「就活の教科書」編集部チェスンウ
こんにちは!「就活の教科書」取材チームのチェです。
本日は、千葉商科大学の常見陽平准教授にお話を伺いました!
常見先生、本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
常見陽平 准教授

常見 陽平(つねみ・ようへい)
千葉商科大学 基盤教育機構 准教授
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。
リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て現職。
会社員・フリーランスとしての実務経験を活かし、多様な視点から「働き方」や「大学生の就職活動」をテーマに、執筆・講演など幅広く活動している。
著書に『50代上等!: 理不尽なことは「週刊少年ジャンプ」から学んだ』(平凡社新書)、『僕たちは育児のモヤモヤをもっと語っていいと思う』(自由国民社)、『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書)、『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)などがある。2025年11月に『日本の就活』(岩波書店)を刊行予定。
目次
千葉商科大学 常見陽平准教授にインタビュー①:就活は営業?自分を売り込む技術
働く理由に「正解」はない
「就活の教科書」編集部チェスンウ
就職活動を始める際に、「自分が何がやりたいかわからない」と悩む人は多いです。
どのように自分のキャリアを考えていけばいいのでしょうか?
「就職先を夢ややりたいことで選ぶ」という考え方もあるでしょう。ただ、それが全てではありません。
仕事に何を求めるかは人それぞれで、経済的報酬を重視する人もいれば、自己実現や社会貢献を重視する人もいます。
どれも間違いではなく、それぞれの価値観で働く理由を決めていいのです。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
就職先を考えるときに「やりたいことを軸にする」のが当たり前だと思い込んでいました…!
就活は“自分の押し売り”ではなく“マッチング”
「就活の教科書」編集部チェスンウ
就職活動の面接で大切なことはなんでしょうか?
就職活動では、自己PRの意識が強すぎると、ただの押し売りになってしまうことがあります。
本来の営業とは、相手を理解したうえで適切な提案をするもの。
自分の強みを一方的に語るのではなく、「相手(企業)が何を知りたいのか」を考えて、その企業に響くように伝える工夫が必要です。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
自分の強みの中で、企業に響くように伝えることがポイントなのですね!
自分の強みを伝える際に大切なことはありますか?
自分では「大したことない」と思っているスキルでも、企業や業界によっては高く評価されることがあります。
例えば、TOEICのスコアでも、見る人や比較対象によって価値が大きく変わります。点数だけでなく、その点をとるためのプロセスが評価されます。
「誰と比べて」「どこで活かせるか」という視点が大切です。
また、自分を売り込む際は、「誰に・いつ売るか」が大きなポイントになります。
たとえば、総合商社の人は、同様の仕事ができるメーカーの海外営業ポジションを狙うといった「視点の転換」が重要です。
常見陽平 准教授
第一志望にこだわりすぎない
第一志望に落ちてしまっても、それは決して「失敗」ではありません。
そもそも第一志望・第二志望と順位をつける考え方自体を見直すことも大事です。
やりたいことの「要素」を持つ企業は他にもたくさんありますし、同じ業界や職種でも別の道があります。
現在、多くの企業が中途採用にも力を入れています。
たとえ新卒で第一志望に入れなくても、他の企業で経験を積み、再チャレンジすることも可能です。
一社目にすべてをかけすぎず、長い目で自分のキャリア形成を考える姿勢が重要です。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
第一志望の企業を決め込んでしまって選択肢を狭めてしまうのではなく、柔軟に自分のキャリアを考える必要があるのですね!
第一志望に落ちることは誰にでもありますが、その経験から何を学ぶかが大切です。
「何が足りなかったのか」「自分にどの点が合っていなかったのか」などを見つめ直すことで、より納得できるキャリア選択につながります。
常見陽平 准教授
千葉商科大学 常見陽平准教授にインタビュー②:就活で「自分らしさ」を活かすために
就活の第一歩は、「自分は凡人だ」という思い込みを手放すことから
「就活の教科書」編集部チェスンウ
就職活動をしていて、「自分って凡人だな…」と思ってしまうことが多いのですが、自分の強みはどう見つけたらいいのでしょうか?
「自分は凡人だ」と思い込んでいる人は多いですが、それは単なる主観です。
誰しも人生の中で培ってきたストーリーや経験があり、それが強みになり得ます。
まずはその思い込みを手放すことが、就活の第一歩です。
自分の強みは、自分一人ではなかなか気づけません。
キャリアセンターや友人、先輩に相談することで、自分では普通だと思っていたことが実は「オンリーワン」の魅力であると気づくことがあります。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
「自分は凡人だ」というのは、勝手な思い込みなのですね。
企業が採用するのは「飛び抜けた人」だけではありません。
倍率が高くても、実際には全員がライバルになるわけではなく、書類の時点でふるい落とされる人も多い。
数字に振り回されず、自分の価値を信じて挑戦することが大切です。
常見陽平 准教授
面接は「ラベル」ではなく「レベル」を見る場
「就活の教科書」編集部チェスンウ
就職活動で企業は学生のどこを見ているのでしょうか?
企業は、学生の肩書きや成果そのものよりも、「どう取り組んだか」というプロセスを重視します。
つまり、何をやったかよりも、その取り組み方・姿勢に注目しているということです。
一見平凡な勉強やアルバイトの経験でも、“その中でどう工夫したか、どう学びを得たか”が評価されます。
例えば、コンビニバイトでも、日々の観察を通してマーケティングの視点を得た学生や、チーム作りに尽力した経験を語った学生が、高く評価された事例もあります。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
成果をどれだけ出すかばかり考えてしまいがちですが、実際には“どう取り組んだか”が重要になるのですね。
誰もがやっているような経験の中にも、自分なりの気づきや努力を加えることで、それが他人にはない「自分だけの経験」になります。
重要なのは、その体験をどう解釈し、どんな価値を見出したかです。
常見陽平 准教授
誰にでも語れる「ガクチカ」はある
ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)がないという学生もいますが、そんなことはありません。
大学生活を続けてきた時点で、何かしらの経験や取り組みがあるはずです。
ガクチカで重要なのは、経験の大きさではなく「その体験から何を学び、何を伝えたいのか」という視点です。
経験の本質を見つめ、どう言語化するかが評価につながります。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
ガクチカは「留学経験」や「サークルを立ち上げた」といった特別な経験でなければ話せないと思っていましたが、そこで何を学んだかが重要なのですね。
確かに珍しい体験は目を引くかもしれませんが、就活で評価されるのは体験の“種類”よりも“意味づけ”や“深掘り”の仕方です。
普通の経験でも、自分なりの視点や工夫があれば十分に差別化できます。
「他の人と違うことをしていないと内定が出ない」と思いがちですが、それは誤解です。
大切なのは、その体験を通じて何を考え、どんな行動をとったか、そこにどんなこだわりがあったかをきちんと伝えること。
それが結果として自分らしさ、オリジナリティとして伝わります。
常見陽平 准教授
千葉商科大学 常見陽平准教授にインタビュー③:キャリアと仕事観
「楽しそうに働く」の落とし穴
「就活の教科書」編集部チェスンウ
「仕事が辛くて辞めたい」と言う社会人の先輩を見て、仕事の選び方に不安があります。
やっぱり仕事は「楽しく働く」ことが一番なのでしょうか?
労働というものは、個人の視点だけでなく、企業や社会全体の視点からも捉える必要があります。
楽しく働くことが必ずしも「良いこと」とは限りません。
見た目には楽しそうな職場でも、実態は長時間労働だったり、過度なモチベーション管理がなされている場合もあります。
「楽しい」「楽しくない」という印象だけで職場を判断するのは非常に危険です。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
仕事を考える時に「楽しそう」と思えるのは重要なことだと思っていました…
「仕事は嫌いだけど職場の雰囲気は好き」「好きな業界だけど希望の仕事はできていない」など、働く中での感情は単純に割り切れるものではありません。
感情のグラデーションを理解することが、職業選択の精度を高めます。
先輩たちが辛そうに見えても、それがキャリアを築けない理由にはなりません。
辞めずに続けていることには、そこに何らかのやりがいや意味がある可能性があります。
まずは「その仕事のどこが楽しいのか」を知ろうとすることが大切です。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
「楽しそう」な仕事を選ぶのではなく、仕事の中で「どこが楽しいのか」を考えることが大切なのですね!
会社を「使い倒す」意識を持つ
社会人として働くうえで、「この会社でしかできない体験」や「このタイミングで得られる経験」を意識することが大切です。
最初の一社に過度な期待や不満を持つのではなく、「どう活用するか」という視点で関わることがキャリア形成のカギになります。
会社には、研修制度・留学制度・配属など、さまざまな成長機会が用意されています。
しかし、それを最大限活用している人は意外と少ないのが現実です。
自分から積極的に機会を活かす姿勢が重要です。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
企業に任せるのではなく、能動的な姿勢が求められるのですね!
たとえ希望とは異なる部署や職種に配属されたとしても、「そこから何を学べるか」「どんなスキルが得られるか」と考えることで、その経験が将来の強みに変わります。
与えられた環境を前向きに捉えることが大切です。
常見陽平 准教授
「今の環境で何を活かすか・学ぶか」という視点を持つ
「就活の教科書」編集部チェスンウ
最近では「成長できるかどうか」も就活生は重視していますよね。
「配属先や職場環境が自分に合っているかどうか」、「成長できるかどうか」は自分自身で判断すべきことです。
他人の評価や世間体に左右されず、自分のキャリアにとっての意味を考えることが大切です。
現代は、転職が当たり前の時代です。
早期退職をしても「ジョブホッパー」と否定的に捉えられることは減ってきています。
だからこそ、辞める・続けるの判断よりも、「今の会社で何を活かすか・学ぶか」という視点をまず持ってほしいということを伝えたいです。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
周りの評価に左右されず、自分のキャリアについてしっかり向き合うことが大切ですね!
千葉商科大学 常見陽平准教授から就活生へのメッセージ:「これだけは」に縛られず、自分・会社・社会の関係性を問い直す働き方を
「就活の教科書」編集部チェスンウ
常見先生、ありがとうございました。
最後に、就活生へのメッセージをお願いします!
「これだけは大事」と一つに絞る考え方は危険です。
単一の答えを求めず、多様な視点を持つことが大切です。
キャリアに悩んだときは、自分と会社、そして社会との関係性を立ち止まって見直すことが重要です。
もし今の状況に絶望していても、「自分にとっての幸せ」や「社会との関わり方」を考え続ける姿勢が希望につながります。
学生がよく「お金や時間がないからできない」と考えがちですが、実際には奨学金や制度、周囲の支援を活用する方法もあります。
制約にとらわれすぎず、「どうしたらできるか」を考える視点が大切です。
常見陽平 准教授
「就活の教科書」編集部チェスンウ
素敵なお話をたくさんありがとうございます。
常見先生、本日は本当にありがとうございました!

