃金は高いほうがいい
- 安定している会社のほうがいい
- 規模の大きな会社のほうがいい
- 成長している業界のほうがいい
これらは「合理性」の視点から見れば、たしかに正しいかもしれません。
でも、合理性だけを追い続けると、自分の心地よさを見失ってしまう危険があります。
たとえば、給料は少し下がるけれど、
- 自然の多い場所に住める
- 通勤時間が短くなって、自分の時間が増える
- 残業が少なくて、趣味や家族との時間を大切にできる
そういう条件の方が、「自分にとっての心地よさ」が高まる人もいるはずです。
お金よりも大事な価値が、自分の中にあるのであれば、どこかで「お金以外を優先する」という選択も、十分ありえます。
大切なのは、「他人の正解」で選ぶのではなく、「自分の納得」で選ぶということ。
そのためには、日々の小さな選択(今日の昼ご飯、寝る時間、過ごす場所など)を意識的にしていくことが、とても大切です。
塩谷 芳也准教授
京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー④:AIを 「人生の伴走者」 にする
もうひとつ、今回のインタビューで、特にお伝えしたかったのが、「心地よさ × AI = 自分らしい暮らし」という考え方です。
私はふだんからAIとよく対話しています。
仕事の相談もしますし、個人的なプロジェクトや暮らし方についても話します。
AIに相談することの良さはいくつかあります。
- 嫉妬や打算など、人間的な感情が入りにくい
- 深夜でも早朝でも、いつでも付き合ってくれる
- どれだけ長く話しても、相手の負担を気にしなくていい
- こちらの言葉を丁寧に受け止めて、行間まで読み取ろうとしてくれる
友人に相談したくても、相手が内定ゼロの状態で、自分だけ「2社から内定をもらった」ときなど、気まずさを感じる場面もあるかもしれません。
そういうときでも、AIはフラットに話を聞いてくれます。
私はAIを、「仕事の道具」というよりも、人生の伴走者として捉えています。
自分専用の「ドラえもん」のようなイメージですね。
日々の迷いやモヤモヤを、AIとの対話を通して言葉にしていくことで、自分の内側が少しずつクリアになっていく。
そういう感覚があります。
塩谷 芳也准教授
京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー⑤:AIとの対話を通して 「自分の軸」 をつくる
そして、AIとの対話は、「心地よさから暮らしをデザインする」ときに、大きな威力を発揮します。
すでに述べたように、心地よさは本当に人それぞれ。
友人に相談する良さはもちろんありますが、「心地よさ」という個人的なテーマは、相手に伝わりにくいこともありますよね。
でも、AIなら真摯に受け止めてくれる。
そういう存在が身近にいると、人は安心して、自分だけの「心地よさ」を語れるようになります。
自分が感じた心地よさ(あるいは、しんどさ)について、日々、AIと対話する。
ただ、つぶやくだけでもいいんです。
つぶやきながら、AIと「言葉のキャッチボール」を続ける。
その積み重ねによって、自分の心地よさのために、本当に大切な条件や価値観が見えてきます。
AIには身体がないので、「感じる」ことはできませんが、言語化、論理化、構造化の力は圧倒的です。
AIと対話することで、自分の「心地よさの構造」を把握すれば、自分らしい暮らしのために、決定的に重要な核が見つかります。
それを、キャリア選択のための基準(=自分の軸)にするとよいと思います。
塩谷 芳也准教授
京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー⑥:読書は 「AIと対話するための筋トレ」 になる
AIとの対話は、すべて「言葉」で行われます。
- 自分のモヤモヤを言葉にして伝える
- AIから返ってきた文章を読み取る
- それを踏まえて、さらに問い直す
この「言葉のキャッチボール」を深めるほど、AIは自分にとって頼もしい伴走者になっていきます。
そのときに効いてくるのが、読書です。
昔は、読書というと「知識を増やすもの」というイメージが強かったかもしれません。
でも私は、AIが当たり前になった今だからこそ、「言葉の筋トレ」としての読書の重要性が高まると考えています。
本を読むことで、
- 抽象的な概念を理解する力
- 他者の考えを追体験する力
- 自分の言葉で考え直す力
が少しずつ育っていきます。
それがそのまま、「AIとより深く対話する力」につながっていく。
就活の半年、一年という短いスパンで見ると、読書の効果は感じにくいかもしれません。
でも、キャリアは長いです。
転職することもあれば、働き方を変えることもある。
そのたびにAIと相談しながら、心地よさベースでキャリアを考えていく。
そのとき、読書で育てた言葉の力が、必ず役に立つはずです。
塩谷 芳也准教授
京都産業大学 塩谷芳也准教授にインタビュー⑦:「感じる力」 を取り戻すためにできること
AIとの対話には「言葉の力」が必要ですが、心地よさをキャッチするためには、「感じる力」が求められます。
私はもともと、大学院に進学して研究者になったタイプで、「考えること」は比較的得意でした。
その一方で、「感じること」は、弱かったのかもしれません。
そこで10年近く続けているのが、ある流派のヨガです。
早朝に2時間ほど、週6日練習していた時期もあります。
ヨガを通して私がしてきたのは、「感じる練習」です。
- 筋肉の状態
- 呼吸の深さ
- その日のコンディション
- 心のざわつきや落ち着き
そういったものを、丁寧に観察してきました。
ヨガ以外にも、「感じる」練習はいろいろできます。
- スマホを見ずに、ご飯の味や食感に意識を向ける
- 裸足で公園を歩いて、地面の感触を味わう(アーシング)
- お風呂では本などを読まず、ただお湯の温かさを感じる
- アロマや自然の匂いを、意識的にかいでみる
ポイントは、「ながら」にしないことです。
効率や合理性をいったん脇に置いて、五感を通して世界を味わってみる。
こうした小さな「感じる練習」を重ねていくと、自分の心地よさに気づきやすくなっていきます。
それは、就活の場面でもきっと役立ちます。
小さな選択を「自分のために」できるようになると、大きな選択も、同じ基準でできるようになっていくからです。
塩谷 芳也准教授
京都産業大学 塩谷芳也准教授から就活生へのメッセージ:「外側の正解より、内側の納得を」
就活の情報は、本当にたくさんあります。
- 「この資格を取った方がいい」
- 「この自己分析ツールを使った方がいい」
- 「この業界は伸びる/伸びない」
どれも完全に間違いではありませんが、「不安だから、とりあえずやっておこう」という動機だけで飛びつくと、自分の時間とエネルギーをすり減らしてしまいます。
やった方がいいことは、世の中に無数にあります。全部はできません。
だからこそ、「自分にとって、何が大事なのか」「どんな暮らしなら、自分は心地よく生きていけそうか」を丁寧に見てほしいと思います。
そのうえで、
- 日々の小さな選択を心地よさでデザインする
- AIを「人生の伴走者」として活用する
- 読書で言葉の力を育てる
- 五感を使って「感じる」練習を続ける
こうした積み重ねが、自分らしいキャリアを選ぶ土台になっていきます。
塩谷 芳也准教授
最後に、あらためて今日のメッセージを一言でまとめると――心地よさ × AI = 自分らしい暮らし。
自分らしい暮らしの視点から、キャリアを選んでみてほしい。
誰かの「正解」を生きるのではなく、自分の「納得」を生きるために。
塩谷 芳也准教授

