「就活の教科書」編集部小林
こんにちは!「就活の教科書」取材チームの小林です。
本日は、鹿児島大学の櫻井芳生先生にお話を伺いました!
本記事では、櫻井先生のご専門である「遺伝子社会学」や「コミュニケーション論」のお話から、最後には「これからの就活で企業が学生に何を求めているのか」まで、お伺いしました。
「就活の教科書」編集部小林
櫻井先生、本日はよろしくお願いします!
就活生の皆さん、こんにちは。鹿児島大学で教員をしている櫻井芳生です。
今日は就活についてのインタビューということで、皆さんのお役に少しでも立てれば嬉しいです。よろしくお願いします。
櫻井 芳生 助教
櫻井 芳生(さくらい・よしお)
鹿児島大学 学術研究院 法文教育学域法文学系 助教
1989年東京大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学(社会学修士)。カリフォルニア大学アーヴァイン校 批判理論研究所、ロンドン大学 ロンドンスクールオブエコノミクス 社会学科、スタンフォード大学 科学史科学哲学プロジェクト、ハーバード大学 社会学科において、客員研究員。著書に『遺伝子社会学の試み 社会学的生物学嫌い(バイオフォビア)を超えて』(共著、日本評論社)など。
目次
鹿児島大学 櫻井芳生助教にインタビュー①:「遺伝子社会学」とコミュニケーションの見方
日本ではまだ新しい「遺伝子社会学」とその可能性
「就活の教科書」編集部小林
さっそくですが、櫻井先生の研究されているテーマについて教えてください!
私は「遺伝子社会学」を研究しています。
遺伝子社会学というのは、遺伝子情報の解読により人の社会的特性を科学的・医学的に解釈しようという学問です。
ダーウィン進化論から派生した進化社会学で、私がロンドン大学にいた2001年にはすでに欧米で盛んに議論されていました。
日本ではまだ馴染みがあまりないかもしれませんが、私はこの「遺伝子社会学」の研究を日本で試みているところです。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
社会学と生物学を合わせたようなものなのですね…!
親の学歴が子どもに影響することはよく知られていますが、その背景には“遺伝”と“環境”がどの程度関わっているのか、もっと丁寧に調べる必要があります。
本来、社会学の研究でも「人は生物でもある」という視点が欠かせないのですが、日本では生物学を避ける“バイオフォビア”が根強く、議論が進みにくい状況が続いてきました。
そうした中でも、私はなんとか研究を進めています。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
「遺伝」と「環境」の両方をしっかりと解釈する必要があるのですね。
ルーマンの社会システム論と「コミュニケーション」
「就活の教科書」編集部小林
櫻井先生は「コミュニケーション」についても扱われているそうですね!
そもそも「コミュニケーション」とはどのようなものなのでしょうか?
ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンは、コミュニケーションこそが社会システムの基本単位だと考えました。
ここでいうコミュニケーションとは、単なる「意思伝達」ではなく、人と人の間で意味が伝わるあらゆる行為を指します。
このコミュニケーションが連続していくまとまりが「社会システム」であり、システムが存続するには、このつながりを途切れさせない工夫が必要になります。
櫻井 芳生 助教
コミュニケーションを支える「メディア」という仕掛け
コミュニケーションは、解釈がズレたり、誤解されたりしてつながりが途切れる危険を常に抱えています。
そこでルーマンが注目したのが「接続を確保するための仕掛け=メディア」です。
科学では「真理」
家族では「愛」
経済では「貨幣」
政治では「権力」
といったものが、その領域のコミュニケーションを支えています。
つまり、コミュニケーションがあるところには必ずメディアがあるという考え方です。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
コミュニケーションのつながりを保っているものがそれぞれ存在しているのですね…!
人のあらゆる行動にはコミュニケーションが含まれるため、その背後には常にメディアが存在します。
こうした考え方から、メディア論は文化科学とほぼ重なる領域だと捉えています。
「新しいもの」の出現を機縁として、むしろ「古いけれどもそうであるがゆえに見えていなかったもの」を見えるようにすることこそ「認識利得」といえるのではないでしょうか。
新しいものの出現、パソコン、インターネット、AI、DX…。今後さらに新しいものは生まれ続けていくでしょう。
そこにコミュニケーションの接続を確保するメディアがあるのです。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
新しいものの登場により、“見えていなかったもの”が見えてくるのですね!
コミュニケーションは「サルの毛づくろい」
私はコミュニケーションを、サルの毛づくろいのようなものだと捉えています。
そのため、これまで実際にサル山にも通い、調査を行ってきました。
2021年、大分県の高崎山では、史上初めてメスの「ヤケイ」がボスになりました。
日本でも同様に、女性として初の高市早苗首相が誕生しました。
高市首相は“飲みニケーション”は得意ではないと公言されていますが、地道な研鑽によって実績を築かれています。
コミュニケーションの上手下手というのは、実はその時点では決められないのではないかと考えています。
コミュニケーションにもいわゆるノウハウがあるのは知っていますが、正解はないのではないでしょうか。
志を遂げるには、強い意志と努力が必要だと考えています。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
コミュニケーションが上手い下手で能力や地位が決まるのではなく、本人の意志と努力が必要なのですね…!
鹿児島大学 櫻井芳生助教にインタビュー②:変化する就活、Z世代の特徴とは
過去最高水準の就職率と就活生の変化
「就活の教科書」編集部小林
現在の就活状況を見て、大きく変化してきていると感じることはありますか?
厚生労働省のデータを見ると、2024~2025年度の就職率は98%と、過去最高水準なんです。
ただ、その一方で、Z世代は“タイパ”を重視して失敗を過度に恐れる傾向もあって、離職率は高いですね。
安定志向が強く、ワークライフバランスを大事にする学生が多いのが特徴です。
また、デジタルネイティブ世代なのでAI活用もとても早く、就活でも生成AIを普通に使いこなしています。
就活のスタート自体も早まっていて、インターンシップへの応募がかなり前倒しになっています。
体感では3年生の秋で、もう半数近くの学生がインターンシップに応募しているのではないでしょうか。
企業側も“採用直結型インターンシップ”を取り入れるところが増えてきました。
これからますます、学生も企業もインターンシップを重視していく流れになると思います。
櫻井 芳生 助教
企業側も採用を前倒し、インターンの早期化が進む
「就活の教科書」編集部小林
最近は、採用活動がどんどん早くなっていたり、インターンシップも盛んですよね。
大学が良い学生を確保するために入試の前倒しを進めているように、企業も優秀な人材を早く確保したいので、採用活動を早期化しています。
2年生から参加できるインターンを設ける企業も出てきましたし、インターンの開始時期も年々早くなっています。
今後もインターンは減ることはないでしょう。
その一方で、授業との両立という課題が出てきます。
企業側も配慮し、土日限定や長期休暇に集中して実施するなど工夫をしています。これまで授業の“ライバル”はバイトや自動車学校でしたが、これからはインターンも加わります。大学教員としても、この変化に対応していく必要があると感じています。
櫻井 芳生 助教
インターンシップ参加で見えた学生の劇的な変化
鹿児島大学のゼミ生たちは、2012〜2013年に『ソーシャルビジネス・エコシステム創出プロジェクト』でインターンシップに参加しました。
その報告会で、私は学生の大きな変化を目の当たりにしたんです。
普段は授業でおとなしくしている学生が、インターンシップのスライドの中では“思い切り跳んでいる”。
その表情を見るだけで、成長が伝わってきて、教員としてちょっと嫉妬するほどでした。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
表情を見ればわかるほど、インターンシップを通して学生が大きく変化していたのですね!
報告会で驚かされたのは、発表する学生だけではありません。
自由参加にもかかわらず多くの学生が聴きに来て、しかも積極的に質問していたんです。
普段の授業や講演会ではまず見られない光景です。
インターンシップに参加した学生は少数でも、その影響は周りの学生にも確実に波及していると感じました。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
インターンシップによる成長は、参加した学生だけでなく周りの学生にも影響を与えるのですね…!
鹿児島大学 櫻井芳生助教にインタビュー③:就活は何から始める? 企業が求める人材とPDCA
就活はまず「会社研究」から
「就活の教科書」編集部小林
就活も大きく変化してきている中で、就活はどのようなことから始めていけばいいのでしょうか?
まずは拙著『へこみそうなあなたのための就活ぶっちゃけ成功ゼミ』をお読みください!
すべてそこに書いてあります。
就活の出発点は、一にも二にも「会社研究」です!
自己分析よりも会社研究をしてください。
- 就活の「面接」で企業は何を見ているか?
- 就活で大事にすべきものは?軸は?
- 就活でへこまないために
企業側はPDCAサイクルを好みます。つまり「小さな改善」ができる学生を歓迎します。
櫻井 芳生 助教
企業が求めるPDCAとは何か
「就活の教科書」編集部小林
PDCAは就活でよく聞く言葉ですが、企業が求めるPDCAとはどのようなものなのでしょうか?
PDCAサイクルはもともと品質管理の言葉でしたが、今では「業務改善」の文脈で広く使われています。
計画(PLAN)→行動(DO)→評価(CHECK)→改善(ACT)→再び計画(PLAN)……
という循環を回しながら、次のプロジェクトではより良い結果を目指す考え方です。
この“小さな改善”を積み上げていく姿勢を企業は高く評価します。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
計画を立てて達成することが重要なのだと思っていましたが、“改善”を積み上げていく姿勢が大切なのですね。
企業が欲しがるのは「自律的に成長できる人材」
例として、リコーのホームページでは、次のような人物像が示されています。
櫻井 芳生 助教
リコーの自律的な人材とは、社員が自らの目標を設定し、自律的に学び、成長する姿勢を持つ人材を指します。リコーは、社員の自律的な学びの促進や、経営戦略に沿った人材を育成するために、ジョブ型人事制度を導入しています。
この制度は、社員が異動の柔軟性を持ちながら、報酬に柔軟性を持たせることで、異動のたびに報酬が変わる手続きを煩雑にせず、異動を容易にすることを目的としています。
リコーの自律的な人材は、デジタルサービスの会社を目指すために必要な自律した姿勢を持ち、多様な顧客ニーズに対応できる人材です。
これはリコーに限った話ではありません。
多くの企業が“自律的に学び、成長できる人材”を求めているのです。
就活では、この点をしっかり理解して臨むことが極めて重要です。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
「成長できる環境」を求めて、就職活動している人も多いですが、まず“自律的に学ぶ”姿勢も重要ですね!
鹿児島大学 櫻井芳生助教から就活生へのメッセージ:「必ず就職できる、諦めないで」
「就活の教科書」編集部小林
櫻井先生、ありがとうございました。
最後に、就活生へのメッセージをお願いします!
私は一橋大学に、一年浪人して入学し、二年留年してから東京大学大学院に入りました。
企業への就活経験はありませんが、大学に教員として就職した後、海外の大学でも勉強しましたので何枚も、いや多分何百枚も履歴書を書いてきました。昔は履歴書といえば手書きで、一字でも間違えたら書き直しという時代です。
そして、ようやく鹿児島大学に拾ってもらったときには、妻のお腹には娘がいました。本当に、ギリギリセーフで就職できた口です。
実は私は、2021年6月に脳出血で倒れました。現在はリハビリを行いながら、研究生活を続けています。
ですから学生のみなさん、とくに就活生のみなさんには、まず健康に留意して、心身ともに自分を守っていただきたいのです。
あなたの大切な人々、家族や友人とよい時間を過ごしてください。身体にいいものを食べてください。
私たちは、私たちが食べているものでできています。日々運動してください。
必ず就職できますから、最後まであきらめないでください!人生は何が起きるかわからない。だから面白い!
就職が決まったら、そこで楽しんでみて!
就活で落ち込んだときは、拙著『へこみそうなあなたのための就活ぶっちゃけ成功ゼミ』も、ぜひ力にしてもらえたら嬉しいです。
櫻井 芳生 助教
「就活の教科書」編集部小林
温かいメッセージをありがとうございます!
櫻井先生、本日は本当にありがとうございました!

