「就活の教科書」編集部チェスンウ
こんにちは!「就活の教科書」取材チームのチェです。
本日は、関西外国語大学の吉川雅也准教授にお話を伺いました!
吉川雅也准教授、本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
吉川雅也准教授

吉川 雅也 (よしかわ・まさや)
関西外国語大学 英語キャリア学部・英語キャリア学科 准教授
同志社大学法学部政治学科卒業後、同大学大学院総合政策科学研究科にて情報処理および人材管理を学ぶ。IT企業でシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、その後、人事コンサルティング会社にて中小企業の人事・給与制度設計に携わる。
フリーランスのキャリアカウンセラーとして大学キャリアセンターでの相談業務やキャリア授業を担当したのち、関西学院大学大学院商学研究科で博士号(商学)を取得。現在は関西外国語大学 英語キャリア学部 准教授として、キャリア教育・キャリア形成支援に従事している。
学生一人ひとりが「自ら納得のいくキャリアを築く」ことを支援し、授業では学生の反応を見ながらライブ感のある双方向的な授業づくりを心がけている。
目次
関西外国語大学 吉川雅也准教授にインタビュー①:キャリアを見つめ直すヒント――「人生の振り返り」から始める自己分析
「人生の振り返り」って就活に関係あるの?「実は“自己分析の第一歩」
「就活の教科書」編集部チェスンウ
さっそくですが、吉川先生がキャリアの授業で取り上げている「人生の振り返り」について教えてください!
私は授業で「人生」というテーマについて学生と議論しています。
大学生の皆さんにとっての人生は、「小・中・高」から現在に至るまでの時間であるため、学生時代に「楽しかったこと」「やりがいを感じたこと」「苦しかったこと」などを思い出してもらいます。
つまり、学生時代の「成功体験」と「失敗体験」を振り返るということです。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
学生時代の経験がキャリア形成に役に立つのですね。
例えば「高校の部活で仲間と一丸となって成果を出せた」という経験がありますよね?
そのとき、学生に「それはなぜ楽しかったのか?」を考えてもらうのです。
その中には「自分の実力が上がって嬉しかった人」もいれば、「仲間と一緒に取り組むのが楽しかった人」もいる。
それぞれに“良さ”を感じるポイントが異なるはずです。
「自分がどんなときに幸せを感じたのか」を知ることが、将来のキャリアを考える鍵になります。
吉川雅也准教授
自分らしいキャリアとは?「人生のふりかえりで過去をたどってみよう」
「就活の教科書」編集部チェスンウ
人生の振り返りは、就活の自己分析に役立ちますか?
仕事と部活の経験は少し異なる部分もありますが、「成果を出す仕事をしたい」のか。あるいは、「チームで一緒に取り組む仕事がしたい」のか。
そういった方向性を考える時、手がかりになると思います。
例えば、「みんなで頑張ってるときに一番やる気が出てたな」と思う人なら、チームプレーを重視する会社が合うかもしれません。
逆に「自分のペースでやっているときが一番楽しかった」と感じる人は、「専門職」や「個人でコツコツやる仕事」が向いているかもしれません。
どちらが正解ということはないため、自分なりに解釈していけばいいと思います。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
人生の振り返りをすることで自分の将来像が見えてくることですね。
過去を振り返ることで「自分はこういう流れでここまで来たから、この先はこう進むのが自然かも」と見えてくることがあります。
つまり、過去をたどることで、自分の進む方向が少しずつ明確になるのです。
そういう意味で、「人生を振り返る」というのは将来を考える大事なステップである。
だからこそ、就活生が過去を丁寧に振り返ってほしいと思います。
そこで自分の「幸せなキャリア形成」へのヒントが見つかるはずです。
吉川雅也准教授
自己分析をポジティブに進めるコツとは?「“苦しかった記憶”も無理に思い出さなくていい」
「就活の教科書」編集部チェスンウ
「苦しかったこと」を思い出すのがつらい学生もいる中で、吉川先生はどういう風に教えているのですか?
一般的に「ライフラインチャート」という手法を使って、人生の山や谷を描くという授業があります。
要するに、「成功体験・失敗体験の両方を振り返るもの」なのですが、私の授業では少し異なるアプローチで行っています。
私はどちらかというと「強みを活かそう」という考え方で進めており、無理に「失敗体験」や「つらい思い出」を中心に思い出す必要はないと考えています。
人によっては、「学生時代の嫌な記憶を思い出すだけでしんどくなってしまう」こともあるため、基本的には「良かったこと」「楽しかったこと」を中心に思い出してもらうようにしています。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
自分の人生を思い出す中で、”思い違い”があることに関してどうお考えですか?
確かに、「人は過去を少し違う形で捉え直す」ことがあります。
例えば、当時はつらかった出来事も、時間が経つと「でも、あのとき自分はよく頑張っていたな」と思えるようになる。
そうやって「ポジティブに捉え直す」ことが、「むしろ人が元気に生きていくうえで大切なこと」ではないでしょうか?
「良い思い出も、悪い思い出も」、多少は事実と異なっても大丈夫です。
それが学生自身を前に進ませる原動力になるなら、それでいいと思っています。
吉川雅也准教授
就活で生かすナラティブ思考とは?「つらい経験も“強み”に変わる」
「就活の教科書」編集部チェスンウ
就活で「挫折経験をどうやって乗り越えたのか」を聞かれる場合もあると思います、、、
仮に、高校時代に部活で「顧問の先生と部員との板挟みになってつらかった」という経験があったとします。
そのときは嫌な思い出だったかもしれませんが、後から振り返って「あのとき、間を取り持とうと頑張っていたな」ととらえたらどうでしょうか?
「上と下をうまくつないで頑張っていた自分」に気づけたら、もしかしたら“人と人をつなぐ仕事”が自分に向いているのかもしれません。
こうやって「過去の出来事を別の視点で捉え直す」ことで、苦しかった思い出の中にも「自分の強み」や「価値観」が見えてくることがあります。
私の授業でも、そんなポジティブな視点の切り替えを意識してもらうようにしています。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
結局のところ、「自分の人生をどう語るか」は自分次第ですよね。
それに加えて、就活の教科書でもインタビューされていた秋田県立大学の渡部昌平准教授のお話も参考になると思います。
渡部准教授は「ナラティブ(narrative)」という考え方を研究しておられますが、ここでナラティブとは、“人生を物語として語ること”を指します
つまり、「自分の人生をどう語るかは、自分自身が決める」。
人は「出来事そのものよりもそれをどう意味づけるか」で人生をデザインするのです。
そのため、記憶を少し“アレンジ”することは悪いことではありません。
自分の人生を前向きに話せるようになるなら、それはとても素敵なことだと思っています。
吉川雅也准教授
関西外国語大学 吉川雅也准教授にインタビュー②:就活生へのアドバイス
「タワマンに住みたい」「スポーツカーに乗りたい」も立派なエネルギー?「“ギバーを押しつけない”キャリア支援のあり方」
「就活の教科書」編集部チェスンウ
「ギバー(与える側)になれ」という考え方がSNSや本を通じて広がる中で、そうなれないと悩む学生に向けたメッセージをお願いします。
私は、学生に「こうすると回り回って自分にちゃんとメリットがあるよ」という伝え方をしています。
例えば、「会社のために貢献する」ことによって周りの人が喜んでくれて、結果的にまた次の仕事が回ってくる。
そうやってギバーになることが、自分のキャリアを広げることにつながるのです。
一方、「タワーマンションに住みたい」「車が欲しい」といった気持ちも、私は否定しません。
むしろ、「若さのエネルギー」だと思います。
そのため、「テイカー(受け取る側)的な考え方は不適切」とは言いません。
最終的に「その夢を叶えるためには、やっぱり仕事を頑張ることが大事だよね」と言っています。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
欲を否定するのではなく、エネルギーとして肯定することですね。
そういうエネルギーがあるからこそ、目標に向かって突き進めるのです。
そのため、「ギバーになりなさい」と押し付けるよりも、まずは「テイカー的な欲」を自分の正直な気持ちとしてエネルギーにして頑張ってほしいです。
そして、社会に出て努力を重ねる中で、周りの人に助けられる経験をして、「与えることの大切さ」に気づいていく。
そうやって20代の中で自然と「ギバーの心を身につけていく」学生が多いのではないかと感じています。
吉川雅也准教授
後悔しないキャリアの選び方とは?「将来の選択を“いま”だけで決めない」
「就活の教科書」編集部チェスンウ
「その場だけを見れば良さそうな選択でも、長期的に見るとよくない場合」がありますが、どうやって学生は後悔しない選択をしますか?
私の授業では、中長期の目標を考えるワークを行っています。
その中で学生から「今だけならお金が欲しい」「これが格好いい」などの欲求も出てきますが、私は「30代・40代のビジョンも考えてみない?」と提案します。
例えば、「家族がいて、しっかり働いて稼げている自分」を描いてみる。
そうすると、「そのためには今なにをするべきか」に気づく学生もいます。
つまり、「5年後・10年後のために今できることを考える」ことでキャリアデザインを描くのです。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
その中には「なんとなくサラリーマンになりたくないから起業したい」という学生もいると思います、、、
私は「学生とその選択肢を取ったときにどうなるか」を具体的に考えるようにしています。
まず起業したい学生には、「どの分野で起業するのか」を聞きます。そして具体的なプランを話したり、考えてきてもらったりします。
その上で、「新規創業の会社は3年で半分ほどが倒産する」といったリアルにも触れます。
こうすることで学生の本気度を測れますし、逆に「それだけ大変なら就職します」となる学生もいます。
いずれにせよ、「頭ごなしに否定せず、学生と一緒に現実と向き合う」スタンスです。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
「就活に疲れて、今の内定をもらった企業に就職する」といった学生にはどういう風に伝えていますか?
私は本人が納得しているなら、必ず悪いとは考えていません。
最終的には本人の人生。
そういった判断が人生の幸せにつながる場合もあるかもしれません。
ただ、その場合は学生に「その会社でどんな活躍のビジョンが見えている?」と聞きます。
具体的な将来像があるなら、その選択でよいのかもしれない。
一方、活躍のイメージが描けていないなら、選択肢の一つとして「就活を続けるという選択肢もある」ことをそれとなく話します。
ビジョンがあるうえでの決断か。それとも、疲れからの逃避か。
そこを見極めるサポートを心がけています。
吉川雅也准教授
キャリア支援は“答えを控えること?「理想のキャリアは“自分で決める”」
「就活の教科書」編集部チェスンウ
大学のキャリアセンターで自分の理想のキャリアは見つかりますか?
私は、「キャリアは最終的には自分で決めて、自分で責任を持って進むことである」と考えています。
もし、「思っていたのと違う」と思ったら、また変えればいいのです。
だからこそ、キャリア支援者が干渉しすぎるのも良くないと考えています。
支援者の考えを押し付けることが学生のキャリアの成長を妨げてしまうのです。
そこの塩梅をとることはキャリア支援の仕事に携わりながらも難しいと感じています。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
学生のキャリア支援者として、具体的にどういった部分を心がけていますか?
一概に「こうするべき」と決めつけるのではなく、学生の”表情”や”言葉”に目を向けて「もう少し考えてみようか」と伝えることもあれば、「それもいい選択だね」と背中を押すこともあります。
結局のところ、キャリアは本人が考えるものです。
ただ、私たちはその過程を見守っているのです。
その中で「これでいいよ」と言ってしまって本当に良かったのか。あるいは、「止めた方がいい」と言って良かったのか。
その答えは、いつも慎重に考えた上で、出しています。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
キャリアセンターはあくまで補助の手段として考えるべきですね。
そのため、私は「学生が自分で判断する力を持たせる」ことに焦点をあてています。
あまりにも人の人生に深く関わりすぎるのは、本人の成長の機会を奪うことになるかもしれない。
だからこそ、「学生が前に進む力をつけること」が大切だと思っています。
あくまでキャリア支援は、答えを教えることではなく、その人が自分の力で「考え、選び、動く」ためのサポートなのです。
最終的に舵を取るのは、学生自身であることを意識してほしいです。
吉川雅也准教授
関西外国語大学 吉川雅也准教授にインタビュー③:キャリアの迷いを解消する方法――「悩む時間」より「動く時間」を増す。
自分のキャリアに悩んでいる?「答えは“考える”より“動く”ことにある」
「就活の教科書」編集部チェスンウ
「本当にこれで自分のキャリアは大丈夫かな?」「就活の軸が決まらない、、、」学生に、メッセージをお願いします。
私は「迷っている=いろいろ考えても答えが出ない状態」と思います。
その時は、「一人で考えてもいい答えは出ない」ことがあります。
そのため、「頭ではなく、足を動かす」ことを意識してほしいです。
例えば、業界説明会に行くことで今まで興味のなかった業界でも「意外といいかもと思えるかもしれません。
つまり、できる限りいろんな場所に足を運ぶことが、頭の中のもやもやを消せる鍵になります。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
一人で考えるより、いろんなところに足を運ぶことが問題解決につながるのですね。
同じ場所にじっとしている場合、頭の中身も変わらないですよね?
しかし、いろんな場所に行くと頭の中に入ってくる情報も変わります。
私はその中から気づきが生まれると考えています。
そのため、悩んでいるときこそ「考えて答えを出す」より「体験を増やす」。
こうして頭の外からインプットを増やすことで、見えてくるものがあると思います。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
体験を増やしても問題解決にはならなかった場合は、どうしたらいいでしょうか?
これをある意味「ガチャみたいなもの」と考えたらイメージしやすいかもしれません。
どこかに行ったからといって、必ず当たりが出るわけではない。
そのため、「インターンシップ」「学内講演会」「周囲への相談」など、異なる体験を複数トライしてほしいです。
いろんなところの中から「当たりガチャが出る」と考えてほしいです。
吉川雅也准教授
就活は大学1年生から始めるべき?「ガチャを回すほどチャンスが増える理由」
「就活の教科書」編集部チェスンウ
チャンスを”ガチャ”という観点で見ると、一回で“当たり”を引く人もいれば、何度も回してようやく“欲しかったもの”を手に入れる学生もいると思います、、、
仮に1回で当たらなかったとしても、回数を増やしたら当たる確率が上がりますよね?
そのため、早い段階で動くことを推奨しています。
例えば、大学1年生から動く場合、4年間というすべての期間を活用することができます。
つまり、早い段階で動くほどガチャの回数が増える。
早めに動いた分、当たりを引く確率も上がります。
そのため、大学1年生のうちから、「自分の好きな分野のアルバイトをする」「ボランティアに関わってみる」など、積極的に参加してください。
そうした一つひとつの経験が、“ガチャ”を回す行為です。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
現在、取り組んでいることが「将来にどのような形でつながるのか」が想像できないです、、、
今は想像できなくても、多くの経験をすれば何かと何かがつながります。それを信じて楽しみにしてみてください。
例えば、「あのときのボランティアがきっかけで今の仕事を目指した」「たまたま行ったイベントで出会った人が転機になった」など、やっていくうちに、「思いがけない出会い」や「気づき」が当たりとして出てきます。
そもそも、キャリアは「一度の行動で決まるものではなく、行動の積み重ねで形成されるもの」。そしてそれは後から振り返ってわかるものです。
例えば、部活に一生懸命取り組むことで努力する習慣が身についたり、文化祭で楽しんで運営委員をすることでみんなを引っ張る経験ができたり、過去から現在につながっていることもあるはずです。
だからこそ、大学1年生からガチャを回し続けることが大事だと思います。
吉川雅也准教授
関西外国語大学 吉川雅也准教授から就活生へのメッセージ:「自分は何者か?」に“完璧な答え”はいらない
「就活の教科書」編集部チェスンウ
最後に、就活生へのメッセージをお願いします!
社会に出ると役割(システムエンジニア、大学教員など)が与えられ、それが自分の拠り所になりますが、大学生の時期はわかりにくい部分もあると思います。
その中で、自分のことを考えようとする姿勢は素晴らしいことです。
そういった学生のために、私は自己分析をする際には、「自分のことを追い詰めず、気楽に取り組むことが大事」ということを伝えています。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
具体的にどんな部分を意識すればいいですか?
「真の自分」を見つけようとするとキリがないため、就活における自己分析は二つ意識してほしいです。
一つ目は、PRのための「自分への取材」。
面接で話す材料を集めて、その場に合う“出しどころ”を選ぶ感覚で取り組んでください。
二つ目は、会社との相性を見極めるための価値観を見つけること。
自分が大事にしたい軸を把握し、軸と会社が「合う/合わない」を判断する。
当然ながら、どちらも完璧な自己理解までは不要です。
就活での自己分析は、必要な範囲で行ってください。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
「面接で話す材料」「就活軸の判断材料」は、どこで探したらいいですか?
「大学の授業」や「インターンシップ」で探すことをおすすめします。
そこで、自分も知らなかった得意に気づくことがあります。
例えば、グループワークで「情報整理能力を褒められた場合」、自分は「情報整理が得意なんだ」と気づきますよね?
また、その中で他者と対比することは日常茶飯事であるため、「この人は細かい部分に目を向けることが強い」と感じたら、自分は「相対的に弱いかもしれない」という気づきを得るわけです。
そうした場での対話と比較を通じて、「自分はこういうタイプかも」が見えてくるはずです。
吉川雅也准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
吉川雅也准教授、本日は貴重なお話をありがとうございました!

