【インタビュー】京都先端科学大学 三保紀裕教授|“学校から職業への移行”におけるインターンシップの重要性

「就活の教科書」編集部チェスンウ

こんにちは!「就活の教科書」取材チームのチェです。

本日は、京都先端科学大学の三保紀裕教授にお話を伺いました!

この記事を読めば、「日本の就活の特徴」「インターンシップの活用法」について知ることができます。

「就活の教科書」編集部チェスンウ

三保先生、本日はよろしくお願いします。

よろしくお願いします。

三保紀裕教授

Profile

三保 紀裕

三保 紀裕(みほ・のりひろ)
京都先端科学大学 経済経営学部 教授

大学院修了後、2011年1月より島根大学キャリアセンターに助教として就職。
その後、2012年12月に京都先端科学大学(旧京都学園大学)に講師として着任。現在、経済経営学部教授。
専門はキャリア教育・職業心理学。

京都先端科学大学 三保 紀裕教授にインタビュー①:研究テーマ「学校から職業への移行」

就活の失敗が研究の原点に

「就活の教科書」編集部チェスンウ

さっそくですが、三保先生がキャリア教育に携わるようになったきっかけについて教えてください!

元々就活を行う前から、ぼんやりと「働く」ことに関する興味関心はありました。

決定的となったのは、就活の失敗です。

私は関東出身で有名私立大学の付属高校からそのまま大学に進学しました。
そのため、大学受験の苦労もなく、『大学名があるからなんとかなるだろう』と将来を深く考えていなかったのです。

学生時代も将来への意識は薄く、就活も誰の助けも借りず挑んだ結果、全く上手くいきませんでした。

その失敗をきっかけに『大学時代をもっと真剣に過ごすべきだった』と痛感し、当時学んで
いた心理学の中からキャリアや就職の問題を研究テーマに選びました。

その後、紆余曲折を経て今に至っていますが,就活の失敗が研究の原点になっています。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

“就活の失敗”の経験が、先生の今の研究テーマにつながっているのですね!

 

「学校から職業への移行」

「就活の教科書」編集部チェスンウ

三保先生が行っている研究について教えてください。

研究テーマを一言でいうと「学校から職業への移行」ということになると思います。

「社会人になって上手くやっていけるようになる上で必要になることとは何だろう?そのために何をしなければいけないのだろう?」という疑問について明らかにしていこうとしています。

キャリア研究は学際的ですので、様々な研究領域の視点からこの問題について見ていくことができます。
私の場合は、心理学で活用されている調査の手法などを使いながら、上記の問題について色々と取り組んでいます。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

学生から社会人に移行することに着目されているのですね!

 

日本の雇用と海外の雇用の大きな違い

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就職における、日本で特徴的なことはありますか?

日本では大学を卒業してすぐ就職するのが一般的で、海外の仕組みとは大きく違います。

キャリアの理論、考え方自体は共通していますが、目の前の学生にどう関わるかは国ごとの
文脈を踏まえる必要があります。

また、日本は在学中から就職後までを追跡する調査が少ないのも課題です。

学校と会社のつながりが弱く、特に文系では学んだことが理系と比較すると仕事に直結しにくい部分が多いため、移行の実態を長期的に捉える研究が不足していると感じます。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

日本では、大学で学んだことが仕事に直結することの方が少ないイメージがありますね…

日本は会社の中で一から人を育てる“メンバーシップ型”が強く、専門知識そのものよりも、組織に適応できるかなどの要素がどちらかといえば重視されてきました。

これは昔から続いている日本的な特徴だと思います。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就活で、企業は専門知識以上に社会的なスキルも重視していますよね。

 

京都先端科学大学 三保 紀裕教授にインタビュー②:インターンシップの現状と課題

インターンシップでの経験がキャリアに役立つ

「就活の教科書」編集部チェスンウ

先生が行われているインターンシップの研究についても教えてください!

今の日本では、学生の時に職業社会に深く触れることができる機会が、インターンシップくらいしかないのが実情です。

このような状況の中、インターンシップへの参加を推奨する動きが加速しています。
そこで強く意識されているのは「就職」ですが、ここでの経験は就活のためだけにしか役に立たないということはありません。

就職先がインターンシップ先とは異なっていたとしても、そこでの経験が何かしらの役に立つのではないでしょうか。

これについて明らかにしようと研究を進めています。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

インターンシップは学生のうちに、社会経験ができる数少ない機会ですよね!

 

短期インターンシップの限界

「就活の教科書」編集部チェスンウ

日本でのインターンシップの現状はどのようなものでしょうか?

日本のインターンシップは期間が短く、ワンデーなどは会社説明会の延長のようになっています。

海外では半年以上の長期が普通で、“就業”としての意味が大きい。
短期型は採用には役立つかもしれませんが、学生の成長や就職後の適応という点では物足りません

インターンシップで得た気づきや経験は、たとえ別の会社に就職しても初期適応に役立つと考えています。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

インターンシップは“選考に直結するもの”や“採用のため”といったイメージが強いので、“自己成長のため”という意識を持っている学生は少ない気がします。

 

学生が失敗しないためのインターン見極め方

「就活の教科書」編集部チェスンウ

インターンシップを探す・選ぶときに重要なことはありますか?

ちゃんとした「就業体験」を伴うものをおすすめします。

大学などが企業と連携しながら実施しているものがあるならば、是非積極的にそういったものを活用してみてください。

企業が募集しているものは、募集時点で選考が行われるものもあります。
採用に直結するものですので、事前準備をしっかりと行ってください。

就職を強く意識した上でインターンシップ先を探すのであれば、実習内容が就職後の配属先で経験する内容と密接に関連していそうなものを選ぶとよいでしょう。社員の方から是非色々な情報を引き出してみてください。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

ただ、企業名で選ぶのではなく、きちんと内容を確認することが大切ですね!

インターンシップが広がったのはここ10年ほどで、2022年には国が「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(三省合意)を改正し、種類や条件が整理されました。

ただ本格的に教育として取り組む大学は少なく、多くは紹介だけして「あとは自由に」という形です。
企業側もどう対応すればいいか分からない場合があり、三省合意はその指針になったとも言えます。

一番心配なのは、インターンシップと称して、実態はアルバイトのように学生を安くこき使ってしまうようなケースです。

本来は企業も学生も目的を持って参加し、互いに学び合える形が望ましいと思います。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

「インターンシップに参加したけど、単純作業をやらされただけだった」という話も聞いたことがあります…

大学経由のインターンシップでも、人事と現場で情報が共有されずトラブルになることがあります。
学生から大学にクレームが来る場合もありますが、そうでないと立場的に言いづらいですよね。

ただ今は三省合意で、企業は期間や内容を明示する義務があります

もし実態と違えば、人事に相談し説明を求めることができます。これにより以前より対応しやすくなったと思います。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

もし、内容が説明されたものと違ったときに対応できるような事前の情報収集が欠かせませんね!

 

京都先端科学大学 三保 紀裕教授にインタビュー③:就職の仕組み・キャリアの課題

企業が求める“即戦力”の曖昧さ

「就活の教科書」編集部チェスンウ

三保先生が感じている日本の“キャリアの課題”はどのようなものがありますか?

私の研究テーマである『学校から職業への移行』で重要なのは、大学と企業の間に依然大きなギャップがある点です。

大学は就職予備校ではありませんが、企業は即戦力を求め、特に理系では職種別採用も行われています

“即戦力”といっても会社ごとに求めるレベルは違い人事の配置や研修のあり方にも左右されます
技術系なら専門知識が直接活きますが、多くの企業では入社後に研修があるのが一般的で、即戦力の定義は曖昧です。

本来はジョブ型雇用で使われるような言葉ですが、日本は依然としてメンバーシップ型雇用が中心。
そのため学生は何を準備すべきか分からず、人事もどう評価すべきか迷う

言葉だけが先行してギャップが生じており、就職の仕組み自体が変革期にあると感じます。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

学生だけでなく、企業もどう採用すべきか迷っているのですね…

 

インターンシップの重要性がより高まる

「就活の教科書」編集部チェスンウ

日本が“ジョブ型”に移行することは難しいのでしょうか?

ジョブ型雇用では職務経験が重視されるため、海外ではインターンシップを通じて働くなどして、実績を積むことが重要になります。

日本が完全にジョブ型に移行するのは難しいと思いますが、もし進むとすればインターンシップの期間は今より長くなり、経験の有無が採用に直結するはずです。

そうした意味で、インターンシップの重要性はこれからますます高まると感じます。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

日本の雇用システムが変革期であるからこそ、職務経験の一環であるインターンシップがより重視されるのですね!

 

やりたいことを仕事にする場合はリスクとリターンを理解することが大切

「就活の教科書」編集部チェスンウ

「やりたい仕事がわからない」とインターンシップに挑戦するにも悩んでしまう学生は多いと思いますが、どうしたらいいのでしょうか?

私は学生に「好きなことから進路を考えるのはやめよう」「自己分析だけで進路を決めるのはやめよう」と伝えています。

趣味や関心だけを起点にすると視野が狭くなるからです。

まず世の中にどんな職業があるかを知り、経験を通じて視野を広げることが大切です。

自己理解は重要ですが、職業理解とセットで初めて適切な進路選択につながります。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

自分の「好き」だけで進んでしまうと、視野が狭くなってしまうのですね。

キャリアは本来“仕事”を意味するものだけでなく、家庭などを含めた複数の役割の連鎖を通じて、個人に形づくられるものです。
日本は学生から社会人への切り替えが急で、どうしても就職=キャリアと捉えがちですが、本当はもっと広い視点で考える必要があります。

やりたいことを仕事にする場合は、リスクとリターンを理解することが大切です。

産業が未成熟な分野や人と違う道を選ぶなら、それだけ失敗の可能性も高い。

覚悟を持って挑むなら誰も止めませんが、安易に飛び込むのではなく、視野を広げた上で選択してほしいと思います。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

好きなことを仕事にするには、しっかりと改めて考えることが大切ですね!

 

京都先端科学大学 三保 紀裕教授にインタビュー④:就活のアドバイス

「組織で働く」という視点を持つ

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就活で、企業研究やエントリーシートで自己PRを書く際のコツはありますか?

企業研究では、「その会社が何を大切にしているのか、若い人材をどう育てようとしているのか」を知ることが大切です。

転職は珍しくなくなりましたが、会社も採用にコストをかけている以上、簡単に辞められると困るという思いがあります。
だからこそ企業のスタンスを理解し、自己分析とすり合わせることが必要です。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

企業研究は企業理念や事業領域ばかり見てしまっていて、そのような視点で見たことがなかったです…!

また、自己PRでは『バイトリーダーをやりました』で終わるのではなく、“組織の中でどう貢献したか”を語ることが大切です。

会社は一人ではできないことを組織として成し遂げる場所。

インターンシップやアルバイトを通して、会社が大切にしている価値観を学び、自分に合うかを考えること。
そして人とのネットワークを築き、フィードバックを受ける姿勢も重要だと思います。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

「リーダーをやった」ことに価値があるのではなく、どのように貢献したかが重視されるのですね!

 

早いうちから社会に触れ、視野を広げる経験を

「就活の教科書」編集部チェスンウ

大学生の4年間は、思っているよりずっと短いと思います。
自分のキャリアのために学生のうちにやっておいた方が良いことはありますか?

学生には早いうちから視野を広げる経験をしてほしいと思います。

日本では3年生から就活や採用直結のインターンシップが始まりますが、3年生になって就業を行うには時間的な限りがあるので、1~2年生のうちから社会に触れる機会を持つことが大切です。

留学など就職に直結しないことでも構いません。

主体的にチャレンジすることで視野が広がります
何もしないまま就活を迎えると手遅れになるので、まずは早いうちから社会を知る経験を積んでほしいです。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就活がどんどん早期化している中で、早いうちから自分のために行動することが重要ですね!

 

就職後には必ずギャップが生じる:人とのつながりを通じて支えを得ることで乗り越える

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就職した後に、「思っていたのと違った…」といったギャップをなくすことはできるのでしょうか?

就職後には必ずギャップが生じます。希望の職場に配属されても同じです。

乗り越えるには同僚や上司とのコミュニケーション、ネットワーク作り、フィードバックを受ける姿勢が重要です。

配属や人事の都合は自分でコントロールできませんが、人とのつながりを通じて支えを得ることで適応できます。

インターンシップなどで積極的にネットワークやフィードバックの経験を積んでおくと、その後にも役立ちます。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

「ギャップは必ず生じるもの」と思って、人とのつながりをしっかりと作ることが重要なのですね。

 

進路選択の本質は“マッチング”:自分の軸となる価値観を持っておくことが大切

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就活の中でたくさん悩むと思いますが、大切にするべきことは何でしょうか?

人生は思い通りにいかないことの方が多いので、自分の軸となる価値観を持っておくことが大切です。

お金を優先するのか、休みを重視するのかなど、人によって大事にするものは違います。
価値観は変わることもありますが、何を大切にしたいかを意識して選択するのが重要です。

学生は社会の実態を知らないまま就活をすることになるので、インターンシップやOB訪問を通して少しずつ会社を理解するしかありません。

その中でも、自分の価値観を押さえておけば進路を考える上での指針になると思います。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

就活の軸とよく言われるものは、自分なりの価値観を持っておくことなんですね!

“給料が高い”という基準で選ぶことはダメなことだと思っていました…

最終的には、自分が働く上や人生で何を大切にしたいかという価値観を軸にすることが重要です。

そして進路選択の本質は“マッチング”です。

自分の望むことと社会や職業の求めることをどうすり合わせるか。その調和が取れないとミスマッチにつながります。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

自分が何を大切にしたいのかをしっかりと考えて、そこがすり合わせられるかをしっかりと考えていきたいです!

 

京都先端科学大学 三保 紀裕教授から就活生へのメッセージ:「就活のゴールは“大企業で働くこと”ではなく、“自分に合う会社を見つけること”」

「就活の教科書」編集部チェスンウ

三保先生、ありがとうございました!

最後に、就活生へのメッセージをお願いします!

就活は有名企業や大企業に目が向きがちですが、日本の大企業は全体のごく一部にすぎません。

大企業を否定するわけではなく、自分に合う会社を見つけることが大切です。そのためにはまず自己分析よりも社会や職業社会の状況を知ることから始めるべきだと思います。

社会情勢は常に変化しています。

だからこそ大学1・2年生のうちから視野を広げ、さまざまな経験に挑戦してほしい。

知識だけでなく、自分で動いて行動することが重要です。これが私から学生への一番のメッセージです。

三保紀裕教授

「就活の教科書」編集部チェスンウ

素敵なお話をたくさんありがとうございました!

自分自身も、自分のキャリアについてしっかりと向き合っていこうと思います!

三保 紀裕|京都先端科学大学
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